第一話 勇者辞めてPMSC(民間軍事会社)始めます その一
この作品は数話後に残虐の描写が出ますが大したことはないので気軽に見てもらえるといいです。
勇者
みんなから注目され憧れ、そして人々を虐げる魔王軍と戦い、世界の英雄として歴史に名を遺す。
勇者の物語では王道はそんな感じであるが、たまに例外はある。
例えば異世界から勇者として召喚された青年が身に覚えのないことで犯罪者にされたり国から追放されたりいろいろある。
まあこうなるのは召喚を実行した国の過去や文化、世界観の違いが生じるためだろう。
そう、ここにも問題を抱え、異世界から勇者として召喚された青年が不満を叫んでいた。
「こんなことやってられるかあーーーー!!」
不満を叫んでいるのが俺、相楽 慧千、大学生。
大学に向かう途中、地面に蒼い魔法陣が出現したかと思ったら少し体が浮いて、魔法陣から出た光に吸い込まれ気が付いた時にはすでに異世界に飛ばされていた。
「慧千様!!お気持ちは十分わかりますが、大広場で堂々とそんなことを言ってはいけません!!」
俺のことを注意している女性はカタリナ・ベネット。慧千の補佐を公国の君主、ヴァルタス・ネクノ公から任命された公国内唯一の王宮魔法使い。
「そもそもなんで魔法使いが街に二人しかいないの!!おかしいでしょ!!」」
この国は魔法使いの育成などには力を入れておらず魔法使いの学校が存在しないため魔法使いがごく少数しかいない。少数いる理由は何らかの理由で元いた国から流れてきた魔法使いが公国に行きつき働き口を探していたため公国の魔法使いとして雇用されたという。
そのなかでも優秀だったのがカタリナだった。魔法使いが各地方の街などに駐在しているため、少なすぎる人員のせいで王宮の魔法使いがカタリナしかいないのだ。
なぜこんな堂々と不満を叫んでいるのか?
それは今から数分前まで遡ることになる。
一人の青年が疲れてやつれた顔をしながら仲間であろう女性と一緒に通りを歩いていた。
「今日も、、、、疲れましたが何とか乗り切れましたね、、、、今日はもう休んで明日からまた頑張りましょうね」
「、、、、そうだね」
青年は少し間をおいて今ある限りの力で返事をした。
青年の目の下にはくまができており、いつ倒れてもおかしくないような足取りで歩いていると広場に出た。
「少し噴水のベンチで休んでいきましょう。このままでは宿に着く前に倒れてしまいますよ?」
女性が気を遣って広場の噴水にある近くのベンチで休もうと言ってくれた。
「ああ、助かるよ、ごめん気を遣わせて」
「いえいえ、私が勝手に気を遣いたいだけなので気にしないでください」
そう言ってくれた女性と一緒に青年はベンチに腰掛けた。
ここはネクノ公国の西の端にシュクムツという街。
かつてここ一帯に小国、セクトマジェスティー帝国、通称セクティ―帝国という国家が存在した。
シュクムツの街は、当時セクティー帝国の帝都カミルであり栄華を極めて繁栄していた。だが他国との戦争が開戦したことにより、セクティー帝国が追い詰められ滅ぼされてしまった。
そんな歴史を持つ街で彼らは仕事を終えた帰りであった。
休憩中、俺は仕事のことを考えていた。
(、、、、、そういえば明日の朝の仕事は、、、、、そうだ偵察任務、、、、、確か、知性のない大量の魔物の巣の発見、山賊のアジト発見、できれば山賊の親玉の排除だったかな?昼は町の防衛任務、、、、ていっても弱い魔物が大量に押し寄せてきてるだけだが。夜は防御壁を越えてくる侵入者がいないかの壁周辺の警備と街の巡回か、、、、、、、、、、)
明日一日中の仕事のスケジュールを確認していると疑問に思った。
(、、、、、、、これ過密すぎない?なんか)
仕事の量が異常なほど多いことに今更になって気が付いた。
(そういえばなんでこんな多いんだ。普通考えて一日は一つや二つの任務だけなのに、それに加えて防衛任務と巡回はほぼ毎日、、、、、前の日は早馬でシュクムツから首都に荷物を届けてほしいだの城に密書を届けてほしいだのがあって首都まで行ってシュクムツに帰ってくるまで三時間かかった。
