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委員長が登場します。
今日も今日とて、彼は食堂で大はしゃぎしている。
生徒会専用テラスを我が物顔で利用し、美形達を侍らせて。
そんな彼を、テラスから離れたテーブルで食事を摂る手を止めて見つめる生徒がいた。
「――あれは何かな?」
涼やかな声音とは反対に、同席していた生徒とその周囲は一瞬にして凍り付いた。
「"アレ"は先日編入してきた生徒ですよ、委員長」
凍り付いた周囲の代わりに応えた生徒は、転校生よりも、目の前の"委員長"と呼んだ生徒に熱い眼差しを向けている。
そんな眼差しをモノともせず、彼はふぅん、と相槌を打つ。
「アレが? ・・・・・・汚い」
ポツリ、と呟かれたその言葉は階下の生徒をもぞくりと震わせる程、冷やかなものだった。
"委員長" ――真里谷 麗。
彼は全てに厳しい人間で、彼の怖さを知らない者はこの学園には殆どいないだろう。
一部を除いて。
食事中の転校生を見つめる目が更に冷やかなものになる。
そんなブリザードを気にしない生徒――霧沢は、真里谷に尋ねる。
「如何しますか?」
霧沢の問いに、真里谷は冷淡に答えた。
「僕は綺麗好きなんだ」
かくして、転校生は何も知らぬまま、謎の委員長――真里谷を動かせようとしていた。