3.魔剣カオス
「分かったよ、サポート体制が万全なら引き受けるが、どんな内容なんだ?丸腰じゃ何も出来ないし、俺は魔法?とかの使い方まで知らんぞ?」
世界を守るという偉業、内容も内容であるが、先ずは我が身を守る術を見つけなくてはいけなかった。
「そのあたりは対策済みだし、魔法ならさっき使ってみせたじゃないか?」
流石に何度も人間を送り出しているだけあって、対策は講じているようだったし、それが当然の流れだとしても、魔法が使えるなんて俺にとって初耳だ。
「へ?そんなことしたっけ?」
するとやれやれといった芝居がかった仕草をした後話してくれた。
「イキナリ撃ってきたの忘れたの?適合者の人には僕等と同じ形態をとった魔法を使えるようにしているんだ。今この場所で練習しておくのも手だと思うよ」
確かに必要なのかもしれないけど、実際息をするのと同じく当然の様に銃の切り替えが出来たのなら必要のないことだと感じる。
「別段、練習とか要らないんじゃないのか、余裕で出せてたけど?」
「外の世界では使いにくいんだよ。ここみたいな幽世界では何もしなくても使えるけどね。この力はSenseと言うんだ、向こうの人間たちはギフトとも呼んでいるようだけどね。神の力である創生魔法の一種だよ。物質世界では使用者にとって負担が激しいんだよ。生半可な魔力量じゃあ魂が削れて最悪、死に至るほどのものなんだ」
どうやら便利な能力も自由には使えないようだ。余裕の態度を取っていた自分が少し恥ずかしく感じる。
それなら早く言ってもらいたいもんである。
「ところでさ、今の話からすると他にも魔法があるみたいな言い方だな、ゲームとかであるような魔法も異世界にあるのか?それは俺は使えるのか?
」
質問を重ねていると、無い胸を張り偉そうな態度でケイオスは答える。
「使えると言えば使えるんだけど、君はこちらの世界の人間だから魔力は0に等しい」
何だか予想していた解答が返ってくる、期待したのは無駄だったみたいだな…。
「じゃあ、その神の力とか言うのも魔法も使えねーじゃん!剣士か何かで肉体労働者の如く働けってのかー?」
「まぁまぁ、少し落ち着いてよ。
向こうの世界の大人の魔力を数値化すると400〜500くらい
初級冒険者で3000〜5000ほどになる
中級冒険者で5000〜10000
上級冒険者で10000〜30000程度かな
身体能力なんかは普通の人間と変わらないけれど強化魔法を駆使すれば人間を超越する事が出来る。
子供とかだとまぁ50ほどかな
君たちの世界の大人で精々10が関の山だね。
君自体は24ほどあって優秀と言えば優秀だけどさ」
どうやら夢の様な冒険はお預けのようだ。子供の1/2程度では煙草に火を着ける程度しか出来なさそうであった。密かに目の前の非現実に楽しみを覚えていたものを…。
「ただね、君のエネルギー問題はもうほとんど解決されているよ。
君たちの世界の人間は魔力が低い、
でもそれを補って余るほどに僕等の力と君との相性がすごく良い。
僕等が使用する術や神具との相性が良すぎてその0に等しい魔力も幾つかの神具を装備する事によって数百万倍にする事に成功したんだ。」
「………。」
ちょっと、素敵な言葉を聞いたわ
ぐふふ、俺最強じゃん!俺つえー出来るじゃん!
「うん!つえー出来るよ?だからサポート体制は万全だよ!試しに今きみの魔力を測定してみようか?さっき腕輪をはめた手を見てごらん」
「なんだよ、コレが神具の一つって言うんだろ?ん?」
腕の方を見てみるとあるハズの腕輪がなく、何かの模様が右腕に描かれていた。
「さっき渡した腕輪に僕の力を載せて紋章化してある、完璧に同化してるから旅が終わるまで着けてても良いよ、ふむふむ大分魔力が上がったみたいだね」
何処から出したのか板切れにレンズと棒が付いた玩具のような物で俺は覗かれていた。
「すごいよ!今測定したところ魔力量は56000ほどになったね。」
「数百万倍って言ってたわりに少ねーじゃんかよ、全然良さそうだけどさ」
「まぁ、この魔導制御装置、いやもう言いにくいし、魔導リング、いや僕の力も載せてあるし…神の紋章は補助的な役割も多いからそこまでは魔力の上昇に期待して無かったんだけど…君は凄い逸材だよ!」
ケイオスは、そう言って嬉しそうに話していたが、途端何かを思い出し、罰の悪い子供のように話し始めた。
「あ!あのさぁ、悪いんだけど、魔力はあるけどやっぱり魔法は使えないかも…」
魔力の上昇によって、まぁ全く実感は全くないのだけれど。
何かと試す機会はあると考えていた矢先、魔法は使えないと来たもんだ。
なかなかに皮算用な神だな…。
「散々に期待させて落とすんじゃねぇよ」
「違う違う!一般の魔法のこと!君はこちらの世界の人間だし、魔力量は確保出来てる。神の紋章には魔術回路が仕組んであるから考えるだけで自動的に創生魔法は使えるよ。ただあっちの魔法は向こうに居るそれぞれのエレメンタルの精霊と契約しなきゃ使えないんだよ。」
「なるほどな、聞けば分かる理屈だな。流石にいきなり魔法が使えるわけではないのか他には何かあるのか?」
「そうだね、後は彼に任せようかな」
そう言ってケイオスは、手のひら同士を重ねる、少しずつ手を横に開いていくと光と共に黒い西洋風の剣が現れた。
「この剣が君を守ってくれるよ、さぁ手にとって?」
言われた通り手に取ろうとしたその時、ひらりと宙を舞い横向きだった剣は直立して浮いていた。
「カオスと契約してもらう前に一つ約束事があるんだ。今から教えるからその言葉通りに喋って!ほら耳貸して?」
ゴニョゴニョと話してきた。
「本当に言うのか?その台詞」
「先ずは雰囲気も大事でしょ?言葉にするコトで制約の効果も強くなるしね」
「分かったよ…神、ケイオス神との盟約によりこの命を捧げ、如何なる時も忠実なるしもべとして意志を持ちコレにあたらん!魔剣カオスよ!我、黒瀬凛太郎に力を貸し示せ!」
………。
……………。
………………………。
……おい。
『だぁっはっはっはっは!!マジで言ってるよコイツ!ナニナニそんな言葉を吐いただけで強くなれると思ってるのか??よう、ケイ、今回の生け贄はこいつか?』
「カオス、そう言うふうに意地悪言うもんじゃないよ!」
突然喋りだす剣に驚きを隠せないが、神様が居るくらいだ。話す剣が居ても不思議ではない。
が、断言しようコイツとはうまくやっていけないことは明白だった。