終わったと思ったらまた荷物やら密書を持たされて無理やり首都まで行かされた。このやり取りを三回繰り返した。
その前の日は、、、、、、、、なんか思い出したくなくなってきた、思い出すたびに頭痛くなりそう)
嫌なことを思い出しながらなぜこんなことになったのかを頭痛になりながら原因を探ろうとしていた。
(おかしい!おかしいぞ!!ここまでひどいのに何で気づかなかったんだ!!!普通最初に気付きそうなのに、、、、、、ん?最初??、、、、そういえば、、、、、、、、)
さらに戻って五か月前、ネクノ公国の首都ハミルダ。
ハミルダの教会で召喚された俺は司教・ヒルティスに連れられ馬車で王宮に向かっていた。
「さぁ、着きましたよ勇者様、ここがこの首都ハミルダの王宮です」
王宮の門前に着くと馬車を降りて門の周りを見渡した。
王宮に入る前には、煌びやかな門があり装飾も施されていた。門の横には戦士の彫刻の像があり、その出来栄えに圧巻して驚いていた。
「おお、すごいですね、ここまで大きい像は元いた世界でもそうそうないですよ。門の装飾も凝ってますねー」
「当時の職人たちが意外と凝り性だったみたいで一、二年かけて作ったみたいですね。さぁそんなことよりヴァルタス公がお待ちです。門を開けてもらうように門番の人に言ってきますので少しお待ちください」
そういうと門の近くにいた門番らしき兵士の人に近づいて門を開けてもらうように掛け合った。
「はい、わかりました」
そう言って少し待つと門番の人が門を開けてくれたときにヒルティスさんが戻ってきた。
「では門が開いたので行きましょうか」
そう言われた俺はそのままヒルティスさんに連れられ王宮内に入っていった。
玉座の間まで入った俺は国の指導者に会うこと自体がはじめてなため少し緊張気味であった。ヴァルタス公のはじめて会った印象は、知的な雰囲気を漂わせそれでいて大胆さも持ち合わせているような風格を感じた。見た目はクールでイケメン、明らかにモテそうな感じがなんか腹立つ。目は紅蓮のうように猛火の炎の色の瞳をしていて、体格は細く見えるがそれでいてガッチリ筋肉質のように見えていた。ヴァルタス公が玉座から立ち上がり、、、、、、
「よく来てくれた勇者殿、まず私はあなたに謝罪しなくてはいけない。国の非常事態のためとはいえ召喚の儀を行い、元の世界から勝手にあなたを召喚してしまったことをここに謝罪する。本当に済まない。」
ヴァルタス公はそういうと深々と頭を下げてくれた。勝手にこの異世界に連れてきてしまったことに罪悪感を感じ、俺の気持ちを汲み取って謝罪したかったようだ。
そんな俺はあまり元いた世界に未練はなかった。むしろ連れてきてくれて感謝すらしていた。
「頭を上げてください。むしろ私は召喚されてよかったと思っています。元の生活は退屈だったので、それに、、、、、、」
ライトノベルや漫画をよく趣味で読んでいた俺はいつか異世界に行って冒険してみたいと思っていたのだ。
「それに?」
ヴァルタス公は後に何を言おうとしたのかを気になり聞いてきた。
「いえ!なんでもありません!、、、、それよりもさきほど陛下がおっしゃった国の非常事態とはなんですか?」
さっき言っていた国の非常事態が気になりヴァルタス公に聞いてみた。
「う、うむ、、、、では本題に入ろう。今この国は魔王軍らしき魔物の群れに襲われている。この国を取り囲むように包囲しているのだ。偵察部隊を送り状況の把握を試みたのだが消息が次々と途絶えてしまったのだ。偵察部隊がどうなったかの調査をしたいところだがこの国は人員が完全に不足している。
それにたまにだが強力な魔物が街に攻撃を仕掛けてくるのだ。街を取り囲んでいる防御壁を簡単に破壊されてしまうためその時の奇襲に備えて衛兵を配置していなくてはならない」
話を聞く限りかなり切羽詰まっている状況というのが分かった。しかしヴァルタス公が言った魔王軍らしきというのが気になった。
「魔王軍らしきということは魔王軍の侵攻なのかどうかは分かっていないのですか?」
(いくら敵の情報がないからと言っても何らかの目印はあるんじゃないのか?軍旗とか)
