嘘みたいな再会 1
「死んだよね……」
薄暗い蛍光灯の照らす十二畳ほどの部屋に、木目模様の事務テーブルが二組ずつの四ヶ所で、計八つ。周囲にはギターやベース、スネアにエフェクターが乱雑に転がる。
その一番入口に近い場所で、揃ってテーブルに突っ伏す四人がいた。全員の表情が苦い。
「初ライブお疲れさま」
ゴトリと固いものが置かれた音に何人かが顔を上げると、二人の少女がそこに立っていた。「死んだ」と言った小柄な少年の、幼さの残る顔色がいくぶん明るくなる。
「寧々ちゃん、それに優子」
名を呼ばれて、寧々という方の娘はにこりと微笑み、優子という方は眉を少し上げて腕を組んだ。
「ジュース、よかったらみんなでどうぞ。ライブ、楽しかったよ」
「うんうん。あんなガッチガチに緊張してたのに。意外と見れた」
少年が苦笑いを返す。
「意外と、って……」
「だって、ステージに上がって来るとき、京介、あんた派手に転んだじゃない。そりゃあ、どんなライブになるのか不安になるじゃない」
反論できずに、京介という少年は頭を掻いた。同じテーブルに座るバンドのメンバーたちも、それには同意だったようで京介を睨んだり、呆れたような顔で見つめたりした。
だが誰も少年を責める事はしなかった。それぞれ、それを責められないミスをしていたし、それ以前に、今回のステージで実力不足を痛感していたからだ。少年の「死んだ」という言葉に誰も反応しなかったのは、そのせいだ。ライブは大失敗。言わないが、全員が泣きたい気持ちを隠していた。
それを察した寧々が、フォローするように口を開く。
「うん。確かに最初は私もびっくりしちゃったけど、みんなすごく楽しそうで、音楽やりたい気持ちがすごく伝わるような気がして……私は好きだったよ? たくさん練習してきたんだね、って、応援したくなったよ」
青ざめていた京介とバンドメンバーが少し頬を染めた。そして、似たような照れくさい顔になる。
「さすが寧々ちゃん……。キョン、お前にはもったいないよ!」
京介の隣に座っていた背の高そうな短髪の少年が、幸せ者の腕をばしばしと叩いた。バンドメンバーの間では、京介はキョンと呼ばれていた。
「痛い、痛いよ!」
悲鳴に近い声を上げる友人を、短髪の少年は構わない。
「ありがとう、今度きっと、また演るから! 良かったら来てよ! 今日はコピーだったけど、次はオリジナル演るからさ! もっと練習して、ちょっとはマシにしてくるからさ!」
京介も他二人のバンドメンバーもうんうんと、力強く頷いた。
寧々と優子は微笑んでしまう。
「楽しみにしてます」
「頑張って! また差し入れしちゃうよっ」