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夢のつながり~the connect by dream~  作者: KKS
第一章 緑の石と夢の意思
8/9

空耳のような声

石を手に取った瞬間、僕の体の中に何か、が流れてくるのがわかった。

どちらかといえば心に、だろうか。

何とも言えない気分になった。

なんというか、心にぽっかりと穴が開いたというか、大切な人を失ったときのような...まあ、大切な人を人生一度も見つけてないが。

「どうした?虚しい顔して?」ルーが奇妙なものを見るように僕の方を見ている。

「いや、どうも自分の人生の経験の中にとても悲しい未経験を感じてしまってね...」

「は?」フレアとルーが顔を見合わせて戸惑っている。


「で、その石どうしよう?」フレアが僕が拾った石を見ていった。

「なんか、この石、ただの石じゃない気がする。」僕は素直に言ってフレアに石を手渡した。

すると、ハッと何かに気づいたような顔をしてルーの方を向いた。

「ルーも持ってみて」そのまま手に石を載せた。

フレアほどでは無かったが、ルーも何かに気づいたような顔をした。

「声、私なんだか不思議な声が聞こえた...」フレアは言った。

「俺もだ。なんというか、薄れそうな声だったな。」ルーも同意する。


あれ...僕には聞こえないんだけどな...?


「エミットも?」フレアが尋ねる。

「んや、僕には何にも...」正直に答えた。

ん? と言わんばかりにフレアとルーが首を45度右に傾ける。


「いや、ってか声が聞こえるって魔法かなんかの類かな?」

「や、そんな魔法かけて何の得があるんだよ。そもそも頭とかに直接作用する魔法かけれるやつなんてなかなかいねえぞ?」

そりゃごもっともなんだが、

「でも、声が聞こえたんだよね?」

「...」

「...」

今度は三人全員が首を45度右に傾ける。



「てかさ、結局この石どうすんだ?」

ポンポンと手の上で投げられて空中を舞う石が僕の方に渡された。

「売ったらお金にならないかなぁ」

フレアの目が急に輝く。

「なんで、俺の友達はこんなに金に卑しいんだか...」

「いや、僕はフレアほどじゃないと思うんだけどな」

そういいながら、僕は石を改めて眺めた。


なんだか、感じるものがあるのは間違いない。二人が声が聞こえたっていうのも、様子から見て嘘ではないだろうし、なおかつあの見覚えのない鳥も気になる。


「...あれ?」

いつの間にか鳥がいなくなっている。

360度空から地面まで眺めるが、鳥はもう影もなかった。

「あ、鳥ならさっきどっかに飛んでったぞ」

頭の後ろで手を組みながらのんきに言うのはルーだ。

「えぇ?なんで捕まえなかったのよ。あんな見たこともない鳥、高値が付いたかもしれないのに...」軽い怒りのこもった声だ。

「まあ、鳥はさておきこの石、ちょっと僕が持っていてもいいかな?」

「?、べつにいいが...」ルーは考え事をしているようだった。


そのまま、考え事をそれぞれしながらかなりの時間がたった。


根本的にわけがわからない。

青い鳥が、まず何だったのか。

石を拾ったときの変な感じは何だったのか。

ひょっとして呪いでも受けた...?

けど、自分の体に変化は起きてないし...

もしかしたら、遅延型なのかもしれないけども...

あと、声が聞こえたって何の声が聞こえたんだろ。


聞いてみようとしたが、二人とも真剣に何かを考えているようだった。


うーん、考えるのがめんどくさくなってきた。


「うー、深く考えれば考えるほど奇妙ね。今日のところはいったん帰らない?」

フレアが、神妙な顔をして言った。

「そうだな、なんか空恐ろしいぜ。まずなんだ?あの鳥に石に変な声に。呪いとかだったらマジで参るぞ。」

「そうなのよね...」

二人とも、心配しているのはやはりその類だったみたい。

「なんていう言葉が聞こえたの?」率直にさっきからの疑問をぶつけてみた。

「あら、本当に何も聞こえなかったの?」

「俺らだけに聞こえたんなら、いよいよ恐ろしいぜ。」

ルーが珍しく自信なさげだ。

「本当に聞こえなかったんだけどな。聞きそびれてたのかもしれないけど。」

「そうだと信じたいぜ」


何か、いやな予感がするのは皆同じのようだ。

冒険や旅の鉄則。何か変な予感がするときは、迷わず帰る。

とりあえず、町に引き返すことにした。


帰り道には、何も起きなかった。

木々の間にある砂利道を通って、坂を上り、坂を降りて道を進む。

そのまま、最初に入ってきた入り口と同じ場所まで戻って、今度は徒歩で城へ向かう。

辺りは夕焼け空だ。

寝床へ帰るのだろうか、普段よく見かける鳥が赤く染まった空を通り抜けて消えていく。

道には、祭りから帰る途中であろう親子連れが私たちと逆方向へ歩いていく。

しばらく進むと見えてくる、空にそびえたつ城の頂上は太陽の光を浴びて淡く輝いて僕たちを歓迎する。

祭りは、もう終盤のようだ。

「ただいまー」僕は家に入る。

「おう、お帰り!」父はいつも通りに迎えてくれた。

「あら、お帰り。遅かったわねぇ。」母は入れ物に入った料理を取り出している。

「晩御飯にしましょ~」どうやら、屋台で買ったものをいくつか用意してあるようだ。

「お、やった!」

ジャンクフードって久々に食べるなぁ、と思った。

「ん。ふむ...」父さんが、僕の事をまじまじと見つめる。

「ははーん、さては...」


あれ、なんかまずい事ばれたかな?

