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銀色の髪のアリシア  作者: 朝顔
2/7

銀色の髪のアリシア2

「な、何? それは一体どういう事だ!?」

「そのような事、神は決してお赦しにはならないぞ!?」

 口々にそう喚く神父たち。

「その事ならば心配無用。何故ならば、私のこの行為こそが神のお心に適う行為なのだから!!」

 アリシアはそう叫び、神父らを討ち取る。

「ふう……、ここはこれで終わりかしらね?」

 アリシアは無残にも焼け野原となった街を見渡す。

 その時

「アリシア……」

 不意にねちっこく、不快感しか感じない声が聞こえた。

「?」

 アリシアは何処からその声が聞こえたのかと、声の主を探した。 

「アリシア……お前は何という事を……」

 背後からそう聞こえ、アリシアが振り返ると

「……あんたたち、誰?」

 見知らぬ初老の夫婦がアリシアを見つめながら泣き(むせ)んでいた。

 とはいえ、この夫婦には何処か既視感を覚える。

「アリシア……私たちが何故身を切られる思いでお前を教会に預けたと思っているのだ?」

 この台詞で、この夫婦の正体を理解した。

 “ああ、そういう事か” 

 アリシアは得心した。

 “こいつらが、私を教会に捨てた……この身体の両親ね”



 しかし……だからといって、この夫婦を特例で助けるという選択肢は端からない。

「だから何?」

 と、容赦無くアリシアは力を両親(と思われる二人)に向ける。

 アリシア・ノールトンという名で生を受けてから、これまで一度だって人間の優しさというものには触れていない。

 目の前の両親? にしたって、銀髪と紫の瞳を持つ子が生まれたという事で、一瞬も躊躇う事無くアリシアを捨てたのだから。

 “だったら……私の方から彼らを捨てても文句は無いって事よね?”

「な、何をしている……?」

「止めなさい! お前は誰に向かって……」

 両親(と思われる二人)は、アリシアの手に力が込められているのを見て青褪めながら叫ぶ。

「知らないし。あんたら誰?」

 アリシアはそう言いながら力を放つ。

「うわあああーーーー!!」

「ぎゃあああーーーー!!」

 両親(らしき二人)は、悲鳴を上げてふっ飛ばされて行った。

「さて。ここはこんなものかしら?」

 アリシアは周囲を見回す。

 周囲にはチラホラと生き残りが物陰に隠れてアリシアの様子を伺っている。

 “鬱陶しいわね”

 そう思うや否や、アリシアは力を全方向にぶっ放した。

「!!」

 そして、周囲に生者はいなくなった。



「な、何だと!?」

 その報告を受け、愕然とする大臣たち。

「そ、それは本当なのか?」

 慌てふためく大臣たち。

「残念ながら本当です。特級罪人アリシア・ノールトンは各地で殺戮を繰り返しながら王都へと向かって来ているようです」

 報告している官吏は、あくまで淡々と報告を続けている。

「……」

 大臣たちの顔は一気に青褪め、言葉が出て来ない。

「……き、騎士団を派遣して……」

 一人の大臣が震える声でそう言うと

「残念ながら全く効果はありません。アリシアが各地で暴れているという報を受けて直ぐ様出陣致しましたが、全団壊滅致しました」

「……」

 大臣たちは愕然とする。

「お、王国が誇る王宮騎士団でも太刀打ち出来ぬ、と?」

「はい。そういう事です」

「……」

 大臣たちが静まり返る中、不意にクックッと笑い声が響く。

「……陛下」

 笑っていたのはザガン王国国王、ジュリアス・ハロルド・ザガンであった。

「【アリシア】……ようやく、か……」

 ジュリアスはそう呟くと、更にクックッと笑う。

「陛下……?」

 大臣らは、そんな国王を呆然と見つめるばかりだった。



 会議場を後にし自室に戻ったジュリアスは、またもやクックッと笑う。

「陛下? 如何なさいましたか?」

 近侍の少年が訝しげにジュリアスを見つめる。

「何でもない」

 そう言ったきりなおも笑い続けるジュリアス。

 “【アリシア】。今度こそ、俺はお前を……”

  ジュリアスは窓から青く広がる空を見つめている。 





本作をお読み頂きありがとうございました。

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