交錯する因果(1/3)
僕たちは力を手に入れた。
でも、その代償はあまりにも重かった。
天城晃は姿を消し、僕たちは初めて、自分たちのしたことの意味を知る。
――これは僕たちが、加害者であると気づいた瞬間の物語だ。
昨日の天城の様子がおかしかったことを、僕はどうしても忘れられなかった。
放課後、校舎の屋上で僕は朔と真澄に声をかけた。
「なあ……俺たちが天城に何かしたんじゃないのか?」
朔は淡々と頷く。
「その可能性はある。俺たちは自分の力を使うたびに、因果をばらまいているからな」
真澄は少し困ったように微笑んだ。
「でも、僕らだって望んでそうしたわけじゃない。彼だって……それは理解してくれるんじゃないかな」
僕は首を振った。
「いや、天城は気づいてる。昨日のあいつの目……あれは、“気づいてしまった奴”の目だった」
重い沈黙が広がった。
やがて朔が小さく呟いた。
「……話す必要がある」
その放課後、僕らは校舎裏に向かった。
偶然を装ったつもりだった。
けれど天城は、まるで僕らが来るのを待っていたように、そこに立っていた。
「……来たか、空閑」
天城は僕を見るなり、静かな怒りを滲ませていた。
「天城……俺は――」
「お前らが俺をこうしたんだろ」
天城が、初めて僕らを“敵”の目で見ていた。
「俺は何も望んでなかったのに、お前たちが勝手に俺に押しつけたんだ。
この記憶も、感情も、全部……」
その声に、僕らは言葉を返せなかった。
「あれもこれも、お前らが俺に流し込んだものだって知ったとき、どんな気持ちかわかるか?」
天城の声が微かに震えた。
真澄が一歩前に出る。
「天城……違う。俺たちだって――」
「柊、お前が一番タチが悪い」
天城の視線が真澄を射抜く。
「お前はずっと俺に押しつけてきただろ。自分が背負いたくないものを、全部俺にさ」
真澄が固まる。
「俺はもう、お前らが許せない」
その言葉とともに、世界が揺らぎ始めた。