第6話 育つ闇
俺はアルトリアの矢を新月ではらった。
しかし、アルトリアは連続して矢を放つ。すべてをはらうのは難しい。
「避けてばかりでは、ダメですよ」
アルトリアは余裕があるのか、そんな言葉を放つ。
俺は急所を突く矢だけに注意をはらい、アルトリアに接近を試みた。
もちろん、それを許すアルトリアではない。矢を放ちながら移動して俺と一定の距離をとる。
戦況はアルトリアが優位、武器の特性上からすれば当然の結果だ。
しかし
「ショーン君、本気を出していただきたい。これでは拍子抜けもいいとこです」
チッ
俺は思わず舌打ちした。戦闘狂はこれだから。
なるだけ目立ちたかないが仕方ねえ。
俺は意識を切り替える。
「ここからだ!アルトリア!」
その声とともに俺は走る。アルトリアの矢など関係ない。高い身体能力ですべて避ける。新月はすでに鞘に納まっている。
アルトリアとの距離が瞬く間に縮まる。
「それでこそ!」
アルトリアの目の色が変わり、しかし同時、俺の刀が疾る。走り抜けながらのそれはしっかりとアルトリアの横腹を斬り裂いた。
鞘走り
俺が新月を納めると同時、アルトリアが膝をつく。
「くっ…さすがAランクの心象器を使えるだけはあるか。合格だ。ショーン君B級で登録しよう」
俺はアルトリアに勝った。
ここはスタリアにほど近いところにある迷宮。
迷宮とは魔核と呼ばれる特殊な金属を中心に形成され成長する魔物の巣窟だ。迷宮内で死んでしばらくすると死体は迷宮に吸収される。しかし、外から来た死体は例外のようだ。
「なっなんだってんだ⁉︎ここは初心者向けの迷宮じゃなかったのかよ!」
迷宮内にいた冒険者の一人が叫ぶ。彼の仲間と思しき数名はすでに骸と化していた。
「なんで……グールが…」
その言葉を最期に彼も骸となる。
カツコツカツコツ…………
床が石畳の迷宮で革靴で歩く音が響く。足音の主は冒険者ではないだろう。冒険者ならば初心者なりにも隠密のために足音のなるべく聞こえない靴を履くはずだ。
冒険者の骸のもとに一人の男が現れる。
「はぁ……」
男はため息を吐き、悲しい表情をしながら骸が迷宮に吸収される前に、それを
喰べた。
男は食事が終わると、また歩き出した。
「生きねば」
男は短く呟いた。その声は迷宮の闇に吸い込まれて誰にも聞かれることはなかった。
正体はバレバレかな