運命の出会い
また、エタるんだろうなぁ。
みんな運命ってやつを信じるか
少なくとも俺は信じていなかった。
だってそうだろ そんなものがあるんだったら いろんなものが破綻してしまう。仮に 天国や地獄があったとして 運命なんてものがあるんだったら、何のために罰が与えられるのか分からないだろう。それを犯すことは最初から決まってるんだから。
いつも斜に構えている僕は、子供の頃そんな理論を口にしていた。
今日も朝から イチゴジャムやバターではなく、食パン納豆をつけて食べていた。しかも新学期の朝である これほどロックなことはないと自画自賛する。
時間ギリギリに行き汗だくで入学式を迎えるのはいやだと僕は、前日何度も確認をしたバッグを手に持ち余裕を持って家を出た。
これ以上ない素直な天気である。清々しいほどの快晴。
自分とは 正反対の天気に謎の優越感を得た僕は、気分良く初登校をする。
普通ならここで こんな良い日には何か良い事があるんじゃないかと少し期待しながら道を歩く。入学式は桜というイメージがあるが、実は入学式頃には桜は散り始めており、少し緑色の葉が見えるころである。
実は桜は自分みたいに少し斜に構えた花なんじゃないかと少し親近感を覚えた。
最近はそんな身近な物に仲間を探すことに少しだけハマっていた。こんなふうにまわりを見ながら歩くのは斜に構えた僕でも少し楽しい。
そんなこんなで入学式の朝は何もかも順調に進んでいった。
そして早めに学校について僕は校門の前で「天使」を見た。
斜に構えと僕が天使と名をつけるほどの美しさ西洋の天使と違う。日本の天使なのですごく艶やかな黒の長く美しい髪。顔のパーツは そこらのモデルより整っており、その抜群のプロポーションが人間のそれでない気がする。
何よりも その凛とした雰囲気はその場にいる人を圧倒する程のものがあった。
ここでいつもの斜に構えた僕なら何か理論めいたことを頭の中で考えていたであろう。しかしその「運命」の出会いに何も考えられなくなり彼女の前に立った。
彼女は美しく不機嫌な顔をした。
「なんだお前。私の前に立ってないでどいてくれないか。風紀委員の仕事中なんだ 。」
彼女は凛とした表情を崩さず僕の顔をまっすぐ見ながらそう言った。
確かにそうだ 自分が邪魔をしているのは確かだ。いつの僕ならビビッてしまい小さな声で悪態をつきながらそそくさと逃げるだろう。
実際、今までの人生そうしてきた。しかし頭がのぼせあがった僕は何も考えられないままそこに棒立ちをした 。
「本当にじゃまなんだか。というかお前新入生か。道案内ならこの奥に案内所がある。早く退いてくれ。」
彼女は僕の肩を掴み、そのまま右側にづらそうとした 。
僕はあわてて彼女の両肩をつかみ彼女の顔を真っ正面に見た。そしてその顔にまた緊張したがその時の僕は冷静ではなかった。
ここまでの行動も意味不明である。しかし 何かは言わないといけないという衝動が僕を突き動かした 。
「新入生の井端 優馬です!!今日からあなたの後輩になります。そして好きです!!一目惚れしました!!運命を感じました!!結婚してください !!」
彼女は僕の目をまっすぐ見た。
「お前ランクは?」
ここでいうランクというのは、政府から付けられた国民人間力格付け制度のことを指す。
「僕のランクはEです 」
彼女は表情を崩さない。少し間が空いた。
「そうか、私の名前は東堂 杏ランクはA。つまりどういうことかわかるか。」
「わかりません !!」
彼女はものすごく険しい顔をしながら目を釣り上げた 。
「お前の行為は。」
大きく息を吸った。
「校則違反だぁぁぁぁ!!!!!!!!」
あまりにも大きな緊張と大きな彼女の声が僕の意識を奪った。
どうやら僕は人生で初めて規則を破ったらしい。そこで意識は途切れ目の前は暗くなった。
たぶんエタらない。たぶんエタらないはず。