前夜 その7
「あの、なんでここに女の人が入ってきたんですか?」
至極当然の疑問だ。今泉は聞く。
「ちょっと待って、怖い。誰なのあんたは?」
なにもしていないのに被害者面かよ…。そういう態度は気に入ら…くそ…
「眠い…」
身体が重くなる。まるで自分の身体と精神が切り離されたみたいだ。動かない。58㎏ある肉塊を心だけで支えている。その心も…もうまともに…考えることもできない。
「さぁ、今から異世界に旅立つのだ!」
プルアは高らかに言葉を放つ。椅子から立ち上がっただけだろうが、プルアが天に昇っていくように見えた。
「ッ待って…。くれよ。たのんだものとちがうんだけど…ぉ‼」
最後の力ふり絞って抗議を行う。
「こ…っちも、なっとくしてないんだけど…ぉ…、」
女の声が聞こえる。床に倒れ込んだのか姿は見えない。
「ま…………………だろう……男性創造主。…女性創造主……頑張ってね。……!!」
プルアが天に昇ったのではない。俺が先の分からぬ闇に落ちてんだ。意識が途切れる。また、眠った。
……
………
…………
目が覚める。
心地よく目が覚めたわけじゃないのにぱっちりと目が開く。これが開始の合図か。
手元に何かが触れる。規則書と異次元バッグ。渡された物は一式揃ってる。
「あーーーーーもう…何がどうなってんのよ…」
頭を抱えている女。確か眠る前に奴が俺の寝ているところに入って来た。覚えている。
「お前、名前は?」
にらんだような顔でこちらをにらみつけられる。
「ねぇ、あなたは持ってける物に何を選んだの?」
質問には答えないってか?ここで得体のしれない女と喧嘩したくはない。答えてやるか。
「トランプ…おれポーカーのプレーヤーなんでね。」
「あーーーーー、そーゆーことかぁあああ‼‼‼」
また大きな声を出す。騒がしいやつだ。正直引く。
その女はおもむろに口を開いた。
「私が希望したのは…私を必要とする男。」
「そんで、あたしの名前は、トランプ・シャンテ…」
「なるほど、引き寄せ合ったってわけか。」
あのプルアとかいうのはとんでもないやつだったな。今泉は早くも精神をやられかけていた。
ご意見ご感想有りましたらコメント欄にお願いします。