前夜 その5
魂魄遊戯。唯一の突破条件が魂魄を20個集め、珍龍を召喚すること。
大会の舞台となる世界には無数の魂魄が存在する。
「じゃあ、その玉はどこにあるのか。気になるよね。」
「えぇ、気になります。突破条件に直結してますから。」
「それは…」
「はい、」
「『男の娘』が守っている。」
…
……
………
「まぁ、初めて聞くよね。」
男の娘?この対義語の組み合わせはまったくわからない。その世界特有のものか?
「なんですか、それ?」
おっと、質問禁止だったか。
「今から説明するよ。そうなるのも当然さ。」
プルアは再びこちらにタブレットを向けた。そこには、華奢な少女の像が映し出されている。
「君が今から向かう世界の人間は2つに分けられる。『呑仮人』と『男の娘』。前者は君と同じ、性別がはっきりとしている人間だ。」
「後者は性別という区分に囚われない。なぜなら、どちらでもあり、どちらでもないからだ。彼ら彼女らは好きな方を選び、生きている。」
タブレットをこんこんと叩く。確かに言われてみれば、少女にも見えるが、少年に見えなくもない。中性的な顔立ちである。
「『男の娘』は生まれつき魂魄と勃象をその身体に持っている。『呑仮人』でいう所のち○ことき○たまだ。」
「そいつを取り外しているときは女。付けているときは男。どちらにもなれる。」
20年生きてきたが、今一番力が抜けている時かもわからない。なんというか。2~3話前には「覚悟はいいか。俺はできてる。キリッ」って感じだったのに、こうも失速するかなあ?
「ちょっと待って。ということは今から男の股からき○たまを貰いに行くってことか?そ、そういうことなんですか!?」
これはどうしても解決しなきゃいけない。俺にそんな趣味はない!
「貰うのもよし。着脱が簡単だから、もぎ取るもよし。20個そろえれば、試練突破ができうる。」
うえぇ…。そこじゃなくて。何のためにそんなことを。自然と気の抜けたため息が出る。
「安心すべきは男の娘1人につき2つ魂魄を所持していることだ。10人から2つずつもらえば簡単に集まる。」
そこまで同じなのかよ。目が引きつる。
「だが、現実そうもいかない。魂魄を持っているのだ。男の娘はもちろん自衛の術を持っている。」
ここからが重要。そう言わんばかりに少しトーンを低くしゃべる。
「自衛…の術ですか?」
「そう。『男の娘』の大きな特徴は勃象を身に着けているときに、超能力を使うことができるのだ。」
「超能力!?どんなものが?」
「それは個人によって異なる。ある者は火を噴くし、ある者は風を起こす。そしてもう一つ、勃象には特殊なことがある。それは…」
「そ、それは?」
「食べると、んんんまぁ~い、てな感じで叫ぶほど美味だ。」
ガクッと力が抜ける。そんなものを食べる気はおきんよ。
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