そう、普通のこの時代は正規の軍隊は自分たちのシンボルの旗を持って進軍をする。
「それがやつらは目印の軍旗を掲げていないので魔王軍かの判別がつかんのだ。軍隊はどこの軍かわかるように軍旗を掲げて進軍をするものだ。当時は魔物の群れが攻撃してくるので魔王軍の部隊だと考えていたのだが、攻撃の最中でも軍旗を掲げていない。
しかも攻撃してくる敵部隊全体を見ても誰も軍旗を持っていないのだ。奴らは軍旗を必ず掲げているので誰も持っていないのはおかしいと考え、何者かに魔物が操られているというのが今の結論になったわけだ」
魔王軍のみならず必ず国の軍隊は進軍の際は必ず軍旗を掲げるもの。いくら隠密行動をとる部隊でも軍旗は必ず所持している。軍旗を掲げるだけでも敵国の戦意喪失や情報操作をして妨害することもできるのでするかしないかでだいぶ違うので重要な役割を担っている。
「なるほど、それで私は何をすればよろしいのですか?」
だいたいの話を聞いた後にこれからのことで何をすればいいのかヴァルタス公に尋ねた。
「うむ、これからのことを私直々に説明したいのだがなにぶん多忙の身ゆえ、済まぬが後のことはヒルティス司教から説明を受けてくれ、、、、それでは、私はこれで失礼する」
そういうと玉座から立ち、玉座の間の扉を開け執務室へと向かっていった。
「さあそれではこれからのことについての説明をいたしますので場所を移動しましょう」
そう言って俺は玉座の間を後にした。
数分歩いて説明を受ける部屋まで連れて行ってもらいこれから勇者としてやってほしいことについて説明が始まった。
「それでは説明に入る前に一人では不自由だと思い補佐をつけることにしました。では入ってきてください」
そういうと一人の女性が部屋に入ってきた。
「初めまして勇者様、カタリナ・ベネットと申します。これからよろしくお願いしますね」
どうやらこの女性は魔法使いで彼女が俺の補佐を任せられたようだ。
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
挨拶を軽く済ませるとヒルティスが咳き込み、説明を始めた。
「それでは説明させていただきます。ヴァルタス公がおっしゃったとおり、今現在この国は魔王軍らしき謎の敵勢力により完全包囲されています。なのでまず偵察部隊の調査から始めてください。生き残りがいればなんらかの情報を持っているはずなので事情聴取を行った後、情報を頼りに敵の拠点の捜索をしてください、ここまでは大丈夫ですか?」
ヒルティスがそういうと装備品らしきものが入っている袋を取り出してきた。
「はい大丈夫です、わかりました」
そう返事するとさらにヒルティスは説明を続けた。
「それではこれからシュクムツの街に向かってください。街での巡回や警備などもやってほしいので衛兵隊と混じって任務を行ってください。あと防御壁に群がっている大量の低級の魔物の排除や盗賊などもいるらしいのでそちらのほうもお任せします、ほかにもまだ任務が、、、、、」
数え切れない任務などを言われ、俺は困惑していた。
「ちょ!ちょっと待ってください!!いきなりそんなにやれって無理ですよ!!!」
そういうとさらっとヒルティスが言ってきた。
「大丈夫ですよ、慣れれば問題ないです。それでですね他の任務は、、、、」
あ、ダメだこれ人の話聞いてないと思った俺はそのまま黙って任務の説明を聞いていたが任務の説明を1時間以上聞かされ、これからしないといけないことの数が異常に多いことを考えたら、今までにない頭痛が襲い掛かり、そこで俺は絶望を感じ、考えるのをやめてしまいブラック業務を淡々と五か月も続けた。
(、、、、そうだ、そうだよ思い出した!!最初からブラックだったじゃないか!!考えるのやめて頭使わなかったせいで脳がマヒしてたんだ!!じゃあこのまま続くのか?こんな地獄生活が!!カタリナと一緒に頑張ってきたがもう限界だ!!!こんな地獄が続くくらいなら勇者なんて辞めてやる!!!!)
まだ大したことのない残虐な描写はまだ先ですので次回作に期待して待っていてください。