馬車は揺れる。
馬はいななき、馬車は進む。
舗装のされていない道を進んでいるのだろうか、馬車は上下左右に揺れに揺れる。目隠しをされて車に詰められた4人。車内には小窓がついているのだが、目をふさがれた今、外を見ることはできない。
「吐きそうだわ…。」
トランプは不満を吐き出した。元の世界の文明がどれほど高度だったかを改めて認識するのだった。
「やめてくれ、俺も吐きそうになる。」
イマイズミも相当まいっていた。のどに苦い物がこみ上げて、頭がぐるぐるとなるような感覚を必死にごまかしていた。
「…気を紛らわすためにお話しませんか。あなた方より、私のお隣の方が限界に近付きつつあります。」
サイムの声がする。隣というのは昨晩レギンに恐怖し腰を抜かした女性創造主候補の事だ。
「お隣…えーと、名前は…」
「カサネといいま、ふ…」
イマイズミは声色から猶予は短いとわかった。この狭い車内でぶちまけられれば、誰も無事ではいられない。
「カサネ…確か、あたしの目の前にいるのよね。ヘンなことは起こさない事があなたの身の為よ。」
恐怖からか、トランプはカサネを脅す。カサネは「すみません…」と謝るばかりだった。
その会話の流れを変えるように、いや、今までのやり取りなど気にも留めていなかったのだろうか、サイムが口を開く。
「昨晩、私がいなくなった後は何が起こっていたのでしょう。」
サイムは部屋を追い出された後、他の者より先に部屋の下方の着地点にいた。イマイズミたちは気が付かなかったが、そこには待機している男の娘がいて、「他の者が落ちてくるまで待っていろ」と言い聞かされるばかりだったようだ。
イマイズミ、トランプも部屋の中で起こったことを説明する。集められていた創造主候補の中にコチノクボの男の娘がいた事、レギンに試された結果、イマイズミは合格者となった事…。
「そ、そうだったんですね。」
カサネはこくこくとうなずいて、初めて知ったように話を聞いていた。
「カサネはあの場にいたじゃない?」
トランプの問いかけに対しカサネは
「あ、実はあの恐い人に怒鳴られてから部屋が崩れるまで記憶が無くて…」
と答える。あの恐い人とはレギンの事であろう。つまりは最初に気絶してそのままだったということだ。
「一つ気になるんだけど、思う壺は結局どうやって正解を当てたわけ?」
トランプはイマイズミに問いかける。私も気になります、とサイムも言った。
「まぁ、種が分かればどうってことない話なんだが、」
揺れる馬車の中で、イマイズミは話し出す。




