会敵、男の娘 その5
「イマイズミ…!」
イマイズミは未完の大器の中にその身体を隠していた。
「俺をほっといてトランプの方を見に行った時に思った。逃げようとすれば罠にかかると思っていた。」
男の娘は地面に這っているイマイズミを見下している。ターゲットにしてやられた、またも予定を裏切られたことに少しの苛立ちを覚えていた。
『死にたい場所はわかった。ただなぁ、1つ聞きたいんだよ。お前が何でその中に隠れていたのに、なんでベストでもないタイミングで現れ、なんでそのチンケな本で僕の足を挟んでいるんだい。』
苛立ちはさらに募る。ホーは思う。女は戦った。結果、安値で買った服と男の娘として積み上げたプライドは傷つけられた。雑魚にしては充分な戦果を挙げた。ところでこの男はどうだ。会敵した際は立ち尽くすだけで何もしなかった。足をしっかりと持つならまだしも、規則書とかいう男の娘の仲間を手に入れれば糞を拭く紙にもならん物で足を掴んでいる。あてつけカぁ!こらァ!…っと。
『バカの合理性を後学の為に聞いておきたい。なんだぁ、それは!!』
「素手で触れないんだよ。」
イマイズミは答える。
はぁ?とホーは呆れた表情を作る。
トランプには行為の意味が分かっていた。本の内側にあるのは…
「ヤクデドープの葉。5秒以上触れているから、どのくらい吹っ飛ぶのかな?」
イマイズミが規則書を引っ込めた時、ホー・マイアの身体はロケット花火を発射した時みたいに宙を走る。
ホー・マイアは風を切りながら、イマイズミにも自分と戦う意思があったということを分かった。
しかし、時すでに遅し。
『くそがあああああああああああああああああああ!!!!!』
断末魔は目にも止まらぬ速さで消えてしまった。
ホー・マイアの姿が消えて数秒、境界線が光を放ったかと思うと跡形もなくなった。
「うぉ!何が起こったんだ。」
トランプは石を投げた。石は境界線があった場所を超えても消えることはなかった。
「おそらく、あの厄介な力はなくなった。ここを通行できるようね。」
能力が解除された。命の危機を脱し安堵するとともに、2人の胸には達成感が押し寄せる。勝ったんだ!未知の敵に!
ホー・マイア 勃象名「明日また会おう」 気温-273度・絶対零度トリップに強制参加。




