コチノクボと思う壺 その12
「壁、崩れてる…!」
地面が揺れ出したかと思うと、部屋の崩壊が始まった。足を付けている床すら不安定だ。そう思っていると唐突に床が溶け出したのである。
ドロドロの床に創造主候補含め、すべての者が飲み込まれてしまう。トランプは溺れた様にあっぷあっぷと床上に出ようとするが、頼る物がないのでその抵抗も無意味であった。
床に飲み込まれたかと思うと、今度は体が浮いていた。訳も分からず落ち行く途中、イマイズミは月明かりに崩れていく部屋の外観とそこに続く階段を見た。イマイズミたちの入っていた部屋は何の道理か空中に在った。それが分かったところで何も変わらないが。
「ぐえ…」
イマイズミは土の上に落ちる。その土はふかふかであってどうやら転落死は避けられたようであった。
目まぐるしく変わる光景に夢を見ている感覚がする。脳が働かないうまく考える事もできない。
「立ち上がるのだ。イマイズミよ。」
目の前に歩み寄ってきたのは、レギンであった。地べたに横になっているイマイズミに手を差し伸べる。
「私は貴様を認める。よく頑張ったな。」
レギンはそう言った。イマイズミはここで命を奪われそうになった事に不満を言うほど頭が悪くはなかった。ええどうも。そう返事をして自力で立ち上がる。
周りを見渡せば、ローブの人間やラオ、ノウといった面々は居なくなっていた。今いるのはトランプ、イマイズミ、何もしなかった創造主候補、レギン、そして、先に沈められていたサイムの5人であった。
レギンは全員に向かって言う。
「今日は君たちに悪い事をしたと思っている。宿探しも出来ぬだろうから隊所の一室を貸してやろう。そこで休むといい。」
全くどういうことなのか。優しいのか厳しいのかよくわからない。
風がさらりと吹く木々の隙間から、たいまつの明かりが漏れている。誰かがこちらに来ているようだ。
「疲れているだろうから、連れて行って差し上げよう。但し、どこに隊所があるのかはわからないようにするがな。」
明かりを持って駆け付けた大勢の兵士は創造主候補たちの目を隠し、縛り、大きな荷物持つように肩で担ぐ。
緊張から解放された緩みや疲労からか、創造主候補たちはなすがままに拘束される。




