困惑しかない
宜しくお願いします。
クソど素人の絵に描いたような転移モノです。
「う〜ん」
寝ぼけ眼で時計を見ると昼の一時を過ぎている。夜更かしをしていたのだから当然と言えば当然である。
「ふわぁ」
大きな欠伸をしてもう一度寝る態勢を整えた。
季節は十二月、外に出るのはまだ早い季節と戯言を考えながら目を閉じる。
「……そういえば今日は講義が三時からあったような」
大学に入って三年、特に目的意識もなく惰性で日々を過ごしてきた。
講義にあまり顔を出さない故に単位が芳しくないことになっている。そんな留年する一歩手前の状況であることを自覚しつつもどうにも動き出せない。
「……」
眼を閉じながら考える。
このままでいいのか、ここで腐っていく自分を許せるのか。否、そんなわけはない。ここで終わるような人生にするなんてイヤだ。そうだ、今日はちゃんと講義に出よう。それが自分のためだ。
「よし」
布団を蹴り飛ばし、バックに必要最低限の物を放り込む。どうやら今日は自分を説得できたようだ。
学校へ行く道中がとても寒い。自転車を漕ぎながらちょっと後悔。少ししたら所定の場所に着いたので自転車を置き、教室へと向かうことにした。
「確かここだっけかな」
ドアを開けるとちらほらと生徒の姿が見えた。談笑している姿からしてまだ始まっていないようだ。
(うっ……!)
安心した瞬間、急にお腹に違和感を感じたのでトイレに行くことにした。何でだよ、もう。
――五分後
(まだ始まってないよな)
妙な焦燥感に駆られながら教室へと早足で向かう。そして、教室のドアに恐る恐る手を掛ける。
「!?」
突如、気味の悪い感触が手に伝わって来たので反射的に後ろに下がった。
「気の所為……?」
気をとりなおしてもう一度ドアに手を掛ける。再びあの感触が訪れたが構わずドアを開けた。
あれ?
誰もいない
教室間違えたかな?
そんなわけない
というか黒い……何かがこっちを向いてる
あんなのあったかな?
こんなの見た事ないや
あれ?手が震えて……怖い……怖い!
生徒がいないことよりも最初から――その何かに気づいてはいたが、理解することが出来ない。丸くて黒いものに目玉が一つ付いている。
「ひっ」
瞬間、目玉の付いた何かが迫ってきて……あっけなく飲まれた。
「ここは?」
目の前は黒一色の空間で満たされていた。
「……」
あまりに不可思議な展開にパニックを通り越して呆然とする。
「これは現実かなぁ……ハハハ、何か笑えてきた」
黒い空間に笑い声が反響してうるさい。
「ハハハハハ……ハァ!?」
いつの間にか大きな目玉がこちらを覗いてることに気付き、ギョっとした。怖すぎて息が出来ない。
「あ……ああ……」
目玉は自分を凝視したまま、少しずつ近づいて来ている。
「来るなっ――来るなあ!」
何故か足が全く動かない。そこで自分の身体の異変に気付く。まるで宙に浮いているかのような感覚……これは何だ?
あれ? 身体が……無い!!
「ァァァアアアアア!? 身体が無い!? なんで!? どうして!?」
その時、目玉の下に人間のような口が現れた。
「ぎょええああああああああ」
理解出来ないことの連続でもう訳が分からない。誰か助けて。
「……ヤカマシイゾ、ニンゲン」
「!?」
目の前の口が喋ったのだろうか。不気味過ぎるだろ!
「……話ヲキケ。ココニオマエヲトリコンダノニハ理由ガアル。」
「取り込んだ? ……理由?」
唐突すぎて話が入ってこない。無茶を言わないで欲しい。
「……ソウダ、マズハオマエノカラダニツイテダガ――ワレガクッタ。」
「クッタ……食った!?」
「ソウダ。返シテホシクバ我ニシタガエ。」
「えぇ……」
いきなり何を言っているのだろうか、この目玉オヤジは。それに食ったって……戻ってくるのかそれ? まぁこの状況、従う他ない気がする。気になることは沢山あるけど。何より目の前にいる奴が怖すぎる。
「わわ、分かりました。し、従います。それで、今の僕はどうなっているんでしょうか。何か浮いているような感じなのですが……?」
「カラダヲ失エバ自然ト魂ダケガ残ル。当然デアロウ。」
そうなの? そんなの知らない。というか今死んでる状態なのだろうか? 普通に呼吸出来てる気がするけど。いや、もう考えないでおこう、疲れる。
「オマエニハ役目ヲ与エル。役目ヲ果タスコトガ出来レバカラダヲ返シテヤロウ」
「はあ……」
このやり取りに疑問を挟みたいところだけれど、機嫌を損ねるのもマズい気がしたので黙っておこう。
「それで役目というのは……?」
「オマエニハ――『ゴーレム』ニナッテモラウ」
「ゴーレム? あっえっ」
眩い光が現れたかと思うと意識が遠くなった。
「クク……ヤハリニンゲンハ扱イヤスイナ」