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短編集【不思議】

ボトルメール

作者: ポン酢

フタの閉まった空瓶は迂闊に拾ってはいけない。


フタの閉まる瓶と言ってもペットボトルから、しっかりとして趣のある綺麗な細工を施された物、シンプルな物、透明不透明と様々だ。


そんな中でも透明で中が空である事が見て取れるものがいい。

プラスチック類より昔ながらのガラス製の瓶。

そして瓶の強度が強い方がいい。


瓶に「気分」を詰める方法が発見されたのは、わりと最近の事だ。

声を瓶に詰める研究をしていて偶然発見された。


その画期的な発見はすぐ様世界中で応用された。


治療として落ち込んだ人に楽しい「気分」を処方したり、逆に滅入っている人の「気分」を詰める処置がされたりした。


どんな気分もお金を払えば買えてしまうし、お金を払えば憂鬱さや絶望感ですら瓶に詰めておさらばできる。


しかし得てして、画期的な技術には法整備が追いつかないという側面がある。

そしてその穴を掻い潜る商売がわんさか生まれる。


今は医療行為として医者の指導・管理が義務付けられている。

だが保険適応外なので、正式ルートで行うには大金がいる。


だが考えてみて欲しい。

それ用の「瓶」は誰が作り、どう販売されるのか?


医薬品と同じだ。

規制はあれども穴はある。


理論上、空瓶なら何でもいいのだが、瓶の強度や透明感によって詰めれる「気分」の重量や質が違う。

Web世界にアクセスすれば、どんな情報だって調べられる為、飲み終わったペットボトルに「軽い気分」を詰めて他人に開けさせる遊びが流行っているし、瓶の強度等にそぐわない「気分」を詰めようとした事による事故が多発している。


とはいえ、やはり「気分」を詰める為に専門的に作られた瓶に適うものはない。

されどたかが瓶だ。

売ることに関して罪に問う法律は今はない。


カラン……と入り口のドアが開く音がした。


「いらっしゃいませ。」


「ボトルメールを作りたいのですが……。」


ボトルメールとは、違法瓶詰め気分の隠語だ。

私はにっこり笑う。


「昨今、ボトルメールの認知度も上がって、ただ瓶に詰めておけば誰かが開けるという事も減ってきております。「気分」を送る相手が決まっているなら、こちらなどいかがでしょう?二重構造になっていて一見すると液体が入っているように見えます。お勧めはこちらの香水瓶。贈り物として渡せば、相手はシュッと「気分」を外に出すはずですからね……。」

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