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17才  作者: 木下秋
4/10

♡2

 美咲と一緒に教室に入ると教室にはまだ誰も来ていなかった。誰もいない朝の教室はいつもの騒がしい教室とは全く違う印象を感じさせる。

 振り返ると美咲は机に突っ伏してもう寝ていた。美咲は朝が強いわけではないが、いつでも早め行動がモットーなので集合時間が早い。

 でもいつも夜三時くらいに寝るなんて事を言っていたから眠いはずだと思う。

 二十分もすれば教室にはクラスメイトが次々やってきて、室内はすぐに騒がしくなった。近くの席の友達に挨拶をしながら、英単語をノートに書き写して覚えていると、隣の席の佐藤祐一が教室に入ってくる姿が視界の隅に見えた。


 祐ちゃんとは一年の時から同じクラスで、おしゃべり好きでユーモアもあって、よく話す仲だ。

 何故かクラスも違うのに一組の高橋拓君と、三組の鈴木仁といっつも一緒にいる。仁ちゃんは私や美咲、祐ちゃんと一緒の一組だったから分かるけど、高橋君は……?と思って祐ちゃんに聞いたら小・中・高と同じ学校らしい。

 いつもだったら祐ちゃんが来たら「おはよう」って挨拶するところだけど、先週の土曜にちょっといろいろあって、なんだか顔を合わせにくかった。私はどんな表情をしていいのか分からなくて、祐ちゃんに気付いていないふりをした。

 「おはよ」

 自分の席に着いた祐ちゃんが普段通りに挨拶をしてきた。私も今気付いた、という体でそちらを見て、挨拶を返す。

 「おはよう」

 表情は硬くならないように、声も上ずらないように気を付けた。普段通りの祐ちゃんの様子を見て、意識しているのは私だけだったかな、と思ってなんだか恥ずかしくなってきた。

 「英語の宿題さ、やった?」

 祐ちゃんがバッグから筆箱を出しながら、私の方を見ずに言う。

 ちなみに、祐ちゃんはバッグから筆箱しか出さなかった。教科書もノートも、おそらく宿題すら置いて行っているのだろう。私はいつも祐ちゃんに宿題を見せてあげているけど、さっきの事もあってなんだか少しムカっとした。

 「やったよ。もぅ、たまには自分でやりなよ」

 宿題として出されていた英語のプリントをぶっきらぼうに差し出すと「ありがと」と言って祐ちゃんはプリントを受け取った。宿題を受け取った祐ちゃんは早速宿題を写し出した。


 祐ちゃんが写し終えたプリントを受け取って、私は一限の準備を始めた。今日の時間割は英語、国語、数学、日本史、体育、家庭科。三限まではいいけど、四限が問題だ。

 日本史の授業は私のクラスの担任の山口先生が担当しているのだけど、私は数ある授業の中でも特に日本史が苦手だった。覚えなきゃいけないことはたくさんあるし、時代の流れだってなんだかごちゃごちゃしてて全然分からない。それに……山口先生の授業。

 先生の授業はなんだか情熱的な感じがして、先生自身が日本史が好きなのが伝わってくるような授業だ。それはいいことだと思うんだけど、先生は基本的に声が大きくて、特に寝てる生徒がいると叫ぶようにその生徒の名前を呼ぶのだ。私も名前を叫ばれた事があるけど、あれはびっくりするからやめて欲しい。

 でも祐ちゃんはそんな日本史の授業が好きらしい。よくわからないけど、何となく男の子って日本史が好きなのかな。


 私はいつも通りに四限まで真面目に授業を受けた。祐ちゃんは三限までは寝て、日本史だけちゃんと受けていたみたいだった。

 国語に至ってはいびきをかいて寝ていた。本人曰く、「テストで最低限取れればいいの。だからテスト前にまとめてやればいいんだよ」だそうだ。

 私は親が厳しいからそんな訳にもいかないが、そんな気楽な祐ちゃんが少し羨ましくもある。

 お昼休みが始まって、私は自分の席の椅子とお弁当を持って美咲のところに行く。一年の時から私と美咲は一緒にお昼ご飯を食べていた。

 どこのクラスも同じだと思うけど、うちのクラスにもかわいい子達の集まった、騒がしいグループがある。でも美咲はそういったグループに入ることを拒んだ。

 美咲ほどキレイだったら、そんなグループに入ればすぐに中心メンバーになれるだろうに、どうしてグループに入らないのかな、と気になって聞いて見た事があるけど、そしたら「なんか群れてないと行動できないのってかっこ悪いじゃん。それに、周りの子の目を気にして言いたい事も言えなくなっちゃうしさ。疲れるし私には向いてないかな」と言っていた。そして「いっぱい友達がいるよりさ、ちゃんと仲良い子が少しいればいいのよ。結衣みたいなね」と付け加えた。私もその考えには共感するし、その考えを貫き通せる美咲をかっこいいと思った。

 そんな美咲に私は選ばれたような気がして、それが誇らしくって、二人してクラスから少しくらい浮いたって全然気ならない。

 「結衣ってさ、意外と大食いだよね」

 「へ? そうかな」

 私がご飯を食べている様子を美咲はまじまじと見ていた。

 「でも結構細いよね。羨ましい」

 美咲はまだご飯が半分残っているのに、お弁当に蓋をして片付け始めた。美咲はいつもこうして弁当を残す。一年の時、私が「もったいないよ」と言った事があるが、帰って犬にあげているらしい。

 「炭水化物は太るの。これでも結構努力してるのよ」

 「うん、でもまだ五月だよ?」

 「そんな事言ってたらすぐ夏が来ちゃうんだから」

 そう言って紙パックのミルクティーを一口飲んだ。もちろんカロリーオフだ。

 私は食べてもあまり太らないタイプなので体型をそこまで気にしたことは無かった。でもその事を言うと嫌味に捉えられてしまう事が今まで何度かあったから、美咲はそんな事思わないと思うけど、言わないでおく事にした。

 「次体育だね」と私が言うと「うん」と美咲は言ってニコリと笑った。

 「お昼ご飯食べてすぐにカロリー消費させてくれるなんて。時間割作った人を褒めてあげたい」

 「私はご飯食べてすぐに運動なんてヤだけど……」

 私はようやくご飯を食べ終えてお弁当を片付け始めた。

 教室から自然に男子がいなくなっていく。女子は教室で体育着に着替えるからだ。誰かがドアに付いているカーテンを閉めて、私も近くの窓側のカーテンを閉めに行く。ちょうど真上に登った太陽の強い光が腕に当たって一瞬でも熱を感じた。今日はバスケだから体育館。

 外じゃなくてよかった……焼けちゃうし。と思いながら、カーテンを閉めた。

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