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第6話 「新たな出会い千鳥足の…」

*この作品には…過度な飲酒描写と喫煙描写が含まれていますので、

苦手な方は ブラウザバックして下さい(震え声)作品中の行為や行動について

よい子の成年は絶対真似しないでください(注意喚起感)

なお、お酒とたばこは20歳になってから…容量・用法を守って

正しく摂取してください(未成年への注意喚起感)

ロイドの旅は、王から託されたはずの軍資金が早くも底を突きかけ、出だしからすでに暗雲立ち込める展開を迎えていた。

「……なんで俺が国中で変質者扱いされてんだよ……」

ロイドはため息をつきながら、町外れの宿のベッドに倒れ込んだ。旅立ちの日、意気揚々と城を後にした彼の姿は、なぜか“星空のスカート魔法使い”として噂になり、あっという間に国中に広がってしまった。原因は言うまでもなく、あのふざけた衣装——リー・アルが試作として持ち込んだ“銀河の妖精ver.5.0”。

「なあ、リー・アル……どうなってんだよ。王様からもらった金、もう残り少ないんだが?」

ロイドの頭上をふわふわ飛ぶリー・アルは、涼しい顔で契約書をパタパタと扇ぎながら答える。

「シャッチョサンが毎晩酒を飲むからアル!」

「ふざけんな! お前の月額料金と衣装代のせいだろうが!」

そう、ロイドの軍資金は、リー・アルの使用する“簡単勇者ブレスレット”の月額利用料10,000Gと、例の試作衣装“銀河の妖精ver.5.0”の使用料(別料金)だけで半分以上が吹き飛んでいたのだ。

「冒険には見た目が重要アル!」

「重要なのは財布だ!」

ロイドは頭を抱え、財布の中に残った数枚のコインを見つめる。

「……もう旅どころじゃねぇな。てか、どうすんだよ、これから……」

リー・アルはにっこりと笑い、まるで問題が解決したかのように言う。

「こういうときは情報収集アル! 酒場に行くアル!」

「また酒かよ……おい、俺、冒険してるっていうより飲み歩いてるだけじゃねぇか……?」


酒場での出会い

ロイドが訪れた街の酒場は、夜も更けたというのに大賑わい。酔っ払いの笑い声、グラスを交わす音、料理の香りと酒の匂いが入り混じり、独特の熱気が店内を包んでいた。

店に入った瞬間、空気が一変する。店内の視線が一斉にロイドへ向いた。

「……ん? なんだよ……?」

「おい、あれ……あの噂の……」 「スカートの……!」 「“星空のスカート魔法使い”!」

ひそひそと笑い声が湧き、店内の視線が一斉にロイドに集まる。王都を出た時のあの事件──リー・アルが用意したフリフリの試作衣装“銀河の妖精ver.5.0”──のせいで、今やロイドの名は全国に“妙な噂”と共に知れ渡っていた。

「……あれは事故だって言ってんだろ……!」

「人気者アル!注目されてる証拠アル!」

宙を舞うリー・アルは、誇らしげに胸を張っていた。

必死に弁明するロイドに、カウンターの奥から陽気な声が飛んできた。

「ようこそ、“魔法使い”さん! 一杯どうだい?」

「やめろぉぉぉ!!」


陽気な店主フィルド

カウンターに立つのは、にこにこ顔の中年男だった。

陽気にグラスを磨くその男が、ロイドに話しかけてくる。

「俺はフィルド。この酒場の主さ。旅人の話を聞くのが趣味でね、あんたの噂もだいぶ耳にしてるよ」

「最悪だ……名誉毀損で訴えてぇ……」

ロイドは深いため息をつきながらグラスを受け取り、重たい気持ちで酒をあおった。

「この街で、変わった噂やモンスターの情報はあるか?」

フィルドはふふっと笑いながら言った。

「モンスターじゃないが、面白い話がある。千鳥足で戦う女剣士がいるってな」

「……酔っぱらいの話じゃねぇのか、それ?」

「そう思うだろ? でも実際はすごいらしいぜ。どぶろくを片手に持ったまま、ふらふらと舞いながら戦う。相手はタイミングを読めず混乱し、気がつけば一閃で沈んでるらしい。まるで酔拳の剣士ってやつだ」

