銀色の髪のアリシア6
【アリシア】が……ザガン王国に伝わる“神”から授かった武器を……破壊する……?
「な……そ、そんな事が……」
出来る訳が無い!
青褪めた顔でそう叫ぼうとした神剣使いアーサー・ウル。
「出来るよ〜」
アリシアは笑いながらそう答えた。
「そ……そんな、馬鹿な……!」
神弓使いマリウス・フォスターも信じられない、といった表情で呟いていた。
「んじゃあ、試してみる?」
アリシアはニッコニコ笑ってそう提案してみる。
「な!? や、止めろ!!」
アーサーはアリシアが自分とマリウスの方へ向けて手を翳したのを見て、大慌てで制止する。
「え〜、何で〜?」
ニッコニコ笑ってアリシアは首を傾げる。
「いい加減にしないか!!」
そこにザガン王国国王のジュリアス・ハロルド・ザガンの一喝が飛んできた。
「これらの武器は我が国の国宝なるぞ! それを破壊しようなどとは! この不届き者め!!」
ジュリアスが顔を真っ赤にして口上を述べると
「だから?」
アリシアはなおも笑いながらジュリアスを見つめ
「この国はもう滅んじゃうんだから、そんなの関係ないでしょ?」
実に楽しそうに告げた。
「な……」
それを聞いたジュリアス・アーサー・マリウスは愕然とした表情でアリシアを見つめる。
「あれ〜? 聞いてないの?」
これには驚いた。てっきり既に報告が上がっているものだと思っていたのだが。
“こいつら……何やってんの?”
アリシアは王都に来るまでの道のりで、散々“この国を滅ぼす”と宣言しまくっていたのに。仮にも国王や国の治安維持を担う騎士団の耳に入っていないというのは、一体どういう事なのか?
“まあ、いいけどね”
所詮はこのザガン王国だ、と肩を竦める。
「んじゃ、無駄話はお終い……いくよ!!」
アリシアは構えると、次の瞬間姿が消えた。
「!?」
これにはジュリアスたちは度肝を抜かれ、大慌てでアリシアの姿を探す。
「何処見てんの? こっちよ!!」
「!!」
ジュリアスたちが慌てて声のした方を向くと、アリシアはアーサーの直ぐ目の前に迫って来ていた。
「な!? 馬鹿な!!」
アーサーとアリシアの間は優に百メートルはあった筈だ!
一瞬で間合いを詰められ、狼狽えるアーサーにアリシアは渾身の拳を見舞った。
「ぐっ!!」
予想を遥かに超える威力の拳を食らったアーサーはものの見事に弧を描きながら宙を舞い、地面に叩きつけられた。
「はい。一つ目、回収〜!」
アーサーがアリシアに吹っ飛ばされ、呆然としていたジュリアスとマリウスはハッと我に返り、アリシアを見る。すると、アリシアの手にはアーサーが持っていた神剣が収まっていた。
「な……な……」
余りの事に言葉が出て来ない様子のジュリアスたち。
「じゃ、これは……」
アリシアは何やら神剣に力を流し込んでいるようだ。
「な……何を?」
ジュリアスが呆然と呟くと
「ん~~! は!!」
次の瞬間、アリシアの手に収まっていた神剣はその形を失い、サラサラと風に流され霧散した。
「……」
衝撃の光景にジュリアスとマリウスは愕然とした表情で神剣が霧散した空間を見つめていた。そこに
「ん~! ほんの僅かとはいえ神の御力が宿っているから思ったより手こずったわ」
アリシアが苦笑混じりのボヤきが聞こえた。
そしてアリシアは
「お次は……どっちにしようかな?」
ニ〜ッコリと笑ってそう言った。
「「……」」
ジュリアスとマリウスに戦慄が走った……
「んじゃ〜、行くわよ〜!」
「「!!」」
ジュリアスとマリウスはアリシアの姿を見失わないよう必死に目をこらす。
しかし今度はアリシアはニコニコ笑っているだけで動く気配は無かった。
「「??」」
アリシアはジュリアスたちに向けて両手を広げている。
「「!!」」
ジュリアスとマリウスは急いで回避しようとしたが……間に合わず凄まじい風圧に襲われ、後ろに吹き飛ばされた。
「ぐっ!!」
「う!!」
ジュリアスとマリウスはそれぞれ近くの建物に激突。意識が飛びそうになった。
「はい。残り二つ、回収〜!」
アリシアの楽しげな声が聞こえ、ハッと顔を上げるジュリアス。
「あ、アリシア……」
ジュリアスはこの後の光景が脳裏に浮かび、何とか阻止しようとするが、身体が思うように動かない。
「さぁ〜て、と……」
アリシアは手にしている槍と弓に力を流し始めた。
「や……やめろ……!」
ジュリアスは懸命に訴えるが、アリシアは綺麗に無視している。
「う〜〜〜ん……」
アリシアは槍と弓に更に力を込めていく。
「止めろ……止めてくれ!」
ジュリアスは必死に叫ぶ。しかし……
「はぁ!!」
アリシアの掛け声と共に、神槍と神弓は形を失って砕け散り、風に乗って霧散してしまった。
「……」
ジュリアス、アーサー、マリウスは呆然と膝をつく。これでザガン王国が誇る宝・神から授かりし武器は永久に失われてしまった。
「さて、と」
アリシアはニッコリ笑い
「[[rb:私が > ・・]]授けた武器の始末も終わったし……本気出して(ザガン王国を滅ぼして)いくわよ〜」
神の力を宿した武器を失ったジュリアスたちはこの宣告を聞き、戦慄が走った。