第2話
雪のせいで交通も混雑する中、警察に呼ばれて、私が慌てて駆けつけると……。
連れて行かれたのは、薄暗い小部屋だった。他の遺体は見当たらなかったし、それらをしまっておくような設備もなかったから、霊安室ではなかったようだ。臨時に用意された部屋だったのだろう。
中央に台があり、その上に祥子が寝かされていた。
もう見るも無惨な姿でね。すっかり変わり果てていたけれど、私の一人娘だ。それが祥子であることは、一目で確認できた。
詳しい説明は後日ということで、何かの書類にサインさせられただけ。私は呆然としていたし、そんな状態で何を聞かされても頭に残らなかったから、かえってよかったのかもしれない。
警察からの帰り道、ちょうど問題の予備校の近くを通りかかったよ。事件発生の直後は野次馬も集まっていただろうが、もうそれもほとんど残っていなかった。
降り積もる雪で、辺り一帯が白くなっている日だったからね。問題の箇所だけは祥子の血でどす黒く目立っているかと思いきや、それらしき場所は全く見当たらなかった。
警察が事後処理できれいに掃除してしまったのか、あるいは、降り続く雪がすっかり覆い隠してしまったのか。いずれにせよ、そこで祥子が死んだなんて信じられないほど、その痕跡は完全に消えていたのだ。