君は僕のかみさま
神様はその吐息から世界を作った。
そんな世界から生まれた僕達は、はじめての産声と涙でひとつの形を作り出せる。
『ゴーレムコア』
吐息と涙、風と水が混ざり合い生まれた核が、土を体に命の炎を動力にして動くゴーレムとなって人々のパートナーとして生活している。
ゴーレム都市、ハルハレム。
その路地裏で、今日も僕は小さな炎を灯し存在していた。
「レムルー! 攻撃よ!」
『ゴワァッ』
甲高い少女の声に従い、まるでアニメでやっていた進撃のなんとかみたいに、僕は汚い地面を踏み締め駆ける。
同じ汚い路地裏の土からできた体に、少女の髪と同じラベンダー色の炎を両目に灯した僕は、大雑把な命令をちゃんと最適化し、僕よりも大きなゴーレムへと両手を振るう。
「ゴルゴム、右へ避けろ! 脇から体当たりだ!」
相対する少年のゴーレムは僕の主人より幾分ましな命令を受ける。
『ゴッ!』
体がかすり、幾分か土が削れる。
痛覚なんてこの土の体にはないから、通り過ぎようとする大きな背中へハンマーのように握った両の拳を振り下ろした。
『グワァッ!!』
「ゴルゴム!」
相手のゴーレムが倒れる。それに焦る少年と勝ちを確信して飛び跳ねる少女。
「やったー! わたしの勝ちね!」
「くっそ! 何だよ、そのチビゴーレム! 毎回雑なオーダーでわけわかんねえ動きしやがって!」
地団駄を踏む少年へ「ふふん、わたしの賢さが反映されたのね」なんてご主人様は煽りまくっていた。
格闘ゲームの嫌な煽り方って異世界でも共通なんだな。
削れた体を路地裏の地面から補充し、僕は思う。
「ッアー! ムカつく! ゼッテー、ぶちのめす! ゴルゴム! 仕事終わったら特訓だからな!」
『ゴッ!』
少年の命令に大柄のゴーレムは起き上がり、主人の髪と同じ色の金茶の炎を燃え上がらせた。
「ふふーん! いつでも来なさい! わたしのレムルが返り討ちにしてくれるから!」
ない胸を張るご主人様がうざ可愛い。
「きゃっ、レムル?」
まあ、見てばかりもいられないから僕はご主人様を抱き上げて家路へ着いた。
これから仕事だ。ゴーレムを動かす訓練とはいえ、遊びのようなことばかりもしていられない。
ここは僕の前世と違う異世界。児童だって働かなけりゃ野垂れ死ぬだけ。
「あ、そうね! お仕事ね! ご飯のためにがんばるわよ!」
『ゴッ』
僕はチートなんていらない、成り上がりもハーレムも望んでない。
ただ腕の中にいる、僕だけのかみさまが笑って生きてくれさえすればいい。
だって僕は君が生まれた路地裏の土と、君の声と涙から生まれた、君の命の炎なのだから。
わんわんと土の頭に鳴り響く神託を無視して僕は歩く。
「ねえ、レムル。毎日楽しい?」
『ゴッ!』
「そう! 良かったわ! わたしも毎日レムルといっしょで楽しいわよ!」
そうやって笑う、君が僕のすべて。
世界の命運なんて誰かに任せて、僕は君と歩んでいくんだ。
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