幼いころの思い出。
「ただいま~」エミットは、元気に帰ってきた。
「お、おかえりぃ!どうだった?試験は。」
父が気になって仕方がないというようににんまり笑顔で迎えてくれた。
「案外普通だった~」エミットは朗らかに言った。
「お、そうか。試験は俺の時からず~っとおんなじだからな。うまくやれたか?」
「うん。光の魔法もちゃんと使えたよ!」
「おおそうか。」父はウムウムとうなずきながら話した。
「お母さんは代々光の力を受け継いでいる家系だからな。俺が炎属性だから、どちらを引き継ぐか気になっていたが、やはり光の力を受け継いだようだな。」
父は、しきりにうなずいている。
「そうよ~。昔は私とお父さんとでいろいろな所へ荒らしに行ったわね~」
母が、大きな鍋に赤色のスープを持ってくる。
「荒らすっていうなよ、冒険だ冒険!!」
父は、朗らかに言いながら食卓に着いた。
「んじゃ、いっただっきま~~~す!」
『いただきま~す』
物語の始まりは、ごく普通の食卓テーブルから始まる...
翌日...
「おきろ~~!」
一日の始まりを告げる怒鳴り声が、下の階から飛んできた。
はっ、と目を覚ました僕はしばらくベットの上でぼんやりした後に、手を上にぐっと伸ばして大きな伸びを一つした。
「早く降りてきなさい~!今日は、昨日と違って普通に学校があるのよ~」
母親の声に背中を押され、家族の集まるキッチンにむかう。
「さてと、昨日の成績を見たがかなりいいじゃないか。特に魔法耐性、父さんと一緒に特訓したのもあるが、まさかSとはな。」
「そうね~、母さんの誇りよ!」と言って両親に背中をたたかれる。
「さて、大人になる試験である見極めを終えたお前に一つ、プレゼントをやろうと思うわけだ。」
ニヒヒヒと、謎に自信に満ちた顔で父さんが石でできた腕輪をポケットから取り出した。
「なんか良いもんないかな~と思って探したんだけどな、これなんかどうだ?」
そういって父さんが腕輪をホイと投げて渡した。
黒光する石の中にちらほらと茶色い光る粉が見える。
「これって...」僕は、この石に見覚えがある。
「そうだ。サイレントストーンだな。俺が削ったんだぜ?」
昔、同じものを父から見せてもらったことがある。確か、特定の条件下で地中の中に発生する原石で、それぞれの条件下でいろいろな効果を持っているんだ、と説明してもらった気がする。
「どうだ?これ以外がいいなら、別のを買ってくるぞ。」
「いや、ありがとう!」
ひりひりと叩かれて痛む背中と、大人と認めてもらえたかのような腕輪。
この二つが、幼かったころの私にはとても誇りに思えた。