過去からの囁き(2/3)
朔は、朽ち果てた門の前に立っていた。
それは彼の一族が代々守ってきた、異界の門だった。
「これは……祖父が門を開けたときの記憶か」
呟いた瞬間、目の前に古びた着物姿の老人が現れた。祖父の姿だった。
『朔よ、よく見ておけ。これが我ら一族の宿命だ』
祖父はためらうことなく門を開いた。
その瞬間、異界から黒い影があふれ出し、世界を飲み込み始める。
朔は息を呑んだ。
『祖父、なぜ門を開いた!』
祖父の幻影は淡々と言った。
『開かねば一族は滅びる。これも運命だ』
朔は拳を握り締め、震える声で答えた。
「違う……俺は運命なんて信じない。
すべては俺の意志で決める!」
朔が叫ぶと、幻影は静かに消えていった。
朔は迷いを振り払うように、力強く歩き出した。
真澄は、小さな公園に立っていた。
ベンチに小さな少年が座っている。
それは、幼い頃の自分だった。
少年は泣いていた。
『どうしてみんな僕を避けるの?』
少年の声に、真澄の胸が痛んだ。
『誰も僕を見ない。みんな僕を怖がる』
真澄は少年の前に膝をつき、静かに語りかけた。
「君のせいじゃない。
世界と君が少しだけ違うだけだ」
少年は顔を上げた。
『僕はずっと、一人なの?』
真澄は微笑んだ。
「そんなことはないよ。
君のそばにはちゃんと仲間ができる」
少年の顔に少しずつ笑みが広がった。
「僕を拒絶していたのは、世界じゃない。僕自身だった」
少年は静かに消え、真澄はゆっくり立ち上がった。
もう、自分を責めることはしない。
彼にも、守りたい仲間ができたからだ。
僕ら三人は再び集まり、互いを見つめ合った。
誰もが無言だったが、その目には決意が宿っている。
すると突然、空間が震えだした。
「来るぞ……!」
目の前に巨大な怪異が姿を現した。
それは、僕らの過去の記憶が融合した姿だった。
僕たちは互いに頷き、戦いの態勢を取った。
「俺たちはもう、過去に負けない」
僕が呟くと、仲間たちも力強く応じた。
「これが最後の試練だ。行くぞ!」




