第3話 「旅立ち!森でトカゲに挑む!」
*この作品には…過度な飲酒描写と喫煙描写が含まれていますので、
苦手な方は ブラウザバックして下さい(震え声)作品中の行為や行動について
よい子の成年は絶対真似しないでください(注意喚起感)
なお、お酒とたばこは20歳になってから…容量・用法を守って
正しく摂取してください(未成年への注意喚起感)
ロイドはキラーバニーを倒したことで村人たちから一応の感謝はされたものの、その後に続く村人たちの視線は冷たかった。
「あの姿で救ってもねぇ……。」 「あれが”勇者”にあこがれた変態か……。」 「正直…村には近づかないでほしい。」
村人たちの囁き声が耳に刺さり、ロイドは肩を落としながら歩いていた。住んでいた宿屋のおばさんにまで「申し訳ないけど、もう出て行ってくれないか?」と言われ、ついに泊まる場所も失ってしまった。
村の出口に差し掛かったところで、ロイドは財布を覗き込み、残りわずかな資金を見て途方に暮れた。
「ちくしょう……こんなはずじゃなかったのに。俺はただキラーバニーを倒しただけだろ?なんでこうなったんだよ……住む場所も金もないし、これからどうすりゃいいんだ……」
そんなロイドの隣で、宙をふわふわと飛ぶリー・アルは楽しそうに笑いながら軽口を叩く。
「シャッチョサン、さっきの村での評判、実はかなり良かったアルよ!」
ロイドは顔をしかめて言い返す。
「良かったわけねぇだろ!変態だの散々言われて気まずくなって出てきたんだぞ!」
リー・アルは楽しそうに目を輝かせて続ける。
「でも、キラーバニーを倒したことで少なくとも『強い変態』として一目置かれてるアル!」
「褒められてる気がしねぇよ…あぁ…明日からどうすりゃあいいんだよ…」
ロイドが頭を抱えてため息をつくと、リー・アルはふっと肩をすくめ、彼の背にそっと手を置いて言った。
「シャッチョサン…落ち込むことないアル。誰だって最初はうまくいかないアルよ。でもね…シャッチョサンはちゃんと戦ったアル。逃げなかったアル。それって、勇者としてとっても大事なことアルよ」
ロイドはちらりとリー・アルを見たが、相変わらず胡散臭い笑みを浮かべ、続け様に
「…こんなやり取りをしてる間にも…魔王は刻一刻と勢力を拡大していってるアル!ぐずぐずしてる場合じゃないアル!”勇者”になる案内してやるアル!心配ないアル!レッツゴーアル!」
「誰のせいで…こうなったと思ってんだよ…まったく」
「ん?なんか言ったアルか?お金より強い電撃がご所望アルか♪」
「ひぃ…わかったよ!案内してくれ」
「その意気アル♪ シャッチョサンのそういう“素直”なところ、好きアル♪」
リー・アルは満面の笑みでロイドに親指を立てるが、ロイドは引きつった笑みを浮かべたまま一歩距離を取った。逆らう…契約時の“電撃”の記憶を記憶を思い出させる。
「んで…具体的には、どこへ向かえばいいんだ?」
「とりあえず…王都:グランパスへ向かうアル!魔王を倒すためには、まず情報と仲間を集めるのがセオリーアルよ!」
「王都ねぇ……なんか急に本格的になってきたな」
そんな軽口を交わしながら、二人は旅路を進んでいく。広がっていた草原は徐々に影を落とし、景色は静かに変わっていった。
気づけば道は細くなり、木々が覆いかぶさるように頭上を塞ぐ。ひんやりとした空気が肌に触れ、森の奥には白く濃い霧がたちこめている。
「……ここを抜けるのか?」
ロイドが呟いたそのときだった。
霧の立ちこめる森の入り口に、ひとりの男が立っていた。
森の案内人オーレン
「おい、あんたが噂の勇者か?」
険しい顔つきでロイドを睨む男が、低い声で話しかけてきた。
「噂の勇者だ……いや、ちょっと待て。その『変態』みたいな目で俺を見るな!」
「いや、聞いてた通り変わった格好だなと思っただけだ。」
男は苦笑いしながら、肩をすくめた。
リー・アルがニヤニヤしながら言う。
「シャッチョサン、この人はオーレンアルよ。この森の猟師で、案内を頼んでおいたアル!」