ロイドが驚いてグラスを持ち直すより早く、リー・アルがぐいっと身を乗り出した。

「シャッチョサン、それは仲間にするべきアル! 飲んで強い、まさに”勇者パーティ”向きアル!」

「いや、お前の基準どうなってんだよ……でもまぁ、まともで強いんなら、一応話はしてみても……」

ロイドが興味を抱きかけた、その瞬間だった。

バァンッ!

酒場の扉が蹴り開けられ、乱暴な足音と怒声が響く。

「ここは俺たち“赤牙団”の縄張りだァ! テメェら、しばらく借りるぜ!」

武器を振りかざした野盗団のリーダー・モーラーと手下たちが、客から酒瓶を奪い、テーブルを蹴り飛ばし、荒れ狂う。

「……うわ、来たよ……こういうのに限って、俺を見つけて因縁つけてくるんだよな……」

ロイドはそっと席を立ち、静かに入り口の方へと歩き始めた。上着の裾を握りしめ、顔を隠し、声を出さずにそろりそろりとドアへ向かう。

「よし、今のうちにズラかろう……」

だが、宙をふわふわ飛ぶリー・アルはその様子をすかさず察知し、叫んだ。

「シャッチョサン!? まさか今、逃げようとしてたアル!?」

「してねぇよ、してねぇってば……! ちょっと風にあたろうかと……」

「ここで逃げたら、勇者の恥アル!! "名ばかり勇者"と呼ばれるアル!」

「むしろそれ今呼ばれてるんじゃ……うわっ、やめっ……!」

リー・アルが素早くロイドのブレスレットに手をかざし、青い電流が駆け巡る

バチバチバチバチィィン!!

「ぎゃあああああッ!!」

全身に電流が走り、髪が逆立ち、ロイドはその場でビクビクと跳ね上がる。

「分かったから!分かったからやるってば!!」

その騒動の最中に誰かが不機嫌そうに声を張り上げた。

「……おい、そこのダサい頭巾の兄ちゃん」

ロイドが思わず振り返ると、声の主は和装の女剣士だった。袴に羽織、脇差を二本差した侍風の姿。どぶろくの瓶をラッパ飲みしながら、野盗団のリーダー格にふらふらと歩み寄る。

