閑話7 復讐するは我にあり
口の端をシカラの血で濡らしながら、アリスは満足げに顔を上げた。その表情はどこか恍惚としており、彼女の狂気を如実に表していた。
「相変わらず、変化に乏しいわね…私、柄にもなく哀しくなるわ」
少女のような無垢と妙齢のような影を混在させ、アリスは感想をもらした。
「俺は……もとより、感情が乏しい……」
シカラは事実を述べた。
「そういう人を、私だけが特別に反応させるのがいいんじゃない。わかってないわね」
シカラは押し黙るより他なかった。幾星霜の時を経ても、男が女心を理解するのは無理があった。
「はぁ、ま、いいわ。本題よ」
アリスはいつものことと気分を切り替え、本題に差し掛かる。
「嫉妬、傲慢、暴食の浄化を確認したわ。これで、魔王の席には空席が四つ。当然、この世界本来の悪性機構が回り始める」
「邪鬼だけではすまんか」
「貴方としては、どちらでも構わないでしょう?」
「俺だけならな……」
そう言ってシカラは顔を顰める。
シカラたちのいう邪鬼とは、この世界本来の悪性機構。生きとし生きる生命が、必然として抱く負の蓄積によって発生する悪魔のような存在である。だが、ある時よりこの機構は機能しなくなった。
外界からの神の来訪により、世界の秩序が一新され、負は『七罪機構』にすべて集積されるようになったからである。質の高い七柱の魔王と、数だけは多かった邪鬼とどちらがマシかは価値観によるだろう。
「はぁ、現状、負は必ず暗黒の森に向かう。だから、百鬼夜行はそこから発生するわ」
「……この世界は、本当に……度し難い……」
原初より生きるシカラの言葉は強く響いた。
魔王も邪鬼も、どちらも悪だ。倒さないという選択は無く、しかし、終わりの見える戦いでは無かった。
「……『冥王』の話を聞いたかしら?」
「…あぁ、最速でA級となった冒険者か……」
シカラの返答に、アリスは一つ頷き述べる。
「彼、おそらく『強欲』の転生体よ。接触を図るべきではなくて?」
「奴の……やり方は、一度……」
シカラの言葉は最後まで言えず、アリスの言葉に押さえ込まれた。
「だからこそでしょ?彼が怖かったから、女神は彼を異界に飛ばした。それが戻ってきたということは神族にも協力者がいるはずよ。もう一度、挑戦しましょう。この世界を取り戻さなければ、いつまで経っても、貴方はその祝福から逃れられない、そうでしょう?」
アリスは、憂いを帯びた顔をシカラに向けた。シカラは根負けしたように視線を逸らす。
それを了承と見て、アリスは微笑みを浮かべた。
「それじゃ、決まりね。私も貴方も、本来ならばただの夢幻。幻想の中でのみ生きる夢人のはずだけど、私たちはここにいる。存在してしまっている。だからこれは、この世界が間違いだらけであることの証明に他ならない。この世界の名は、人智世界ミドガルズ。決して、決して、貴方のような超人や私のような怪物が存在して良い世界なんかじゃ無い」
改めて宣言する。
「到達者にも、異界の神にも、この世界は渡さない。絶対に取り戻す。絶対に!!」
彼女の顔に、一瞬醜い憎悪が覗く。
すべては秩序を取り戻すため。すべては異邦人を退けるため。
ー待っていろ、貴様らの好きにはさせない
ー泥をすすろうと、四肢が捥げようと
ーここは、最果てでないことを証明してみせる!!
斯くして、運命は収束する。今度こそ決着となる。
少なくとも、幻想種たちはそれを確信していた。
閑話に物語の核心がある。これ閑話じゃなくね?
カンナ「どっちかというと幕間では?」
だよなぁ……
この先はさてどうするべ?とりま、次は登場人物の入れて、暫く書き溜めかなぁ。そろそろ、改めてプロット作るべきか?
「はぁ、結局私は脇役な訳ですね」
そうだべよ?どこに重要人物要素があるべ?
「ここにいることかと」
[……作者の趣味だ]
…っえ!?シカラさん!!なんで?!