オーレンはため息をつきながらロイドに目を向けた。
「案内するのはいいが、あの森は危険だ。中にはリザードロードって魔物が巣食ってる。それに、森全体が毒で汚染されてるんだ。」
ロイドは顔をしかめる。
「毒の森かよ……嫌な予感しかしねぇ。」
「だから俺もあまり中には入りたくない。必要最低限だけ案内したら、後は自力で頼むぜ。」
「協力する気、ゼロじゃねぇか!」
森の中へ
オーレンに案内されて森に入ったロイドたちは、すぐにその異様さを感じ取った。木々は黒ずみ、地面には不気味なキノコが生え、辺りには腐敗臭が漂っている。
「……これはひでぇな。」ロイドが顔を覆う。
リー・アルが小声で説明を始める。
「この毒はリザードロードの体から発せられるアルよ。森全体を支配している証拠アル。」
オーレンは苦い顔で後ろを振り返る。
「俺はここまでだ。これ以上奥に進むと本当に命が危ねぇ。」
ロイドは呆れた顔で言い返す。
「おいおい、案内人が帰るとか聞いてねぇぞ!」
「悪いな。俺の命を懸けるほどの報酬じゃない。」
そう言い残すと、オーレンは森の入口の方へ急ぎ足で戻っていった。
「くそっ、使えねぇ案内人だな!」ロイドが毒づくと、リー・アルが楽しげに言う。
「シャッチョサン、こういうときこそ勇者の力を見せつけるチャンスアル!」
「見せつける相手がいねぇんだよ!」
リザードロードの襲撃
奥へ進むと、不意に大地が揺れた。地面を割るように巨大なトカゲ――リザードロードが姿を現した。
その鱗は黒光りし、鋭い爪は大木をも簡単に引き裂きそうだ。
「おいおい、あんなの相手にするのかよ……俺、帰りてぇ。」
リー・アルが宙を飛びながら叫ぶ。
「シャッチョサン、早く変身アル!酒を飲むアル!」
ロイドは溜息をつきながら酒瓶を取り出す。
「今日の酒は……ウイスキーだな。」
酒をラッパ飲みし、顔を赤らめながら叫ぶ。
「アル・チュープリズムパワーメイクアップ!」
音楽とスポットライトが降り注ぎ、ロイドは再びスカート、網タイツ、ハイヒールの姿に変身した。
「もう恥ずかしさとか通り越してるわ……!」
しかし今回は、スカートから取り出した武器が違っていた。
ウイスキーで生まれた武器
ロイドがスカートをゴソゴソ探り、取り出したのは――斧だった。
「……おい、これ絶対ウイスキーのせいだろ!」
リー・アルが満足げに頷く。
「ウイスキーの力は豪快さアル!斧がピッタリアル!」
「ピッタリじゃねぇよ!俺のスカート姿に斧とかアンバランスすぎるだろ!」
そんなやり取りをしている間に、リザードロードが毒のブレスを吐きかけてきた。ロイドは慌てて飛び退く。
「おいおい、やる気満々じゃねぇか……!」
斧を構えたロイドは、リザードロードに突撃する。だが、その巨体と鋭い爪の前ではなかなか接近できない。
「こいつ、めちゃくちゃ強ぇじゃねぇか!」
リー・アルがアドバイスを送る。
「斧の特性を活かすアル!ウイスキーの力は豪快さだけじゃなく、炎もあるアル!」
「炎……?そうか!」
ロイドは斧を高く振り上げて叫んだ。
「ファイアーブラッディ・スウィング!」
斧から放たれた炎が渦を巻き、リザードロードを包み込む。モンスターはたじろぎながらも反撃に出た。毒のブレスを吹き付けながら爪で攻撃してくる。
「くそっ、なかなか倒れねぇな!」
ロイドは再び斧を振り上げ、力を込めて叫ぶ。
「ヘビーストライク・フィナーレ!」
斧から放たれた巨大な炎がリザードロードを直撃。モンスターは悲鳴を上げながら地面に崩れ落ちた。
「……やっと終わったか。」
スカート姿で膝をつくロイドを、リー・アルが励ます。
「シャッチョサン、これでまた伝説に一歩近づいたアル!」
「伝説の変態としてな……。」
森を抜け出したロイドは、オーレンが入口で待っているのを見つけた。
「……やったのか、リザードロードを。」
「お前も手伝えよ……。」ロイドは呆れた顔で言い残し、王都:グランパスへと向かうのだった。