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プロローグ
もう魔王なんてこの世にはいなくて、世紀末で血みどろの争いは終止符が打たれていた。
穏やかで、平和な世界が何十年か続いた。
暖かな日差しに、緩やかな風が頬を撫でていく。
かつての戦地は緑が包み、傷は癒え、世代も変わった。
魔王の手先だったビースト達も勇者一向に滅ぼされた。うわさでは、僅かに生き残ったビーストは世界の隅のみで日々をすごしているらしいが、そんなのは小さい子供を脅す作り話のようなものだった。
魔王と敵対し連合を組んでいたモノ達は繁栄と栄華を極め、毎年の豊穣を祝い、新しい家族の誕生に涙する、そんな当たり前を享受していた。
――しかし、そんな当たり前は再び崩れ始める。
元々、『国境関係なく悪逆を尽くす魔王を倒す』というひとつの目標に向けて足並みを揃えていた諸国だった。もはや連合を組まねば倒せない巨大な敵は無くなり、縦横無尽に引っ掻き回す存在は闇に消えた。
――これは、かつて連合を組んだ諸国の不審な動きが水面下で見れるようになった、そんな時代のお話。