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銀舞う世界  作者: KoKoRo
5/6

Act5

銀に輝く髪、筋肉質な身体、そして長身。


そんな[銀色のそれ]の背中を追い続けていれば、私は絶対に死なない。生きていゆけると、いつしかそう思い始めていた。



だが、出口はない。



暗闇を行き交うばかりで、すれ違う人は皆、死人。




このまま私は永遠に、死の世界で生きなければならないのか?





「………ここから出してよ……」




「出口などない」




「……嘘。言ったでしょう?私が落ちる前、あなたは確かにマンホールの外にいた。見たんだから」




「記憶にない。それに、案外強い女だと思っていたが、弱い人間に過ぎなかったな」



「!」



「ここからは俺の後ろを歩くな。邪魔だ」




[銀色のそれ]は、私に銃を構えた。




「いや…っ……!殺さないで!?殺さないでっ………!!死にたくない死にたくない死にたくないっっ!!」






私は[銀色のそれ]の後を追うことを止めた。



止めたところで、私は死人に殺される。



後を追ったところで、私は[銀色のそれ]に殺される。




私の未来には……




「死」しかみえない。





ここまで生き延びようとした自分が馬鹿らしく思えた。



ふと顔を上げた。前方から完全にあの姿が消えた。




私は一人、暗闇に取り残された。







地面に手をつけ、動けなくなった。やみくもに歩いたところで、外に出られるわけでもない。動きたくない。




しばらくして、後方からザッザッという、砂利を擦るような足音が聞こえてきた。





振り返りはしなかったが、死人が来たのだと確信した。




段々と音が近づいてきた。その音と同時に、心臓が跳ね上がるのが自分でもわかった。




殺すなら早く殺してほしい。早く楽になりたい。痛みを感じたくない。早く………





『お嬢さん』






後方から優しい声が聞こえた。私は思わず、振り返った。


そこには、古びた着物を着た男が立っていた。腰には刀のようなものがさげられていた。髪は黒く、背中にかかるほど長い髪をしている。


私はその印象で、昔の侍なのではないかと思った。




『そなた、お一人か?』



「…はい」





この男は、なぜだか死人には見えなかった。



『このような場所にお一人で?さぞや心細い思いをなされたのではないか?』





「あなたも私を殺しにきた死人なんでしょう?さっさと殺せばいいじゃない!?」





私はやけになって叫んだ。




『殺す?そんな殺生なこと、私は致しませんよ』




「あんた、何で死んだの?戦に出て死んだんじゃない?」




『戦か…。お嬢さんの言う通りだ。私は幕末戦下において無様に斬り捨てられた身。刀を抜くのを躊躇い、その一瞬の隙をつかれ、殺されました』




「そんな時代に生まれて不幸ね。今じゃ、戦なんて考えられないほど幸せよ?」




『そなたは……幸せのように見えない』




「!」




『どうです?私と共に出口を探しませんか?』



「出口を探しているの…?」




『私はこのような場所に留まりたくはないのです。さぁ、そなたも一緒に……』





私はその言葉に引かれるように、再び立ち上がった。




しばらく侍と共に暗闇を歩いたが、出口など見つかるわけがなかった。




『上にあると思いませんか?』




突然、侍が口を開いた。



「え……?」




『上界の空気を感じます。出口が下にないのなら、おそらく上にあるのでしょう』




「空気を感じるって……それ本当なの!?」



その一言で目の前が明るくなった。



『私はこの姿では登れない…。すまぬがお嬢さん、上に登れるか?』




私は辺りを見回した。すると、登るには調度いい黒い岩壁が広がっていた。



「これならいける…」




私は侍に背を向けて、岩に近づき、上に登ろうと手を掛けた。




『…………』




侍は美園の背後に近づき、腰にかけた刀を抜いた。





『どうか……そのままで…………』













Act5 …END…



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