第7話 幕が上がる
アルトリアとの勝負から一週間、ショーンたちは冒険者稼業にも慣れ平穏な日々を過ごしていた。
今日もいつものように冒険者協会へと赴く。
「あっ、ショーンさん。おはようございます」
「おはよう、カンナさん」
もはや顔馴染みとなった金髪碧眼美人の受付嬢と挨拶を交し、いつもどおり依頼を受けようとしたがその前にカンナが言葉を発する。
「ショーンさん、支部長がお呼びです」
ショーンたちは支部長室へと赴くこととなった。
冒険者協会 スタリア支部 支部長室
「やぁ、ショーン君」
「なんだ?」
「ハハ、直球だなぁ。答えたくなくなるじゃないか」
「じゃあ俺は帰る」
そう言ってショーンは本当に踵を返す。慌ててアルトリアはショーンを引き止める。
「ま、待って待って。緊急事案なんだよー」
どこか気の抜けた言葉ながら内容は深刻なもののようだった。ショーンもそのことに気づき支部長室のソファに腰掛ける。
「それで?」
「いや、実はね。この町の近くに駆け出し冒険者が入れる迷宮が存在するんだけど、どうも最近駆け出し達の生存率が下がってるんだ。帰ってくる者たちに聞いても何もわからない。本当に知らないみたいでね。生存率の低下だけが事実として残されているんだ。これでは本格的な調査は出来ないし、そもそもこの町の実力者はショーン君以外いないからね」
「なるほど、気になるから調べろというわけか。ただの駆け出しの実力不足でも報酬はあるのか?」
「もちろんだ。しっかりと調べてきてくれ」
「わかった。レイルは留守番な」
ショーンはそう言ったが、しかしレイルは
「わたしも行きます。大丈夫です。それに、ショーンさん方向音痴じゃないですか」
と反論する。
ぐうの音もでないショーンはレイルの同行を受け入れた。その横でアルトリアはクスクスと笑っていた。
レイル先導のもとショーンたちはスタリアにほど近い迷宮の入り口に立っていた。
「なあ、レイル本当に来るのか?」
ショーンの問いかけにレイルは肯定を示す。
「ハァ…まぁいっか。そうそう面倒にはならないだろうし」
ショーンは諦めて呟いた。そうして迷宮へと入っていった。
スタスタ歩きながらショーンは、ゴブリンやビッグバット、マッドドッグなど下級の魔物を襲ってくる端からかたっぱしに倒していた。
ショーンはこの迷宮に入るのは初めてだから気付かなかったが、ゴブリンはともかく、ビッグバットとマッドドッグは今ショーンたちがいる一階層ではなく二階層から出現するはずの魔物だった。今日の朝に起こった変化のため冒険者協会も把握していなかった。
「うーん、今んとこ異常はないなぁ」
「そうですね」
ショーンが魔物を乱獲してしまっていることが異常といえば異常なのだが、当人とその連れはたいして気にしなかった。レイルに至っては「まぁショーンさんだし」と変に納得していた。
ショーンたちが順調に歩みを進め地下にある迷宮の五階層に到着したとき、それは聞こえた。
グチャ…グチャ… グチャ…グチャ…
なにかを咀嚼するようなその音は、生肉に顔をうずめる獣を連想しショーンたちは顔を歪めた。しかし、調査に来た身としてはその正体も確かめなければならない。ショーンは意を決して音のほうへと歩みを進めた。
カンナさんは必要でしょうか?
なぜかショーンは方向音痴
主人公の直感があてにならない。それダメじゃね
大丈夫、方向だけのはずだから多分