第1話 (**)勇者ロイド爆誕!
*この作品には…過度な飲酒描写と喫煙描写が含まれていますので、
苦手な方は ブラウザバックして下さい(震え声)作品中の行為や行動について
よい子の成年は絶対真似しないでください(注意喚起感)
なお、お酒とたばこは20歳になってから…容量・用法を守って
正しく摂取してください(未成年への注意喚起感)
「今日も俺が酒場の英雄だ!」
ロイドは、いつものように酒場の入口でポーズを決めていた。丸いお腹をさすりながら、彼はグラスを掲げる。
「若い頃は俺だって魔王を倒す予定だったんだぞ!まぁ、ちょっと道草食いすぎただけだがな!」
周囲の常連客たちは、ため息をつきながら適当に相槌を打つ。
「ロイドさん、もう魔王なんていないんじゃないの?」
「そうだよ(便乗)。もうとっくに誰かが倒したって聞いたぜ?」
「はっ!馬鹿を言うな!魔王なんて簡単には4なねえんだよ。俺が動けばいつでも討伐完了って…はっきり、わかんだね!」
自信満々に胸を張るロイドだったが、椅子がミシミシと音を立て、ついには崩壊した。
「いてて……この椅子、きっと魔王の呪いだな!」
「いや、お前の体重だろ。」と、冷静に突っ込むバーテンダー。
その日、いつものようにロイドは愚痴を言いながら酒を煽っていたが、店の隅に座っていた怪しい老人が近寄ってきた。
「お主……まだ魔王を倒したいか?」
ロイドは老人の言葉に驚いたように目を見開く。
「おぉ!俺の勇者の魂を見抜いたか、爺さん!」
「魂かどうかは知らんが、お主にはこのブレスレットが似合う。」
そう言って老人は、妙にギラギラと輝くブレスレットをロイドに差し出した。
「おいおい、これ、ただのアクセサリーだろ?」
「いや、これは選ばれし者しか使えぬ古代の神器……お主がその器ならば力が目覚めるはずじゃ。」
ロイドは半信半疑ながらもブレスレットを腕に嵌めた。すると――
「いでぇぇぇ!なんだこれ!腕が焼ける!」
老人はにやりと笑った。
「そのブレスレットの力を使えば、魔王どころか全ての敵を打ち破ることができる。ただし、契約内容をご確認の上…」
ロイドは痛みに耐えながらも、いつになく真剣な表情を浮かべたが
「ふぁ~なんだ、急に眠気が…」
……と言いつつ、椅子から転げ落ちた
「やれやれ…こんなが勇者になれるのかねぇ~」と、またも冷静に突っ込むバーテンダー。
翌朝――。
ロイドが目を覚ましたのは酒場の裏口。昨日の記憶がぼんやりしている。
「昨日の爺さん、何だったんだ……?」
腕を見ると、そこには輝くブレスレットがしっかりと嵌まっていた。ロイドは苦笑いを浮かべる。
「はめられたか……まあ、ただのアクセサリーだろ。」
そう思った瞬間、ブレスレットが突然激しく光り出した。
「おいおいおい、なんだこれ!?」
すると目の前に小さなスーツ姿の妖精が現れた。透き通る羽を 持った可憐な姿だが、その口調はどこか胡散臭い。
「勇者様!この度は『簡単勇者ブレスレット』をご利用ありがとうございますアル!」
ロイドは驚きながら尻もちをつく。
「な、なんだお前!?妖精か?それとも詐欺師か!?」
妖精は得意げに胸を張り、名刺を差し出した。
「ワタシは『有限会社ファンタジック・ホープ』の営業担当妖精、リー・アルアル!シャッチョサン、よろしくアル!」
ロイドは呆れた顔で名刺を眺める。
「……妖精が営業する時代なのかよ。」
リー・アルはカバンから巻物を取り出し、勢いよく広げる。
「では契約内容を説明するアル!重要なポイントは3つアル!」
契約内容の確認
1. ブレスレットの力は魔王討伐専用
リー・アルは巻物の一部を指差しながら話す。
「この力を使うのは、基本的に悪魔や魔獣だけアル!例外として、ワタシが『悪人』と判断した場合や、面白そうだと思った場合も力の使用を許可するアル!」
ロイドは頭を掻きながら文句を垂れる。
「宝くじに当てるとか、酒をタダで飲むとか、そういう使い方はできないのかよ……?」
リー・アルはニヤリと笑う。
