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6.この先も(律子)

「んぅ……りつさ……」


 普段通り目が覚めてしまって、隣に眠るひなの可愛い寝顔を眺めながら、頬を撫でてみたらふにゃ、と笑って私の名前を呼んでくれた。ちょっと待って、本当に待って、可愛すぎっ……!


 一気に昨日の艶やかな姿が蘇ってきて、このまま隣にいたら襲いそうだな、と先に起きることを決めた。本当はずっと眺めていたいし、起きて真っ先に目に映るのは私がいい。もう一度名前を呼ばれたら、きっと起こしてしまうと思うから、隣で眠っているひなを起こさないようにゆっくり抜け出した。


 朝の支度を済ませて、時間が空いたから走りに行こうかと考えるけれど、ひなが起きた時には絶対に家に居たいから却下。それなら隣に居れば、って思うけど、自分の理性に自信が全くないからこれも却下。

 仕方なくソファに座ってサブスクで色々探してみるけれどどれを見ても頭に入って来なさそうだった。



「律さん」

「ひな。おはよう。身体大丈夫?」


 待ち望んでいた声がして、ひなが申し訳なさそうにこっちを見ていて、愛しさでいっぱいになる。


「はい……遅くまで寝ちゃってすみません」

「ううん。私が無理させたんだし……休みなんだもん、もっと寝てても大丈夫だったよ。歯磨きしたらここにおいで」


 隣においで、と呼べば、照れたように笑ってくれた。可愛い。


「ひな? 朝から可愛いね。どうしたの?」


 顔を洗って歯磨きをして、隣に来てくれたひなは間隔を空けずに座ってくれて寄りかかってくる。肩を抱き寄せれば、不満げに見上げられた。可愛い顔してどうした?


「起きたら律さんが居なかったから、くっついてます」

「ごめんね」


 ねぇ、私の事誘ってる? ひなは朝からでもありなの? もちろん私は大歓迎です。


「いえ、私が寝すぎたのが悪いんです。すみません」

「ううん。付き合って初めての朝なのに、寂しい思いをさせたのは私が悪い。……ずっと寝顔を見てたら襲っちゃいそうで」


 かっこ悪いけれど、誤解させたくないから正直に伝えることにする。翔子にも散々言葉が足りないって言われたし。


「……昨日足りなかったですか?」

「……あー、そうだね、足りなかったかな。でも、満たされた。それは信じて欲しい」


 あんなにしたのに、と続きそうなひなには申し訳ないけれど、まだまだ足りなかった。余りしつこいと嫌われるかな、とこれでも自重したつもり。なんなら無理だと言うひなを組み敷きたかったし、ひなはどこが1番感じるのかもっと確認したかった。


 日頃から運動していることもあって私は体力が無駄にあるし、気をつけないと。


「ひな、朝ごはん食べようか。簡単に用意してるから」

「朝ごはんまで、すみませんっ」

「気にしないで。むしろひなは無理させたんだし当然、くらいに思ってて」


 これからもきっと、抱き潰しちゃう日はあるだろうし……



「ひな、今日はどう過ごす?」

「律さんは普段のお休みはどう過ごしているんですか?」


 朝ごはんを食べて、昨日と同じように洗い物を手伝ってくれて、ソファに戻ってきた。ひなを抱き寄せれば、自然と身を委ねてくれて、あぁ、許されているなぁ、と胸がいっぱいになる。見上げてくるその表情もとても可愛い。


「私? 私はジムに行ったり、溜まった家事をすることが多いかな」

「律さん、ジム通ってるんですか……」


 ひなはジムに興味あるのかな? 運動はそんなに、ということであれば無理しなくて大丈夫だけど。


「平日は難しいから、休みの日だけね。ひなも興味ある? 体験できるから、今度一緒に行く?」

「行きます」

「おお……早いね。一緒に行こう」


 凄く興味がありそうでちょっと驚いた。ひなが一緒に来てくれるなら、一緒に必要なものを揃えに行くのもいいかも。


「律さん、スポーツウェアってどんなやつ着てるんですか?」

「どんな……んー、見てみる?」

「はい」


 見た方が好みも分かっていいだろうし、伝えるよりも実際に見てもらった方が早い。

 スポーツブランドのタンクトップとTシャツ、長ズボンを数枚クローゼットから取り出して、ベッドの上でいいか、と並べる。


「こんな感じ。好きなのあれば、良かったら貸すよ。質感とか好みもあるだろうから、触ってみる?」

「ありがとうございます。この色、可愛いですね。でもちょっと短くないですか……?」


 ライトブルーのタンクトップを手に取って、ベッドに腰掛けて身体に当てて、自分のシャツをめくって長さを確認しているからお腹が見える。場所が場所だし、このまま押し倒したい。まだ午前中だし、嫌がられるよね……なんで寝室に連れてきちゃったのか……


