【前編】姫と従者と白ふんどし!!
むーぶです。
久しぶりの執筆活動はとても楽しくできました。
読んで頂けただけで幸せです。
感想とか貰えたらもっと幸せになりそうです。
時は戦国時代
朝も早い頃、安土城の天守閣を歩く豪華な着物姿の少女がいた。
彼女は腰まで延びた髪を嬉しそうに揺らしつつ城中に響き渡る声量で叫んだ。
「さぁるぅ〜。猿はおらぬかぁ〜」
子供らしい可愛い声を聞き付け、猿と呼ばれた青年が自室から顔を出した。
「姫様。それがしならここに…」
猿と呼ばれた青年の名は秀吉。
後に天下統一を果たした、あの豊臣秀吉である。
「あの〜姫様…さすがにそのような大声で呼ばれると恥ずかしいのですが…」
その言葉を聞いた少女は途端にムッと怒った顔になり反論した。
「誰のせいで大声を出したと思っておるっ!猿のせいじゃぞっ!それに、私を『姫様』と呼ぶなと何度言わせれば気が済むのじゃあ!」
どうやら、かなりのご立腹の様子である。
「しかし、姫様も立派な将軍。それがしのような者においそれと名前を呼ばれるのは不服かと思い…」
この少女。見た目も歳も今で言えば小学生ぐらいなのだが、一度戦があれば鎧に身を包み勇壮に戦場へと赴く立派な将軍なのである。
「口答えするなぁ!私の事は名前で呼べと言ってるじゃろう。それに、猿になら呼び捨てにされてもいいって思っておるし…そのぉ……」
少女は顔がみるみるうちに紅くなり、終いには俯いてしまった。
自分の胸の辺りまでしか身長のない彼女のそんな姿に秀吉はなんだか照れてしまい、恥ずかしそうに少女の名前を呼んだ。
「…信長様。」
かつて、織田家頭首・織田信長は数々の武勲をあげ、戦国武将として名を馳せている。
だが、彼が髭を生やしたハゲ頭の武将では無く、今の日本のオタク文化に沿って『ロリっ娘』だったら…
歴史はどう動いたのだろうか。
この物語はきっと事実である…
〜安土城・天守閣〜
お互いに照れて俯いてる状況の中、信長は顔を上げた。
「猿。今日は何の日か知っておるか?」
その顔はどこか嬉しいそうである。
「いえ。それがしには今日が何の日かわかりません…」
キョトンとした顔の秀吉に対し信長が笑顔で言った。
「今日は猿の18歳の誕生日じゃぞっ!だから祝ってやろうと思ったのじゃ!なのでっ、今すぐに城下に行くぞぉ!!」
少女は秀吉の腕を掴むとグイグイと引っ張り、秀吉を急かした。
「の、信長様!それがしはまだ着替えてもしておりませぬ。少しお待ちをっ…」
……パサッ
「…あっ。」
その時、秀吉の袴が急に動いた拍子で地面にずり落ちてしまった。
純白のふんどしが…丸見えだった…
『いっ、嫌ぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!!』
ばっち〜〜〜〜〜んっ!!!
城中に信長の悲鳴が響いたと同時に乾いた張り手の音が響いた。
「痛あぁぁぁぁ〜〜〜!!!」
これが俗に言う
『履かぬなら はたいてしまえ ほととぎす』である。
『鳴かぬなら 殺してしまえ ほととぎす』は上記の言葉が長い年月を掛けて変化したものである。
〜安土城・城下町〜
真っ赤になってしまった張り手の跡をさすりながら秀吉は小走りで、とある神社へと向かっていた。
ひときわ大きな鳥居があるその神社は城下町に出掛けるときの信長との待ち合わせ場所である。
角を曲がると、そこには髪を二つに縛り、柄の少ない質素な着物に身を包んだ信長が鳥居の所で佇んでいた。
この服装は信長のお忍び用の着物である。
「信長様っ!」
名前を呼ぶと信長は嬉しそうに振り返った。
「猿!やっと来たか。まったく、主人を待たせるとは本当に不届者じゃな。」
「申し訳ありませぬ。信長様」
深く頭を下げる。
「あっ、いやっ…別にそこまで謝らなくてもいいのじゃが…」
まだまだ深く頭を下げる。
「いえ!信長様を待たせるとは」
「だっ、だからもう良い!ほらっ、行くぞ!!」
気付くと周りには子供達やら道行く大人達がこちらを好奇の目で見つめていた。
視線に気付き恥ずかしくなった信長は秀吉の手を掴み逃げる様に走り出した。
「…信長様!?」
…この時初めて二人は手を繋いだ。その指先からは心臓の音が伝わって来る。
この大きな心臓の音はどちらのだろうと秀吉は思った。