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会長登場。
――場所は変わり、生徒会室。
普段ならば、生徒会役員が各々の仕事に追われている筈の部屋だが、現在この部屋には一人しかいない。
部屋の中央奥にある机に向かってひたすら書類を片付ける生徒会長、川原 陸斗だ。
転校生に惚れた腫れたと大騒ぎする役員達を尻目に彼はたった一人、生徒会の職務を果たそうと頑張っていた。
それもいつまで続くか。
転校生がこの学園にやってきてかれこれ一週間、彼はただひたすら仕事をこなしていた。
捌いても捌いても積み上がる書類の山は嫌になる程高いが、この書類の山から逃げる事は生徒会長として許されなかった。
一人で頑張るには限界があり、自らの親衛隊や風紀委員会、馴染みの教師達に手伝ってもらって、どうにかやってきているが、それも限界がある。
そんな疲労困憊な川原の元に、とある噂が流れてきた。
「――何?真里谷が?」
それは思いがけない噂だった。
川原が聞いた噂は、遂に真里谷が動き出そうとしている、というものだ。
普通に聞けばそれがどうした、と思われる噂だが、川原にとってその噂は悪夢でしかない。
何故なら彼は、真里谷 麗の本性を知っているから、だ。
「アイツはお綺麗なだけの委員長じゃない。気を付けろ」
常日頃、生徒会役員達にも教えていたのだが、春が訪れた彼らの頭からは、すっかり抜け落ちているらしかった。
恋だなんだと転校生の尻を負っている彼らだが、仲間のよしみでもう一度、忠告しようかとも思った。
だが、彼らと接触すれば必ずあの煩わしい転校生とも接触しなければならない。
自分の心労がこれ以上積み重なるくらいなら、仲間のよしみだとかどうでもいい。
そう思える程、川原は疲労困憊だった。
一応、風紀委員会には真里谷の動向に注意するよう呼び掛け、ひたすら生徒会の仕事に取り組む。
取り組みながらも、やはり気になるのは真里谷 麗の事だったが。
「・・・・・・面倒な事になりそうだ」
ズキズキと痛むこめかみを押さえながら、再びペンを握るのだった。