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王道、大暴れ。
川原はキリキリと痛む胃を押さえながら食堂に向かっていた。
手伝いに来ていた己の親衛隊員に、涙の出るような説教を食らってしまったのが原因だ。
『食事くらい、ちゃんと摂ってください!心配です!』
心配してくれる人間がいるというだけで涙が出そうになる程、彼の疲労は溜まっていた。
生憎、購買は人混みで溢れていた為に、食堂へ向かう事にした川原だが、早くも後悔する。
「あー!陸斗!」
「・・・・・・チッ」
思わず漏れた舌打ちは、心の声が漏れたのだと勘弁して欲しい。
よく考えれば、食堂に山瀬がいる事くらい、分かっていた事だ。
そこまで頭が回らない程、疲れていたのだ。
「陸斗!一緒に食べようぜ!」
「・・・・・・遠慮する」
己の元へバタバタと慌ただしくやってくる山瀬から、どうにか逃げられないものかと思案するも、疲れ切った頭では何も浮かばなかった。
そうこうする内に、目の前までやってきた山瀬は、彼の手を掴んだ。
その力の強い事。
「いっ・・・・・・離せ・・・・・・!」
思わず痛い!と叫びそうになった言葉を堪え、離せと訴える川原。
そんな川原の訴えなど聞く耳持たずの山瀬は、グイグイと引っ張ってゆく。
「早く飯食おうぜ!俺、陸斗にずっと会いたかったんだ!」
「・・・・・・どうでもいいから離せ」
「なんでそんな事言うんだ!陸斗、酷いぞ!」
ギャーギャーと騒ぐ山瀬に釣られてか、田多良達まで騒ぎ始める。
「川原・・・・・・陽平が一緒にご飯を食べようと誘っているのに、断るつもりですか?何様です」
「田多良」
田多良は、山瀬に連れられた川原を睨み付ける。
面倒臭い事に、その背後から双子会計や書記、一匹狼に爽やか少年までついてきていた。
転校生がひと際大きく騒ぎ、その一味が川原に突っかかっていたその時だった。