「……おいらの飲んでる場所で騒ぐなって、言ったんだけどなぁ……?」

「はァ? テメェ、誰に口きいてるか分かってんのか!?」

リーダーのモーラーが怒鳴ったが、彼女は涼しい顔でどぶろくを一口飲み、ニヤリと笑った。

「おいらに喧嘩売るってことは、酔いが足りねぇってことだな」

「テメェから売ってきたな……やっちまえ!!」

野盗団が一斉に武器を構える。

「千鳥足殺法・一ノ脚《紅梅の斬》!」

コトはどぶろく瓶を片手にふらふらと歩み出す。まるで酔っ払いのような足取りだが、実際の動きは鋭く、間合いに入ると一瞬で切り込む。

脇差が閃き、野盗の武器が弾かれた。

「うぐっ……な、何が起きた……?」

「二ノ脚《紫苑の流れ斬り》!」

一歩後ろに下がると見せかけて、重心を崩しながら滑るように回転し、相手の脇を斬り抜ける。動きは不規則、だが刃は的確。

「三ノ脚《藤花の一閃》!」

低く構えた姿勢から跳ねるように一気に踏み込み、斜め上に向かって一閃。桜色の残光を残して、敵の防御を一刀で崩した。

「な、なにこの動き……読めねぇ……!」

酒場の客たちが唖然とする中、次々と野盗が倒れていく。

が——

「……眠ぃ……ちょっと休憩……」

どぶろくをぐいっとあおったコトは、その場にぺたんと座り込み、うとうとと舟を漕ぎ始めた。

ロイドは店の隅からその様子を見ていた。

「……やれやれ、寝たよあいつ……」

ちらりと扉に目を向けるロイド。

「このまま出て行けば、巻き込まれずに済むか……」と、そっと席を立とうとしたそのとき。

「シャッチョサン! 今逃げたら、勇者失格アル!!それに…か弱そうな女の子がピンチアル!漢なら救わなきゃいけないアル!」

「いや…まあ…でも…俺には関係ないし…あいつさっきまで強かったから大丈夫かなぁっと…」

「ふ~ん…そういう態度とるアルかぁ…」

リー・アルはロイドのブレスレットに手をかざし、電撃を放とうとした

「ま、待て!話せばわk——ぎゃああああッ!!」

バチバチバチバチィィン!!

「シャッチョサンのバカ!そんな薄情な人なんて見損なったアル!」

全身に走る電撃。ロイドは白目をむきながら、あぁと悶絶をしていたが、反射的に酒瓶を掴んでラッパ飲みをした

「!!シャッチョサン!それでこそ勇者アル!さぁ!やっておしまい!」

リー・アルが喜ぶ、ロイドは半ば意識を失いつつある中で

「アル・チュープリズムパワーメイクアップ!!」

叫ぶと同時にいつもの謎の音楽と効果音と共に、ピンクのフリフリ衣装が出現!スカートの中からきらめく日本刀を二本抜き放つ。

「星空剣舞・双星閃!」

ロイドの動きは舞うように華やかだが、確かな剣筋が光る。

二本の刃が交差し、敵の攻撃をさばきながら連続で斬り伏せていく。

「うおっ、あのフリフリの奴……強ぇ……!」

「やばい、うかつに近寄れねぇ……!」

その隙に、コトがふらりと目を覚まし、どぶろくを一口あおる。

「ふあ……寝てた? ま、いっか……もう一発いっとくか」

「四ノ脚《桜吹雪の斬り》!」

袴をなびかせる回転斬り。舞い散る花びらのような斬撃が、モーラーの棍棒を真っ二つにへし折った。

「ひぃぃっ!や、やべぇ奴らだ……退けぇぇッ!!」

野盗団は蜘蛛の子を散らすように逃げ出していった。

「ふぅ…電撃でお花畑がみえた…え?…なんか終わったか……」

困惑しながらもロイドは刀を納めて息をつくと、背後からフィルドの陽気な声が響いた。

「お疲れさん、勇者さん。そして、修理代の請求ね」

「……やっぱ来たか」

「割れたグラス14、テーブル5、天井の照明2、壁に刀の跡3本。合計——軍資金、ぜんぶ!」

「やっぱそうなるのかぁぁぁッ!!」

リー・アルがにっこり微笑み、レシートを差し出す。

「安心の定価アル!」

「誰が安心するかァァァ!!」


戦いが終わったあと、コトはどぶろくをすすりながらロイドのもとに歩いてきた。

「さっきは助かった。あんたじゃなきゃ、多分今頃どうなっていたかわからなかった」

「え?…そっ…そりゃまぁ……放っとけなかったしな(大嘘)」

「あと、すまんが…今金あるか?どぶろくの飲みすぎで金がねぇ」

「そっちが本音かよ!!」

コトは苦笑してから、軽く胸を叩いて言った。

「おいらの名はコト。見ての通り、千鳥足の酔いどれ剣士。好きなものはどぶろく。嫌いなものは酔いを邪魔する奴」

そして、にかっと笑った。

「……あんたらと一緒にいれば、退屈しなさそうだし、酒代もなんとかなりそうだ。だから……よろしくな、勇者サマ」

リー・アルがパチパチと手を叩いて回りながら喜ぶ。

「新たな仲間加入アル!酔剣士とフリフリ勇者の珍道中、開幕アル!」

ロイドは天を仰ぎ、深く長いため息をついた。

「……この旅、本当に世界を救う旅なんだよな……?」

こうして、助けられた恩と、深刻な金欠を抱えたコトが仲間に加わり、ロイドの冒険はますます前途多難な道を歩み始めるのだった――!

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