わるいかいじん
初めて書いた小説です。
拙い文章ですが、読んでいただけると嬉しいです。
「変身!」
目の前の男の手が空へと伸びる。と、次の瞬間、それは振り下ろされベルトのスイッチを押す。それを見て思った。
(ダサっ…)
いい年して恥ずかしくないのだろうか。変態なのだろうか。だが…
「いけー!!やっつけろ!!」
「レッド!!がんばれー!!」
「わるいかいじんなんてやっつけろ!!」
子供たちからはこの人気である。
この変態…おっと、この変身野郎のどこが良いのだろう。
「怪人め!覚悟しろ!」
レッドが襲いかかってくる。台本にあったように、とりあえず攻撃してみた。レッドは倒れた。弱っ。
「レッドーー!!」
「レッド!あんなやつにまけるな!」
「かいじんなんてたおしちゃえー!」
それにしても、子供たちから向けられるこの異常なまでの敵意はなんなのだろうか。子供たちからの罵倒が、繊細な俺の心に突き刺さる。
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〜2時間ほど前〜
「ちょっと頼みがあるんだけどいいかな?」
「店長、何ですか?」
休憩時間に、店長から声をかけられた。頼み事、正直面倒くさい。
「実は、夕方のヒーローショーなんだけど、人が足りなくって、代わりをして欲しいんだよね」
「ヒーローショーですか…」
ヒーローショー。今日の夕方にうちのショッピングモールで行われるイベントである。そのショーの役者が、急遽出演できないようだ。最近、風邪が流行っているし、そんなところだろう。
「はぁ…分かりました。」
「おお!助かるよ!ありがとう!怪人の役なんだけど、よろしくね。」
「え?かいじ…」
よりによって怪人役かよ…最悪だ。
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「みんなの応援で悪い怪人をやっつけましょう!!」
司会役のお姉さんがそう言うと、子供たちは今日一番の大きな声で応援する。
すると、力尽きていたレッドは立ち上がり、最後の力を振り絞って俺に攻撃をする。まぁ、お決まりである。
「ぐ、ぐはぁ、やーらーれーたー」
やられた。すると、子供たちから歓声がわき起こる。
「やったー!!」
「わるいかいじんをやっつけた!」
レッドはドヤ顔で立っている。ヒーローショーを長年やってきた、プロのドヤ顔である。
(やっと出番終わったよ…)
勝利を喜び合うヒーローとお姉さんと子供たちを背に、俺は舞台裏へと下がった。
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「お疲れ様ー!今日は本当に助かったよ〜。頑張ってくれたから、今日はもう上がって良いからね」
店長がそう言ってくれたので、今日の仕事を終える。
(疲れた。あんな仕事、引き受けるんじゃなかったなぁ)
そんなことを考えながら歩いていると、腰に何かがぶつかってきた。振り返るとそこには子供がいた。
「あ!!わるいかいじんだ!」
こいつもヒーローショーを見てたのか、それにしてもひどい言われようだな…
「あら!すみません…!」
こいつの母親が遅れてやってきて俺に謝った。そして、子供の手を引っ張っていった。
「おかあさん、あいつ、わるいかいじんだったよ!」
「あら、怪人さんだったのね」
「うん!ぼくもヒーローになってかいじんをたおすからね!!」
なぜか、俺は親子の会話を聞き、親子が去っていくのを見送っていた。
(帰るか…)
本当に面倒な一日だった。早く帰れるのが救いだろうか。ヒーローショーの会場から聞こえる子供たちの楽しそうな笑い声を背に、歩き始める。
今日は帰りに何か買っていこうか。
初投稿でした。
小説の難しさが分かりました…
そして少し恥ずかしいですね…笑
また書けたらなぁと思います。