運命の向こう側(1/3)
僕らは運命に導かれていたのだろうか?
いや、僕たちはもう運命すら飲み込んで進むことを決めた。
天城晃を取り戻すため、僕らはついに物語の核心へ踏み込んでいく。
新たに開かれた扉をくぐると、そこは深い闇に包まれた空間だった。
周囲に何かが蠢いている気配を感じながら、朔が静かに呟いた。
「……誰かが、俺たちの運命を操っている」
その言葉に、僕と真澄は振り向いた。
「どういうことだ?」
朔は険しい表情で続けた。
「ここに入った瞬間から感じていた。この異界は誰かが意図的に作ったものだ。
そして、俺たちはその誰かに導かれるように動かされている」
真澄が目を細める。
「それって、僕たちがずっと誰かの掌の上にいたってこと?」
朔は重く頷いた。
「おそらくな。そして、その中心にいるのが――天城だ」
僕は拳を握った。
「なら、なおさら早くあいつを見つけて、連れ戻さなきゃいけない」
僕らは再び歩を進めた。
すると、闇の奥からゆっくりと人影が現れた。
「……天城!」
僕は思わず叫んだ。
だが、その姿は僕らが知っている天城とはまるで別人のようだった。
彼の瞳は疲れ果て、虚ろだった。
その口元に薄い笑みが浮かんでいる。
「空閑、久野瀬、柊……もう来るなと言ったのに」
その声は、静かで冷たかった。
「俺はもう救われたくない。俺を救おうとするな」
天城のその言葉が、僕らの胸を鋭く刺した。
しかし、僕は迷わず踏み出した。
「それでも俺たちはお前を取り戻す。
俺たちが間違えたから、俺たちが責任を取るんだ!」
天城は何も言わずにこちらを見つめている。
そのとき、天城の背後から巨大な影が現れた。
「何だ、あれは……!」
朔が警戒を強めた。
それは今まで遭遇したどの怪異よりも強力な、禍々しい存在だった。
「これは、俺たちを止めるための刺客か……」
僕らは構えを取った。
天城を取り戻すための、最も過酷な戦いが始まろうとしていた。