 自分が着る分にはなんとも思わなかったけれど、この種類は禁止にしよう。ひなのお腹を見せるなんてとんでもない。あ、ちょっと今上目遣いはダメです……


「……っ、ひなに似合うと思うよ。リビングに戻ろっか」

「……律さん?」



 タンクトップをしまって、戻るように促すけれど、訝しげに見上げてきて、ハッとした様な表情になった。もしかして下心がバレた……? とりあえず謝る……? いや、抱かせてって素直に頼む……?


「律さん」

「なぁに?」

「その……もしかして、そういう気分になっちゃいました?」


 首を傾げて聞いてくるひなが可愛すぎてやばい。そういう気分になってます……でもちゃんと我慢できます。


「ひな、勘弁して。1日ベッドで過ごしたくないなら、戻ろう……っ!?」


 行くよ、と歩き出したものの、ひなに手をとられた。それだけでも驚いたのに、指を絡めて、親指で撫でてくる。


「ねぇひな、誘ってるってことでいいの? 優しくできないかもよ?」


 冗談です、と言われれば、今ならまだ耐えられる。


「誘われてくれますか?」

「ーっ、大歓迎。誘った責任、取ってもらおうかな」


 ごめんね、優しくできないや。



「ひな、今日も泊まって?」


 1日ベッドで過ごしたくないなら、って言葉の通り、お昼も寝室に運んだし、抱き潰してしまいぐったりするひなの頭を撫でながら、連泊をお願いしてみる。


「はい。もう動きたくないです」

「ごめん」

「いや、私が誘ったので……体力つけます……」


 私が性欲が強いのと、体力があるからひなには負担をかけて申し訳ない。でも、こんなに触れたいって思うのはひなが初めて。遊んでいた子達のことは、こんな風に抱き潰したことなんてないし。だから、そんな不安そうな顔をしないで。


「誘っても、気分じゃない時は断ってくれていいからね? 他で発散する、とか絶対しないから」

「なんで分かったんですか?」

「不安そうな顔してた」

「律さんはモテるって聞いたので心配で」


 モテるって聞いた……?


「……翔子から?」

「翔子さんからもですけど、会社でもそう聞きました」


 やっぱり翔子か……そして、会社? カミングアウトしてからは、モテる事なんて無くなったけど、なにか誤解してる?


「会社? 最近は会社でモテたことなんてないけど……」


 私のことより、ひなの方が心配。こんなに可愛いんだから。私のだから、って言えたらいいけど、無理だよなぁ……


「ひなの方こそ、可愛いんだから気をつけて。誘われたら、断ること。しつこい時とかは、嫌じゃなければ私の名前を出して」

「分かりました。律さんがいるので、って言いますね」

「え……」


 いいの?


「自発的には言わないですけど、聞かれたら答えます。それでもいいですか?」

「……っ、もちろん」


 凄く嬉しい。ちょっと泣きそうだ。

 もししつこい奴が出てくれば、私が守ろう。ひなを傷つける全てからも。


「律さん、大好きです」

「ひな……私も。ひなが好き。ずっと一緒に居てね」

「おばあちゃんになっても一緒にいましょうね」

「ふふ、嬉しい」


 ひなはこうして、言葉をくれる。行動も、言葉も好きだと伝えてくれて、こんなに幸せでいいのだろうか。もらった以上に、ひなを幸せにしよう。

 私を選んで良かったとずっと思ってもらえるように。この先も、隣で笑っていてね。

お読み下さりありがとうございました!

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〉大好きです 好きを伝えたらサヨナラされた傷を心に抱えたひなが 素直に言えたとこが良いなと思いました そしてお腹の見えるタンクトップ禁止 双方向の独占欲から二人とも禁止になりそうな ところが微笑まし…
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