コチノクボと思う壺 その3
細路地にいた謎の少年の差し金で、トランプとイマイズミはコチノクボ兵士にその身柄を捕らえられてしまう。
目隠しと全身拘束。屈強な兵士に担がれどこかに連れていかれる。途中、声をあげて助けを求めようとしたが、気道を圧迫された人間の声は、捕物劇に群がる野次馬騒ぎにかき消されてしまった。
「おい、お達しの創造主候補だぞ。」
「手荒にするなってお申し付けだ。」
「なぁ、神託殿入る前には縄外しとく方がいいかな?」
「おい!暴れるな!落とすぞ!」
「いんじゃね?こっちのは道端で倒れてたからよお、縛ってねぇんだよ。」
「はた迷惑な命令もあったもんだよな。」
「ああそうだ。」
担がれてから数分が経つ。目をふさがれても耳はふさがれていない。イマイズミは聞こえてくる雑音や会話を聞いていた。
イマイズミは自分とトランプ以外に、数人ほど創造主候補が捕まっていることがわかったが、どこに向かっているのか、という疑問は解消することができなかった。
考えをめぐらすイマイズミだったが、突然床に降ろされた。
何が始まる?目的地に着いたのか?困惑する間に手足の拘束は解かれ、目隠しが外された。数分ぶりに見る光に少し目が眩む。
「悪く思うなよ。こっちも任務なんだからさ。」
顔を覗いてきた兵士はそう言ってどこかに行った。
「くっそ…なんなんだ?」
仰向けの体勢から腰を上げ、何とか立ち上がった。
バスケットボールのコート1つ分位の空間。出口には恰幅のいい男と中学生くらいの中性的な少年。出口の反対、上座にはカトリック系教会のそれを思わせる祭壇みたいな何か。倒れている人間と立ち上がり俺と同じく周りを見渡している人間。
どうやら、ここに閉じ込められているようだ。そして、恐らく集められた人間は創造主候補だ。この部屋にいるほとんどの人間が、未完の大器を背負っている。
「ねぇ、いやな感じがするんだけど。」
「俺もだ。」
起き上がったトランプと小声で会話をする。
ここからいったい何が始まるというのか。心臓が鼓動を早めていく。




