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王道がやってきます。
――紫堂学園。
そこは、中高一貫の全寮制男子校で、都心から遠く離れた街に隔離されるように設立されている。
中高一貫、男子校という事もあり、校風は自由だが同性愛が蔓延る学園だ。
そんな紫堂学園には生徒間である噂が流れていた。
だが、その噂の真実を知る者は僅かで、それが只の噂かどうか真意を探り当てた人物は今までいない。
まことしやかに囁かれる噂を余所に、紫堂学園に何年か振りの転校生がやってきた。
その名も、山瀬 陽平。
山瀬 陽平、転校初日。
正門で待ち構えていた生徒会副会長に「笑顔が気持ち悪い」と言い放って気に入られ。
上機嫌な副会長が気になって、様子を見に行った双子会計をあっさり見分けて気に入られ。
無口な書記には「喋らなくちゃ言いたい事も伝わらないんだぞ!俺が聞いてやる!」と言って気に入られ。
一匹狼な不良に「俺が友達になってやる!」と友達宣言をして気に入られ。
爽やか少年には詳細は分からないが、取り敢えず気に入られ。
あれよあれよという間に、転校初日にして友達を六人も作る事に成功していた。
それも美形ばかりの。
そのせいか、彼らを慕う親衛隊に嫌われ、嫌がらせを受けるも腕っ節の強さで取っ払い。
迂闊に手を出せば、副会長辺りが何か仕掛けてきそうでなかなか制裁を加える事も出来ず。
学園内はいつになく、不穏な空気が漂っていた。