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ロストアース戦記  作者: 秋島ミツ
異世界
15/15

15.財政圧迫

誰かが言った。金が欲しいのならダンジョンに潜ろうと…。


アレク、ローレンツ、ニーナ、最後に自信なさげなモーリスを交えて四人が四人一斉にこのような話になっているのには理由があった。


村の復興や維持に際して傭兵ギルドに要請を掛けるくらいしか対策が打てていない今、その財政は減る一方であり、その波もまた孤児院に波及していたのだった。


脳筋三人衆の意見により金策について意見を躱していたわけであるが、村おこしのなる産出品があるわけでもなし、人の少ないこの凡庸な村にとって財を潤すものの存在は皆無、


外より稼いでくるしかないといった結論に至ったわけだが、その案を持ってきたのは脳筋三人衆の一人アレクによって知らされることとなった。


以前より冒険者業に精を出していた彼は冒険者ギルドに所属し、その効果を以前から知っていた。


彼自身は金に無頓着であり、日々の糧さえ得れれば良いと考えており、彼自身に金を稼ぎ楽をするという概念、というか欲すらほとんどない朴念仁であった。


何故冒険者をするか?そこには夢があるからだと、その内容に具体的なモノは無かった。


無かったが金を稼ぐ術というのがそれくらいしか思い浮かばなかったのも事実、全員が全員、有効的と言える策を出せないでいたのは確かであった。


方針は決まった、村の再建の目処が立つまでパーティを組みダンジョンに潜る、金を稼ぎ彼らを助ける。それが彼らの目的であった。


モンスターや野党の盗伐なども金銭を得るために有効であったが冒険者にはあまり人気がないようだ。


モンスター討伐での素材集めなども薬や武器武具を作るため需要はある。


野党の盗伐などもため込んだ宝などを買い取ってもらうため一攫千金も狙うことが出来たが相手が人間ということもあり


残党に狙われる羽目になったり、買い取り拒否をした場合に持ち主との諍いが起こることもあり、少数で行うことはあまりおすすめ出来ない、どちらかといえば盗伐系は傭兵などの領域である。


そんなこともあり、冒険者の間でのローカルルールなども多く確立されているダンジョンに潜るという行動であった方が長く続けていけるだろうとの見解があった。


まずハイネ村から東へ数十キロほど離れた位置にある城塞都市ドーターへと行き冒険者ギルドにて登録をしなければならなかった。


ドーターへの道のりはさほど時間もかからず到着することが出来た。


ローレンツの強化魔法によって全員の俊敏性が上昇し素早く移動が開始されたからだ。


冒険者ギルドへ向かう途中酒場に寄ることになった。いくら強化魔法で俊敏性を強化したからと言って休む間もなく歩み続けた身体は休息を求めていた。


「周りは村に比べればちょっとうるさいけど、ここの料理がまた癖になるんだ、うめぇー」


アレクはそういってボアの肉にかじりついている


彼に連れて来られたのは厳つい冒険者が(たむろ)する酒場だった。


「騒がしいとこだけどいい店知ってるんだな」


「そうね、私はあの村から出ることはあまりなかったけどアレクはちょくちょく村の外に出てたみたい、小さい頃から馬鹿みたいに知らない場所でも何でもすぐに首を突っ込む性格だから」


「ほい、そこぉ!知的探求心豊富と言え!先生だっていつも言ってるじゃん、何でも知る努力をすべきだってよ」


「先生とアンタを一緒にするんじゃないの!」

「なぁにぃーー!」

「でも危ないことをするのは何時もアレクじゃん?解決出来ないことって大体は先生に助けてもらってたよね」

「モーリスくぅん後でお話しようか」



昼から騒がしいのはさすがに冒険者御用達の店とも言えるそんな喧噪のなか、近づいてくる男がいた。


背丈は170㎝前半痩せて見えるがその何処もバランスよく鍛えられ引き締まった体躯をしていて顎鬚を生やしていたが

不潔という印象とは程遠く現代日本でいうところのチャラいイケメン風の男だった。使いこまれた革製の胸当てをして腰には二本のショートソードを腰にさげている。二本の剣は同じもののように見えるが中身は別物のように気配が違っていて、それ以外は如何にも冒険者という出で立ちの男だった。


