表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17才  作者: 木下秋
8/10

♡4

 「は? 『処女』ぉ?」

 美咲が言うと同時にヂョキン、と私の前髪を切る。今までチョキ、チョキ、と少しづつ慎重に切っていたのに、突然大きな音がしたのでドキッとした。美咲は声にはならなかったけど「あっ」と口を動かして「全然大丈夫」と言った。人差し指と中指の二本で私の前髪を伸ばして長さを確認する。

 私は学校が終わって美咲と一緒に下校すると、そのまま美咲を家に呼んだ。今は私の伸びた前髪を切ってもらっているところだ。

 「『処女』と『長女』を聞き間違えたって事?」

 美咲は「ふっ」と小さく笑って「ばっかじゃない」と続けた。

 「男子ってほんといっつもくだらない、エロいことばっか考えてんのよ」

 前髪をチョキリと切りながら言った。

 「で? 結衣はなんて言ったの?」

 「『あぁ……そっか……。なんかゴメン。』とか言われて、『聞かなかったことにするよ』って」

 「ふーん。今日は?」

 「全然普通だった」

 上目遣いに美咲の指と短くなってゆく前髪を見ながら言う。

 「祐ちゃんの方から『おはよ』って言ってくれた」

 美咲は「へー」と相槌を打って「意識しちゃったの?」と少しニヤニヤしながら聞いてきた。

 「うん」

 私は素直に頷いた。「あー。動かない」とたしなめるように美咲が言う。

 「祐ちゃんねぇ……。まぁ性格はそんなに悪くないと思うけどさぁ」

 美咲は言い淀んだ。言葉を選んでいるようだった。

 「あんまりかっこ良くないし……。エロいことばっか考えてるし」

 「そんな事……ないと思うよ?」

 ちょっと擁護しきれない。

 「好きなの?」

 美咲が遠慮無しにストレートに聞いてくる。

 「好き……ではないんだけど。嫌いでもないけど」

 「はいっ、終わり」

 ぽんぽん、と私の前髪を撫でるように叩く。手鏡を渡されて確認する。

 「うん、完璧! ありがとう。やっぱり美咲に頼んでよかった」

 美咲は得意げに「でしょー」と言った。

 「美容師にでもなろうかな」

 美咲が美容師。イメージがすんなり出来る。

 「まぁ私は相手がどんな人でも応援するよ。結衣を」

 「うん……。いや、まぁまだ好きなわけじゃないけど!」

 二人であはは、と笑った。

 少しだけ、顔が熱くなった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