Act6
[銀色のそれ]と別れた私は、偶然にも出会った侍と一緒に出口を探した。
探したところで見つかるわけがないと諦めていた。出口なんかないと決め付けていた。でも、今は違う。一筋の希望の光が私には見えていた。
侍に背を向けたまま、私は上へ上へと岩に手を掛けた。
(ここを登れば出口が見つかる…!)
……だが、私は妙なことに気付いてしまった。
後ろにいるはずの侍の気配が消えたように感じる。気のせいだろうか?私は後ろを振り返ろうとした………………………………………………次の瞬間、ドンッという鈍い銃声音が耳に飛び込んだ。
私はその音に驚き、掴んでいた岩を手から滑らせ、地面に落下した。
ふと地面に目がいった。暗闇の中で光る刀が目に映る。
『貴様っ…、俺の邪魔をするな…!』
侍が向けた鋭い目の先には[銀色のそれ]が立っていた。
「野犬が騒ぐな。おとなしくしていろ。そうすれば、楽に殺してやる」
『ぅわあぁあぁあっ…………!!』
侍は地面に落ちた刀を再び手に持ち、[銀色のそれ]に向かった。
「危ないっ!!」
私は思わず叫んでいた。
――――キンッ
侍が振り下ろした刀は[銀色のそれ]が持つ銃に留まった。
『貴様が来なければ、俺は永遠の命を手に入れることが出来た。なのに……』
「憐れだな。死人が永遠に生きるだと?お前の肉体は残像にすぎない。さっさと消えろ」
『俺は消えない。消えるのは…………お前だ』
侍は左手を刀から離し、袖の中へと手を入れた。そしてすばやく何かを取り出し、それを[銀色のそれ]に向けた。私にはそれが何だったのか判別できなかった。
グサッという何かが刺さる音が聞こえた。
………………見ると、侍の左手には小刀が握られ、[銀色のそれ]の体に深く突き刺さっていた。
「いやっ!?いやっ……いやだっ、いやあああぁぁぁぁ!!」
私は悲痛な叫びを上げていた。
やがて、[銀色のそれ]の腹部からポタポタと流れるものが目に映る。
血だ………………………………………………………黒い血が流れている。
「どうして……?」
[銀色のそれ]は……
『貴様……死人か!?』
――――シビト?
イキテナイノ……?
アナタハ、イキテナイノ……………?
「死ね」
[銀色のそれ]は侍の額に銃口を当て、撃ち放った。
侍の体は宙を舞い、地面に叩きつけられるかのように落下した。
[銀色のそれ]は腹部に刺さった小刀を無理矢理抜きさり、地面に投げ捨てた。
「あなたは………死んでるの………?」
私は目の前にいる男に聞いた。
確かめたかった。
「貴様に関係あることか?」
「なんで死んだの?なんで死んだ者同士が殺し合うの?あなたも現世に未練があるんじゃないの!?」
「うるさい…………うるさいうるさいうるさい………黙れ…………黙れっっ!!」
「どうして……」
『……女…………死ねえぇぇぇ!!』
後ろを振り返る暇がなかった。侍の声が私の真後ろで響き渡る。
「美園、伏せろ―――――――――!!!」
私はその言葉を信じ、手を頭に置き、地面に顎をつけてしゃがみ込んだ。
[銀色のそれ]は一発、二発、三発と銃弾を侍に浴びせた。
『ははっ?死ねねぇなぁ……こんな弾、何発くらおうが俺は死なない。殺せるものなら殺してみせよ』
体中に穴が開き、黒い血が吹き出している。それでもなお、この男は立ちつくしている。
私は無我夢中で、地面に落ちている黒い血のついた小刀を手に持った。
『お嬢さん?私を殺すおつもりで?馬鹿なことはおやめなさい。何もせずとも、そなたは私が綺麗に殺してさしあげましょう』
「うるさい。この化け物………。私がお前を殺す。殺してやる!!」
「やめろ……美園。お前ごときが殺せる相手じゃない」
「死に底ないが黙りなさいよ。殺すしか……殺すしか助かる方法がないんだよっ!!」
私は小刀を握りしめ、侍の左胸目掛けて走り出した。
Act6 …END…