そういえば異世界ってどうやって髭整えてるんだろと考えていると

近づく男は声をかけて来た。



「お兄さん方、何処から来たんだね?」


「西の方から、ハイネというところからやってきた」


ローレンツが答えに対し男は怪訝な顔をして言う。



「ハイネだって??この間モンスターの襲撃にあって滅んだって噂されている?」


「滅んでなんかねぇよ」



アレクは少しむきになって答えたが男はバツの悪そうな顔をしながら謝罪をしながらも興味深そうに質問を投げかけた。



「すまんすまん、その様子からすると兄ちゃんたちはハイネの出身なのか?」



男の様子に揶揄(からか)いに来たわけではないと分かると先ほどまでのアレクやローレンツの態度も弛緩して話をし始めていた。



「それぞれ厳密には別々なんだが、まぁ今はそのハイネ村で厄介になって長いですね」


「ほーんあんな辺鄙なところにねぇ…というと、今回このドーターに来たのもその襲撃に関係してるってことかい?」


「端的にいうとね?復興資金の調達と人材の確保も兼ねていてね、今から冒険者ギルドへ行くつもりだ、君に何か関係があるのか?」


「そうツンケンしなさんな、俺は情報屋なもんでね、新しい顔ぶれを見つけては儲けになりそうなことを探している、逆に儲け話にも敏感なわけさ」


「というと?」


「俺が仲介役になってギルドで受付できない実力者の仲介をしたりすることもあるってこと」


「いいかいお兄さん方?ランク分けってわかるよなぁ?」


「そんなのあたりまえだろう?」


「そう当たり前だ、一つ一つそのランク分けされた依頼をこなして、Fランク冒険者から這い上がり信用を得ていき、ランクを上げていくわけだ、

そうすることによって稼ぎも多くなり富も名声も少しずつ増えていくわけ、ったらそれがわずらわしいって輩もでてくるわけよ。

冒険者が目的な奴らはゆっくりしてればいいが、そうも言ってられねぇって奴、短時間で金が稼ぎてえって奴らには俺が代わりに依頼を受けてそれに協力する。

成功すれば俺の名前は上がるし、金が欲しい奴はすぐに依頼をこなせてどちらも得をするってぇ話だ。」


「旨い事言って誑かすつもりなんだろうが、そんな話に乗るやついねぇと思うけど?」


そう言ってアレクが鋭い視線を男に向ける


「良いんだぜ?俺はこれだけが仕事だとは思っていねぇし、他にも情報や以外仕事もあるし俺自身が冒険者だからな」


そういって何かカードのようなものを取り出す。


「ギルド証??」


男が取り出したものをみてアレクとローレンツの目つきが少しだが厳しいものに変わる


「B級冒険者??アンタが??」


「まぁね、といってもB-だけどな?」


「ふむ、そのギルド証が本物であるという証明は君にできるかね?」


ローレンツは男を試しているようだった。


「なら試してみるかい?」


そう言って外へと俺たちは移動する。

今から戦って実力でも見せ合うのかと思っていたがその考えはどうやら勘違いのようだ。


「今から戦うだって?変なこと言わないでくれよ?アンタらは少し毛並みがよさそうだからな。俺が戦うのは話の通じない馬鹿だけだぜ」


そう言いながら歩む方向はこの街で一番目立つ建屋だ。


「普通にギルドで証明すれば済む話だし、まぁ上級の冒険者と組むことなんてざらにあるってことだよな」


そうアレクは言い、ローレンツも幸先がいいなと嬉しそうである。


男は目の前の建屋に入り受付らしき女性に声をかける。


「サダヨシ トキノ様ですね、確認いたしました。トキノ様の受けられる依頼はBランクまでとなっております。同じBランクの冒険者が三名以上ですとAまでの依頼を受ける事が出来ます」


