第6話 大剣聖
短め
ごめんなさい
-大剣聖ガンドルフ・ラインハルト-
その名を知らぬ者はアリティア王国にはいない。いや、他国であっても知らぬ者がいるほうが稀である。
寿命の短い人族の生まれながら、彼の剣技は最強であった。たった一度の剣撃が山を断ち海を割る。それは歩く天災のような力だった。しかし、天は彼に味方した。彼の全盛期は戦争の真っ只中であったのだ。祖国を守るため彼は戦場を駆けた。そして、祖国は勝利し、彼は英雄と称された。
しかし、戦争の亡霊たちは彼を別の名で呼ぶ。
ーーー剣鬼ガンドルフと
全盛期の彼は無責任だった。その剣には、ただ勝利への妄執だけがあった。力に酔っていた。
戦争終結後、彼は英雄と称され、同時に罪悪感を背負った。亡霊たちが夜な夜な夢に出て来る。彼は一度剣を捨てた。
称賛し説得する王を民を払いのけ、彼は亡霊たちの血縁を探し歩いた。
当然、彼は罵倒され死ねと言われた。暴力も甘んじて受けた。
だが、罵倒でもなく、諦めでもない言葉を投げかける人々が確かにいた。
ー償うと言うのならあなたの国を守って下さい
ー息子の覚悟を貴様は愚弄するのか
ーそれでは死人は浮かばれない。それはあなたの自己満足だ責任を果たせ
彼は罪悪感を払拭することをやめた。祖国に戻り英雄としての役割を果たすことに専念した。
亡霊は夢に出なくなった。けれど彼は一人になると、その顔が後悔するものに変わるのだ。
そこにいるのはちょっと力が強いだけのただの人間だった。
それは今も変わらない。御歳58でも彼は後悔をしていた。
何度も人々が往来することでできた道を基本に、他の道よりかはマシ程度に舗装された道を一台の馬車が動いていた。この道はアリティア王国の東に位置するスタリアから伸びるもので王都と繋がる道であった。
黒髪の男は思う。
ー俺の覚悟は定まるのだろうか…
ー何かのために他の何かを犠牲にできるだろうか…
その答えは彼の心のどこにもない。けれど、彼の心は置いてけぼりで現実という物語は進んでいく。
「ショーンさん、見えてきましたよ。あれが王都です」
レイルの言葉に、黒髪の男=ショーンが顔をあげて外を見る。見えたのは、高い城壁と東門だけだった。街がどうなっているかはわからない。
けれど、ショーンは期待する。
ー己の心が成長することを…
なんか、三流作品な気がするんだが
自分で思うあたりダメなんだろうか……
とりあえず、ガンドルフの人外能力への説明をしておくと心象器が強化しているのである。心とか魂とかが優先される世界なのだ。
物理法則はこの世界からは出て行ってしまっている。