コチノクボと思う壺 その5
ローブに身を包んだ人物は祭壇のような場所に上がり、こちらの方を向いた。
「では、まずぅ、あなた方をここに集めた理由をお話します。」
よく通る高い声が響く。その声のまま目の前のローブは続ける。
「このぉコチノクボが更なる発展をすべくぅ、無限に開く未来より通信がありましたぁ。通信の内容はぁ“この国にいる創造主候補から2人を選抜して聖域に送れ”、要約すればそんなところですぅ。」
通信?未来?選抜?よくわからない単語が羅列される。
「ではぁ、レギン。お願いしまあす。」
ちょっと待ってくれ。そんな言葉が舌先まで出かかったとき、俺らの目の前にその男の娘は現れた。
「かしこまりました。神仔様。」
25mプールの水中から水面へ上がってくるような動きで、その男の娘は地面の中から俺たちの居る床の上まで上がってきた。
不自然な言い回しだが、それが見た光景の一部始終である。とにかく、物理現象に逆らったこの動きは男の娘の勃象能力に違いない。
「神仔様よりお言葉あったよう、この神仔近衛隊副隊長レギンが貴様らをテストする。」
「ルールは至極単純!私に自身の能力を示し、納得させてみろ。証明方法は貴様らで設定してもよい。多少の器具や武具であれば用意もしよう。」
レギン。そう名乗る男の娘は力強くそう言った。鎧をまとっていた兵士たちと異なり、何度も戦闘を行い鍛え上げられた筋肉が露出するような服を着ている。華奢なように見えるが、肩や太ももの引き締まった筋肉から本人の強さが分かる。
「ああああ、あああ、あの、ちょ、ちょっとよろしいでしか。」
腰を抜かして立てていない創造主候補が、口を開いた。恐怖に声が震え、やっとの思いで出した声に全員が注目する。
「わ、私そんなたたたた大層な実力がないし、この、この、選考会みたいなのを、、参加しても意味ななんm、ないんじゃないかなって…思って、あの、わたそ、あの、よわ、弱いし。あの…」
震える声は終わりに向かってどんどん弱弱しくなっていく。しかし、はっきりと拒否の意思を述べる。その主張にレギンは
「意味がないと言ったな。神仔様の通信により選ばれたことを意味がないと言ったな。」
と言った。
ゆっくりとその創造主候補に近づく、身にまとった雰囲気が殺気を帯びたものになっている。
「いえ、いえ、いえ、そsっそっそそそそそそそそそそそおっそそそそそそんなことは、オァァッッ!!!」
その創造主候補は胸ぐらをつかまれ、そのままレギンの胸の高さにまで揚がっていく。
「貴様の存在をどうするかは神仔様のお決めになる事だ!貴様ごときが意見するな!」
怒号が散らされる。殺気を帯びた雰囲気相まって、こちらも心臓を締め上げられるような恐怖感を覚える。
創造主候補の方は恐怖におののき、失禁したまま気絶した。応答が無くなったその肉体をそっと床に降ろすと、レギンはうってかわって最初の落ち着いた声で俺たちに言う。
「貴様らも我らの神仔様のご意思に反する行いをすればこうなる。覚悟しておけ。」
神仔様と呼ばれているローブの人間は一切動きを見せない。これもこの世界では当たり前のことなのか。
「じゃあ、いいかしら。そのテスト受けようと思う。」
残った4人の内、名前の知らない創造主候補が恐怖に縛られた沈黙を破った
「よし。女、名前は?」
レギンはそう聞く。
「サイム。以後お見知りおきを。」
皮肉っぽくそう名乗りを上げた。彼女は何をするのだろうか。