「タダ酒は問題ないアル!力を使うたびに飲んでもらう必要があるから、酒場代の心配はいらないアル!」
ロイドは目を輝かせた。
「おお、マジか!それはいいな!」
2. 契約期間は魔王討伐までで、妖精が常に同行
「この契約の間、ワタシはシャッチョサンの冒険に同行するアル!逃げたりサボったりしたら許さないアル!」
ロイドは苦笑いしながら肩をすくめる。
「監視役!?俺の自由はどこ行ったんだよ!」
「勇者になりたくないアルか?いい年こいて、未だに冒険もしてないし、これを機に魔王討伐するヨロシ!」
「いや~でもな、俺には俺のペースってもんが――」
「うるさいアル!」
リー・アルが手をかざすと、ブレスレットから青白い電流が走り、ロイドの体にビリビリと衝撃が走った。
「ぎゃあああああ!わかった、やるからやめろ!」
3. 力を使うには代償が必要
「そして一番大事なポイント!ブレスレットの力は月12回使用のサブスクリプション制アル!料金は月額10000Gアル!」
ロイドの目が飛び出るほど大きく見開かれた。
「な、なんだと!?月額10000G!?聞いてねぇぞ、そんなの!」
「初月無料だから安心アル!」
ロイドは頭を抱えて地面に転がった。
「無料で釣る商法じゃねぇか!俺の貯金は――」
リー・アルはロイドが貯金について熱く語り始めたのを面倒くさそうに見ながら、手をかざして再び電撃を流す。
「ぎゃあああああ!だからやめろって!」
そのとき、村の広場から悲鳴が聞こえた。
「助けてくれー!モンスターが村を襲ってきた!」
ロイドは慌てて現場に駆けつけると、蛇のような巨大なモンスターが村人たちを追い回していた。
「まず、ラッパ飲みで酒を飲むアル!」
リー・アルがどこからともなくビール瓶を取り出してロイドに渡す。
「え、これでいいのか?まあ飲むのは得意だけどよ……。」
ロイドは勢いよくビールをラッパ飲みし始めた。
「ごくごくごく……ぷはぁぁぁ!最高だぜ!」
リー・アルが満面の笑みで叫ぶ。
「シャッチョサン、そして。今こそ勇者の力を発揮するアル!この呪文を叫ぶアルよ!」
「呪文!?どんな呪文だよ!」
リー・アルはドヤ顔で言う。
「『アル・チュープリズムパワーメイクアップ』アル!」
ロイドは絶望した表情で首を振る。
「……ふざけんな!そんな恥ずかしいの絶対無理だ!」
「叫ばないと電撃アルよ!」
ロイドは泣く泣く叫んだ。
「アル・チュープリズムパワーメイクアップ!」
すると、どこからともなく謎の音楽が流れ出し、スポットライトが降り注ぐ。そしてロイドの姿はフリフリのミニスカート、網タイツ、ハイヒールという衝撃的な格好に変身した。
ロイドは自分の姿を見下ろし、絶叫する。
「なんだこの格好はぁぁぁ!!!俺は中年だぞぉぉぉ!」
リー・アルは腹を抱えて笑い転げる。
「似合ってるアル!その羞恥心が力に変わるアルよ!」
「羞恥心で力を得るなんて聞いたことねぇよ!」
蛇のモンスターが襲いかかる。ロイドはスカートを押さえながら必死に逃げ回る。
「おい!こんな格好じゃ戦えるわけねぇだろ!」
リー・アルが笑顔で指示を飛ばす。
「スカートの中に武器があるアル!早く探るアル!」
「スカートの中!?俺を変態扱いから犯罪者に格上げする気か!」
泣きながらスカートをゴソゴソ探り、ロイドは光る杖を取り出した。
「……こんな人生、もうどうにでもなれ。」
モンスターが再び突進してくる。ロイドは杖を振り上げ叫んだ。
「スターダスト・ホーリーブラスト!」
杖から放たれた光の星々がモンスターを包み込み、見事に撃破。
村人たちは恐る恐る姿を現し、ロイドを見上げた。
「……本当に勇者だったのか。」
「でもあの格好は……変態にしか見えない。」
ロイドは肩を落とし泣きながら呟いた。
「……こんな姿で魔王討伐なんて…いやだ…」
リー・アルは満面の笑みで宙を舞う。
「シャッチョサン、これから魔王討伐の旅アルよ!楽しみアルね!」
こうして、変態扱いされながらも、ロイドの波乱万丈な冒険が幕を開けた――!