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神は勝手なのだと知っている  作者: 神狼 龍王《みたらしだんご》
序章 異世界に慣れる
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第5話 冒険の始まり

「起きたか」

粗末な姿の男が億劫そうに言う。目を覚ましたショーンは自分のなかに心象器の存在を確かに感じた。







冒険者協会

それは魔物に対抗するための組織である。各国の兵力だけでは人間よりも強い魔物に対応できなかったために当時の国のトップたちが各国の英雄を柱に設立した。

現在、それは活動内容から荒くれ者が多いが、それでも上層部には下手な貴族よりも切れ者で実力もある者が所属している。そのため冒険者協会が国家間の争いに巻き込まれることはない。少なくとも表向きは。


「登録に来ました」

「はい、ではこちらに記入をお願いします」

ショーンたちは職の確保のため冒険者協会を訪れていた。


冒険者は実力に応じて等級がわりあてられる。低いほうからG・F・E・D・C・B・A・Sとなる。また、心象器のランクも同じだ。

冒険者になるための条件は特にないが、心象器も持つものは飛び級が可能である。よって


「へっ!?Aランクですか?えっとその少々お待ちください」

慌てた受付嬢が奥へと引っ込む。

ショーンの心象器のランクは英雄のそれだった。


「支部長がお呼びです」

戻って来た受付嬢はショーンにそう告げた。




冒険者協会 スタリア支部 支部長室


「やあ、ショーン君だったかな。私が支部長のアルトリア・シャンカルだ」


ショーンたちは支部長室にいた。レイルは突然の大物の登場に緊張して可愛い顔がコロコロと表情を変えていた。首もよく振るので水色の長い髪が揺れていた。ショーンよりも小柄なためギャップはないが可愛らしい。

アルトリア・シャンカルは長身の優男で顔も整っている。髪や瞳の色は緑だ。その立ち振舞いは貴族であっても不思議ではない。


「どうも」

ショーンは短く挨拶して端的に用件を尋ねる。

「で、何の用だ」


アルトリアはその様子をさして気にせず言葉を発する。

「君だってわかるだろう。それだけの力がありながらなぜ表舞台に噂がたたない?」


「俺の親は変わり者でな。今まで山奥にいたのさ」


ショーンはしれっと嘘をついた。アルトリアはショーンを眺めたがしばらくして、埒があかないと考えたのか、言葉を告げる。


「まあ、それは信じるかは別として君には私と戦ってもらうよ。実力を見極めなくてはならないからね」


「えっえっ!?」

慌てふためいたあと、フリーズしていたレイルがその言葉に驚く。


「いや、お嬢さんは普通に登録できるよ。規定通りランクの一つ下の等級でね」


「ひゃい、ありがとうございます」

レイルは反射的にお礼を言った。水色の瞳が混乱でいろんな方向に向けられる。


「俺はなぜ戦うんだ?」

「君の力は英雄並なんだ。心象器を使えるなら根は良い人間だと思うが万が一もある。しっかりと実力と人となりを把握しておきたい」


アルトリアはそう言いながらも、顔には新しいオモチャを見つけた子供のような表情が浮かんでいた。

ショーンはため息をつきながらもアルトリアの申し出を受けた。




冒険者は戦闘を生業とするために冒険者協会の施設には必ず鍛錬場が設けられている。スタリアの支部はそれが地下に存在していた。いつもならば、ゴブリンなどの下級の魔物に煮え湯を飲まされかねない実力のなりたて冒険者たちがひしめくそこは、貸切にされていた。

鍛錬場の中央には二人の男が、隅の方に二人の女が立っていた。


「ショーン君、心象器を使うけど魔法と能力はなしでやろうよ」


アルトリアはショーンが察しているとおり戦闘狂であったが、ある程度の常識はあり、鍛錬場を壊さないため条件を告げる。ショーンはそれを了承する。もとよりショーンの心象器の能力は完全に敵対する者以外には使えない代物だ。

互いに心臓のあたりに手を置き心象器を取り出す。ショーンは刀を、アルトリアは弓だ。その色からアルトリアの属性は風であることがわかる。しかし、今回はそれは関係ない。


アルトリアが心の顕れであるためなくなることのない最初の矢を番える。


「いきますよ。ショーン君!」


その言葉が開戦の合図となった。

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