聞きなれない名前に少しの間唖然としてしまったが、悟られない様に装いながらマキナに質問を投げかける


<日本人顔をしていたが、あの男は何者だ?>


≪私のデータベースでは確認できません。後でご本人に確認されてはいかがでしょうか≫


<仮に同じ日本人だとして味方かどうかも分からんしばらくこの件は保留にしておくか>



「あいよ、じゃあ後で選ぶんでまずこいつらのギルド証を発行してもらって構わないか?」


「畏まりました。特例以外の方や成人の方はEランクからの発行となりますがよろしいでしょうか?」


「あ、俺はもう登録してあるんだけど暫くギルドの方に更新に来てなかったんだけどいいかな??」


そう言って自身のギルド証を受付の女に見せているのはアレクだ。


「C+ランクですね、しばらく更新されておりませんのでここで情報の更新をされていきますか?」


「別段断る意味もなし、お願いします。暫く時間もかかりそうだし依頼板の方にいてるからまた声かけてこれよ」


ギルド証を渡しアレクは奥に行ってしまった。


「それじゃ、お兄さん方、俺もあの兄ちゃんと依頼版見に行ってくるわ」


二人の姿は依頼板へと歩いていった。


その後残った4人は出身地や年齢種族などを書き終え書類を受付に渡していく。




ローレンツの番になった辺りで受付の女性が震えだした。


「へ??あれっ?少しおまおまちいただいてもよろしいでしゅか!!」


何ともわかりやすく狼狽したまま奥へと引っ込んでしまった。


「先生、いったい何書いたんですか??」


「私は正直に書いただけなんだけど、考えの通りなら知人が来るはずなんだ」


暫くして何かの音が聞こえたと思ったら受付から一人の女性が現れた。


隣に並ぶ受付の女性も愛嬌のある顔をしていたが、こちらは男を惑わせそうな雰囲気を醸し出していた。

というのも、普通に薄着すぎたのもあり、軽く呼吸が乱れた唇は艶やかな印象を抱かせた。呼吸の乱れは、走ってきたことによるものでは無く緊張によるもののようだ。


パッと見ただけでは分からなかったがよく見ているとバランスの良い筋肉の着き方をしているように見えた。

元の世界での女性の肉付に比べかなりアスリートよりの体つきをしていて無駄な肉というものがほとんどなく一介の冒険者よりも数段優れた人物に思える。何よりおっぱいが素晴らしい人物だった。



「お久しぶりです。ローレンツ=シェルベルト様」


「やぁ、久しいねソフィア、ノイマンは居ないのかい?」


「ベンゲルト様はただいま席をはずしておりまして…」


「ふむ、彼は今忙しいだろうからね」


「シェルベルト様、どういったご用件でしょう。お急ぎのようであれば急使を出しておきましょうか?」


「そうだね、実は今私が世話になっている村がね…」


そう言ってハイネ村での出来事を説明したところ、話が長くなりそうということでソフィアという女性と共に代表としてローレンツだけ別室へと促され今後についての話が進んでいった。




ランクに応じた扱いを受けた場合村の再興に充てられるだけの報酬をもらえるような依頼は無かったらしい


ローレンツの知古ということもあってかいくらか高額なものを受け持つことが出来たが、


ただこれだけで一つの村を復興できるだけの金銭を稼ぐことなんてできるわけがなく、結局のところここのギルド長であるベンゲルトが戻った時に支援を受けることが目的になっていた。


待っている間でも良いので特別にソフィアという秘書官のおすすめの依頼を受けることになり


これから調査団が消息を絶った遺跡とやらに入ることになった。


消息を絶つ程のものを調べさせるとか危険極まりない行為だったがアホのアレクがついていくと言って聞かず全員に、使えば一瞬で地上に逃げ出すことが出来るという魔具(超高級品)を渡されたが、

結局アレクがローレンツに怒られて終わった。


そしてこのあたりで男とはもう別れていた。


「まぁーギルド長が帰ってくるまで時間もあることだし絶対に完遂しなければならない依頼でもないし、消息を絶った調査団には酷い話だが情報を持ちかえるのが任務で救助隊ではないのだからむりはしないよ。ただどれだけの深さがある場所か分からないところでもあるから一月は戻るつもりはない」


ローレンツが遺跡の中へと入っていったのを見送り俺たちは宿舎に戻ることにした



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