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ロストアース戦記  作者: 秋島ミツ
異世界
7/15

7.初コミュニケーション

〈よろしく、マキナ〉

≪はい、マスターこちらこそよろしくお願い致します≫


互いに自己紹介を終えこれからの方針を決めようと考えていたが、相棒の注意喚起によりその思考はいったん停止した。


≪マスター、半径二十メートル以内に生命体の反応があります≫


家主が戻ってきたのか?ここがどこかは分からないが一夜の恩くらいは返さねばならないと良心が呟く、

身体は動くようだがかなり弱っているように感じられるのもあり、このまましばらくここに滞在することも考えなければいけない。

満身創痍の状態で外に出ても危険度は高くなるだろう。


〈マキナ、俺の身体はどのくらい回復している?〉

≪全身の裂傷や内臓へのダメージは危機的レベルを脱しましたが無理は禁物です。

骨折などはいち早く修復し前よりも3%程度頑丈になっておりますが、現状では本来の力の四分の一程度の力しか行使できません。

修復作業に入って二週間程が経過しておりますが全快するまでしばし時間を要するかもしれません≫


意識を失ってから二週間ほど経過しているのか、随分と長い間眠ってしまっていたようだ。


〈マキナ、その生命体というのはこれまで俺と接触があったか分かるか?〉

≪現在対象の人物を特定しております。登録されていない人物だった場合セーフティを解除し、要注意人物として登録します≫


これからの先行きが見えないことに変わりはなくただただ現実は自身の不安を助長させる。

もし敵だった場合満足に動けない、今襲われたらどうなるかわからないことや戦い方を知らない自分に歯がゆさを感じていた。


〈戦闘になった時のことを考えよう、何か武器になるようなものはないか?〉

≪大丈夫です、マスター解析が完了しました。この家の主ローレンツという人物のようです≫

〈そうか、助かったよマキナ〉


ケンカもしたことのない自分が命のやり取りなどに直面したかもしれなかったことに安堵した。

それと同時にもう今までの日常に戻れないことを直感的に悟った。


ローレンツというと自分を助けた女が何か言っていた。

あの様子だと町医者か何かだろうか?

事が起これば何処にでも、なにがしかの人物が出てくる、それが警察なのか消防なのか医者なのか何なのかは分からないが誰かに頼られるような人物だろうと推測することが出来る。


思考が終えたところで扉が開く、中に入ろうとする人物に自然と視線がいく。


歳は三十代前半、眼鏡をして長髪、無精ひげが生えてるが不思議と不衛生という印象はない。

ローブのうえからでも分かるほどの力強い骨格をしている。何かのファンタジーに出てくる学者のような恰好をしているが、その佇まいは武芸者のようだ。


「おや?」


こちらに気が付くと荷物を置き近づいてきた


「やぁ目が覚めたんだね、私はローレンツ、医者みたいなものだと考えてくれればいい、君の名前は?」


「俺は黒瀬、黒瀬(くろせ)凛太郎(りんたろう)です」


「ずいぶんと変わった名前だね、クロセ君か…ザパンから来たと聞いていたが、さすがに東の果ての国出身てところだ」


「いや、ジャパンなんだけど…。」


「本当、ザパン人というのは皆そんな回復力をしているのかい?死にかけたあの状態から、わずか二週間でここまで自然治癒するなんて考えられない神秘が君の身体には秘められているんだ!実に素晴らしい!」


「皆かどうかはわかりませんよ、何故怪我をしたかも、ここまで回復したかもわからないんですから…。」


何せ異世界からこの世界を管理しに来たとは言えないし、俺の他に同じような奴らが居ても不思議ではないし、身体はまだまだ本調子ではない、

それどころかカオスとの連絡も取れない、どうしたらいいのか途方に暮れているような状態なのだ。


「それは、記憶があいまいになっているということなのか?ニーナも声が聞こえるとかどうとか言っていたしな…まだ混乱しているということなのか?」


「ローレンツさん、あの…」


一人で答えの出ない自問自答を繰り返す男に質問をした。


「今、俺はその、自分の身に何があったのかよくわからない状態なんです。」


「ふーむ記憶喪失か、しかしその黒髪に黒い瞳、その肌の色から察するに君はザパン人であっていると思うよ」


どうやらこの世界にはザパン人という俺の居た世界でのモンゴロイドに属する人種が居るらしかった。


「ザパン人、彼らは中々珍しい種族でね。東の最端の島国から来たという…」


「珍しいっていうと?」


「変わり者が多いんだよね。だから人里に出てくるのは結構まれなんだけど、昔よりは増えているみたいだ。人の流動が盛んで多い場所でなら結構見かける程度には居るんだ」


「なんだか珍獣みたいですね…」


「ちがうよ、彼らの一族は総じて魔力が高く、品行方正で礼儀正しい、優しさが満ち溢れ頭も良い。何せ初めて会った人種の言葉まで分かるというし、知識に富んだ者も多く神の末裔とまで呼ばれるほど貴重な存在なんだ」


目を輝かせ話す男のテンションが異常に高くなっていることに気が付く。いわゆる学者肌というやつなのだろうか…、知的探求心の塊という言葉がこの男には似合良そうだと、思わず笑みが浮かぶ。


「はっ!し、失礼した!なんだかワクワクしてしまってねぇ、ははは」


悪い人間では無さそうだし、変に心地良さを感じる男だ。こういう人物は信用できる、かどうかは分からないが周りの信用が厚いことは明白だった。

とりあえずはこの世界のあらましについてこの男を通してみてみる必要がありそうだ。


「ローレンツさん、お願いがあります」


「改まってどうしたんだい?」


「俺をしばらくこちらに置いてもらえないでしょうか?厚かましいのは承知しているのですが、何故この近辺に来ていたのか、大けがをしていたのか、記憶があいまいで故郷への帰り方すらもわかりません、それに恩返しもしたい」


「クロセ君、恩返しというならニーナに元気な姿を見せてやりなさい。まずはそれからだ」


「はい、ありがとうございます。それとニーナさんという方は…もしかして」


「ああ、君をここまで運んでくれた女性だよ」


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