頭の中を、直近の悪事の数々がよぎる。


「エミット、晩御飯の後、ちょっと私の部屋に来なさい。」

謎のにやけ顔で言われた。

「はぁ。」

一体何の話をされるのか見当もつかないが、怒られそうな気配ではない。


「さて、飯だ飯。いっただっきます!」

『いただきます!』




父親の部屋に入ると、父さんが本を読みながら待っていた。

「お、エミット」

椅子を180度回転させて僕の方を向いてこういった。

「お前、祭り以外のとこ行ってたろ?」


「え、なんで?」

「親の勘だよ。ヒッヒッヒ」

妙に腹の立つにやけ顔を向けられている。

「まあ...」

くるりと机の方向へ向きを戻して、また本を読みだした。

「...いいことだ。」

何か言いたげだったが、何も言わずにそのまま時間が流れた。


「ねえ、お父さん。」

「ん?なんだ?」

今日の昼の事を言ってみた。

なんだか、無性に言いたくなった。

ありのままに、説明してみた。

「ほう、そーんな事してたのか。」

これはなかなか、と言って興味深々に聞いてくれた。

「これが、さっき言ってた石だよ。」

ポケットの中に転がっている石をお父さんに見せた。


すると、腹立たしいにやけ顔を急に真面目な顔に切り替えて一言。

「抜けてるな。」

そういった。

「?」

「何かが込められていたようだが、抜けているな。もぬけの殻だ。」

「込められてるって...」

そういえば、石を手に取ったときに変な気分になったよね。

「最初に触ったとき、もしかしたらその中身?が僕の中に入ってきたかもしれない。」

「ん?おい母ちゃん!」

「はいさっさ。」

父さんの隣に光が集まって一つの形を作り出す。僕のお母さんだ。

「べつに歩いてこりゃいいだろうに」

「いいのよ~、力を持て余してるのよ」

魔法を使いたがるくせは困ったものだ。

「あ、ちょっとエミットのステータス見てやってくれ。」

「あら、真面目に言うにはバカげたお願いね。」

母さんが近寄ってきて小指を僕のおでこにあてた。

「そのまま動いちゃだめよ?」

むしろ体の力が抜ける感覚に襲われた。


「なに...してるの?」

眠い。眠くなってくる。

「はい、おしまい。ちょっと魔力を私に流し込んで見せてもらったわよ~」

コン、とおでこをデコピンすると、今度は力が満ちていく感覚に襲われた。

「どうだ?」

「特に変な物はなかったわよ。異常値もなし、取りつかれてる気配もなし、いたって普通よ?」

「そうか、すまんな。」

「じゃあ、洗い物してくるわね。」

そういって体を光の粒に変えて飛び散っていった。

「エミット、魔法石見せな」

「はい」右手首にブレスレット状にしてつけている魔法石を見せた。

「ぬぅ、異常はないな」

普段道理、まん丸の石が穴にはまっている。

「俺が見た限り、特に問題のあるもんじゃないとは思うぞその石は。」

そういわれて僕は石をポケットの中に戻す。

「まあ、なんとなくだがその石持っておきな。」

ネックレスの枠のはまっていないチェーンをどこからか取り出して僕に渡した。

「たぶん、だ。いつか必要になるんじゃないか?」

僕はチェーンと共にポケットに入れて部屋を出ようとした。


「そうそう。」

振り返ると、父さんは僕の方を向いてこういった。

「もしもだが、何かお前がしたいこと、しないといけないと思ったことができたときは」

ここで父は後ろを向いた。

「お前の思った通りにしたらいい。決断を鈍らせるなよ。」

そういってまた本を読み始めた。


まったくわけがわからないが、一応心のメモにとどめておいて自分の部屋に戻った。


石とチェーンを見比べる。穴の大きさが合っていない。

石の方がちょっと大きい。

「削るか」

棚から、やすりを一枚取り出す。

めんどうだなぁ...




「あらぁ、珍しいわねぇ。そんなこと言うなんて。」

戻って父の部屋で母が急に父の横に現れる。

「まあ、何かの変化だ。もしも、の事があって私たちが邪魔になったら困るからな」

「そうねぇ。」

部屋の窓からもうすっかり太陽の沈んだ町を望む。

「エミットの友達は何か声が聞こえた、って言ってたわねぇ」

「そうだな。」

「残りかしら?」

「かも知れんな。だとしたら、何かしらの形で出てくるかもしれん。」

「そうねぇ。」

「こんなことをするってことは、何かしらの事情があるんだろう。誰かは知らんが。」

「そうね。」

「ならば...」

冷たい風は、家の前を縫うように通っていく。

「まあ、いい刺激になるかもしれんな。」

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