表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/36

異界迷宮(2/3)

その頃、朔は別の場所に立っていた。


そこは暗い和室。

畳はすり切れ、壁には古い遺影が並んでいる。


「これは……俺の家だ」


朔はすぐに理解した。

これは自分が継承した、家系の記憶が渦巻く場所だと。


奥の部屋から、かすかな話し声が聞こえてくる。


『朔には、継がせるしかない』

『でもあの子は、耐えられるでしょうか……』


両親の声だった。

朔が小さい頃、密かに交わされていた会話の記憶。


「……やめろ」


朔は自分の頭を押さえた。

だが、声は止まらない。


『朔、あなたがすべて背負うのです。

 これは、私たち一族が生きるための宿命なのだから……』


「黙れ!」


朔は叫んだ。

継承したくてしたわけじゃない。

この記憶が、朔自身を侵食し続けている。


それでも朔は歯を食いしばった。


「俺が選んだ道だ。誰にも……文句は言わせない」


真澄もまた、一人だった。


周囲は真っ白な空間。

何もなく、誰もいない。ただ無音の世界が広がっている。


「……ここが僕の心の中か」


真澄はため息をついた。

自分はずっと、こんな場所で生きてきたのだと。


ふいに足元に鏡が現れた。


そこには、泣いている真澄が映っていた。

鏡の中の自分が、小さな声で囁く。


『どうして、誰も僕を見てくれないんだろう』


真澄は黙って目を閉じた。


『みんな拒絶するのは、僕じゃない。世界のほうだ』


真澄は震えた指を握りしめた。


「それでも……拒絶だけが、僕のすべてじゃない」


真澄は強く目を開け、歩き出した。


僕は、幼い自分のそばに立ち尽くしていた。


このままでは、恐怖に飲まれる。


「違う……これは、もう終わった記憶だ!」


叫ぶと同時に、自分の中の“喰う力”が動き出した。


恐怖を喰らい、力に変える。

それが、僕のやり方だ。


『逃げない……もう二度と』


僕は幼い自分の手を握った。


その瞬間、世界が再び歪み、僕は仲間たちと合流した。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