第4話 人の恐怖
そこは心象世界。心が顕われる時空。
ショーンのそれは青空と荒地が広がっていた。
「ここは?」
意識を自覚させたショーンはそんな問いを発しながら、ここがどこか理解していた。当然だ。そこは己の心なのだから。
「やあ。ぼく」
ショーンの背後にはいつの間にか誰かがいた。
「ああ、そうか」
ショーンはその誰かを見て納得する。それは自分だった。そして、それは悪魔でもある。心象世界には必ず悪魔がいる。その人が最も恐れる存在だ。
ショーンが恐怖するのは自分を含めた人間だった。美しくて醜くて、賢しくて愚かで、儚く強かな人間は魅力的であり、畏怖の対象だ。それは心理のなかで理解されることが稀な真理だった。
「さあ、ぼくを滅せよ」
悪魔は言葉とともに、刀を構える。
ショーンのそばにも刀が現れた。ショーンはそれを手に取り………瞬間、悪魔が地面を蹴った。
悪魔の接近にショーンは咄嗟に防御の構えを取る。しかし、それが完全になる前に悪魔の刀が振り下ろされる。ショーンは己の刀でそれを受け止めたが、腕が痺れた。硬直するショーンに悪魔は追い打ちをかける。振り下ろした刀を一度引いて突きを繰り出す。ショーンはどうにか地を蹴って後退するが僅かに利き腕の左腕が負傷する。
「くっ…」
短い苦悶の声はしかし、悪魔の追撃にかき消される。
息をつかせぬ乱撃がショーンにいくつもの傷をつくる。膠着状態のそれを断ち切るため、ショーンは傷つくのを無視して悪魔の右腕を横薙ぎにした。悪魔はその痛みに苦悶の表情を浮かべる。ショーンは間髪いれず、返す刀で首を狙う。悪魔は身を引き回避した。
「くっ…」
膝をついたのはショーンだった。無理な攻撃の代償に右脚が斬られていた。
「アア 残念だよ」
悪魔は悲哀の表情とともにショーンを見る。ショーンは黙って刀を鞘に収めた。そして、脱力する。悪魔に油断はない。それは居合の構えだった。抜刀術と呼ばれる刀の真髄。
悪魔は大上段に構えた。目を閉じ集中する。
一瞬が長く感じられるなか、悪魔が目を見開くと同時、両手で握られた刀がショーンに襲い掛かる。
ショーンもまた、悪魔に刀を振るう。それは刹那のこと、その結果はその瞬間には神にすら分からなかったであろう。
倒れたのはショーンだった。
しかし、血を吹いたのは悪魔だった。
悪魔の刀は根元から斬られていた。
死闘のなか、認識できなかった情報がショーンのなかへと流れ込む。心象器の情報だ。
銘:鬼刀 新月 ランク:A 属性:神聖 能力:強奪
銀色に光る長めの刀身、光らない銀色の鍔、柄だけが黒かった。神聖の属性を持ちながらそれは殺したものの心を奪う妖しい刀だった。それはまるで悪魔の付喪のようだった。