第5話
そうなると、祥子の恋人は誰だったのか。その正体を突き止めるのが急務となる。
そのための重大なヒントが、娘の「今度、お父さんにも彼を紹介するね」という発言だった。
特に、冒頭の部分だ。「今度、お父さんに」ではなく「今度、お父さんにも」なのだから、既に私以外の誰かには紹介済みというニュアンスだろう?
この恋人の件について私はきちんと警察に報告したし、彼らも一応は調べたそうだが、それらしき人物は全く捜査線上に浮かんでこなかったという。
私自身も個人的に、興信所やら何やらを雇って調べさせたが、徒労に終わった。祥子の友人知人に当たってみても、皆「知らない」という回答だったらしい。誰もが「彼女に恋人はいなかった」と答えたそうだ。
そうした報告を受けて、私は最初、疑ってしまったよ。
誰かが嘘をついているのだ、と。犯人を庇っているのだ、と。
しかし、よくよく考えてみれば、別の可能性にも思い至る。
祥子と彼の交際が知られていなかっただけで、その人物の存在そのものは、秘密でも何でもなかったかもしれない。つまり、その男と祥子には共通の知り合いも大勢いた……という可能性だ。
回りくどい言い方をしてすまない。
日頃の友人知人の中に恋人がいるのは、まあ当たり前といえば当たり前の話だろうね。そうでなければ、そもそも知り合う機会もないはずだから。
しかし改めて考えてみれば、この「友人にも秘密の恋人」というのは、先ほどのスマホの件にも合致するではないか。
お互いの知り合いには秘密だったからこそ、スマホさえ処分してしまえば祥子との繋がりも露見しない……。犯人は、そう考えたに違いない!
実際、もはや彼についての手がかりは失くなり、これ以上はどうしようもないかとも思われたが……。
私は諦めたくなかった。
その想いが、神様に通じたのかもしれないね。
ひょんなことから、新たに重大な事実が判明したのだ。