表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/36

追跡者と追われる者(1/3)

怪異とは、ただの化け物じゃない。


恐怖、記憶、誰かの声――


それらが積み重なり、形を成した“存在”だ。

その“声”は、夢の中で聞こえた。


——来る。拒絶者。殺される。

逃げろ。逃げろ。逃げろ。逃げろ。


誰の声でもない。

でも、苦しげに、怯えたように、何かが叫んでいた。


僕はその声に引きずられるようにして、闇の中を漂っていた。

その奥に、“何か”がいる。


言葉のない、存在そのもののような……圧。


目を逸らそうとしたその瞬間、視界の隅に白い制服が揺れた。


——柊、真澄……?


そこで、目が覚めた。


登校中、天城がいつもの調子で話しかけてきた。


「なあ、空閑。最近、自分の声で喋ってるのに、“自分じゃない気がする”ことない?」


「は?」


「いや、マジで。なんかさ、自分が喋ってるんだけど、

 “言葉の出所”が違うっていうか……昨日とか、『開門の時は近い』とか寝言で言ってたらしくて」


「……それ、どこ情報」


「母ちゃんが録音してた。やべーだろ、俺」


ケラケラと笑う天城の横顔を見ながら、僕は背筋に冷たいものを感じていた。


自覚はない。

でも、確実に“何か”が進行している。


天城晃の中で。


放課後、朔から連絡が入った。


「商店街裏の廃工場に、強いにじみの痕跡がある。来られるか」


僕と真澄は現場へ向かう。

そこには確かに、“異界の濃度”が残っていた。


「……いる」


朔が呟く。


僕の中の“喰った何か”もざわめき始める。


廃工場の影から、白い人影がひょこりと現れた。


「っ……!」


思わず身構えた。

だが――その怪異は、逃げ出した。


まるで、僕らが何か“恐ろしい存在”であるかのように。


「……逃げてる?」


「……いや。違う」


朔が低く言った。


「“真澄から逃げてる”んだ」












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