表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Love & Live  作者: ふぇんねる(ヴィヴィアン叶)
1st Number  
2/15

嘘みたいな再会 1

「死んだよね……」

 薄暗い蛍光灯の照らす十二畳ほどの部屋に、木目模様の事務テーブルが二組ずつの四ヶ所で、計八つ。周囲にはギターやベース、スネアにエフェクターが乱雑に転がる。

 その一番入口に近い場所で、揃ってテーブルに突っ伏す四人がいた。全員の表情が苦い。

「初ライブお疲れさま」

 ゴトリと固いものが置かれた音に何人かが顔を上げると、二人の少女がそこに立っていた。「死んだ」と言った小柄な少年の、幼さの残る顔色がいくぶん明るくなる。

「寧々ちゃん、それに優子」

 名を呼ばれて、寧々という方の娘はにこりと微笑み、優子という方は眉を少し上げて腕を組んだ。

「ジュース、よかったらみんなでどうぞ。ライブ、楽しかったよ」

「うんうん。あんなガッチガチに緊張してたのに。意外と見れた」

 少年が苦笑いを返す。

「意外と、って……」

「だって、ステージに上がって来るとき、京介、あんた派手に転んだじゃない。そりゃあ、どんなライブになるのか不安になるじゃない」

 反論できずに、京介という少年は頭を掻いた。同じテーブルに座るバンドのメンバーたちも、それには同意だったようで京介を睨んだり、呆れたような顔で見つめたりした。

 だが誰も少年を責める事はしなかった。それぞれ、それを責められないミスをしていたし、それ以前に、今回のステージで実力不足を痛感していたからだ。少年の「死んだ」という言葉に誰も反応しなかったのは、そのせいだ。ライブは大失敗。言わないが、全員が泣きたい気持ちを隠していた。

 それを察した寧々が、フォローするように口を開く。

「うん。確かに最初は私もびっくりしちゃったけど、みんなすごく楽しそうで、音楽やりたい気持ちがすごく伝わるような気がして……私は好きだったよ? たくさん練習してきたんだね、って、応援したくなったよ」

 青ざめていた京介とバンドメンバーが少し頬を染めた。そして、似たような照れくさい顔になる。

「さすが寧々ちゃん……。キョン、お前にはもったいないよ!」

 京介の隣に座っていた背の高そうな短髪の少年が、幸せ者の腕をばしばしと叩いた。バンドメンバーの間では、京介はキョンと呼ばれていた。

「痛い、痛いよ!」

 悲鳴に近い声を上げる友人を、短髪の少年は構わない。

「ありがとう、今度きっと、また演るから! 良かったら来てよ! 今日はコピーだったけど、次はオリジナル演るからさ! もっと練習して、ちょっとはマシにしてくるからさ!」

 京介も他二人のバンドメンバーもうんうんと、力強く頷いた。

 寧々と優子は微笑んでしまう。

「楽しみにしてます」

「頑張って! また差し入れしちゃうよっ」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