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17才  作者: 木下秋
3/10

☆2

 学校に着くとまず、二年の教室がある三階へと向かって、拓と仁と別れた。

 拓は二年一組の教室へ。仁は三組、おれは二組の教室へ入ってゆく。

 教室にはもう十人以上クラスメイト達が登校して来ていて、それぞれ本を読んだり、予習をしながら朝の時間を過ごしていた。


 自分の席へと向かうと、隣の席には田中結衣がすでに来ていて、机に向かって勉強していた。

 田中とは一年の時に同じ一組になって、二年に進級してクラス替えがあったものの、同じクラスになった。

 同じく、一年の時から一緒のクラスの渡辺美咲と仲が良くてよく一緒にいる。勉強も運動もそこそこ得意で、見た目もまぁ……普通に可愛いほうだと思う。

 俺は一年の時から同じクラスということもあって、田中とはよく話したり、宿題やノートを見せてもらったりする。

 ノートは女子に見せてもらうに限る。女子のノートは字も綺麗だし、工夫されていて、蛍光ペンなどでカラフルに彩られているから。まぁそんなことはどうでもいい。田中は今日も早く学校に着いていたみたいで、英単語をノートに書いて覚えているようだった。

 先週のある一件で少し顔を合わせにくかったが、それまで毎日のようにちゃんと挨拶をしていたし、今日になってしなかったら、なんかその一件を意識しているようで、そう思われるのは嫌だった。

 自分の机の上にカバンを置いて、田中の方を見ると、まだ勉強を続けていた。俺にまだ気付いていないようだ。

 「おはよ」

 声を掛けると田中はこっちを向いた。特に驚いてもいない表情で、普段と変わらぬ落ち着いたトーンで返事をした。

 「おはよう」

 田中がいつも通りでほっとした俺は、田中の方は向かずに言った。

 「英語の宿題さ、やった?」

 「やったよ。もぅ、たまには自分でやりなよ」

 田中はまだ頼んでもいないのに宿題のプリントを渡して来た。まぁ、どっちにしろ頼むのだが。

 「ありがと」と言ってプリントを受け取って宿題を写す。田中の文字は少し丸みがかって、それでいて綺麗で読みやすい。薄い筆跡を見て、田中は文字を書いていて芯が折れるような事はないんだろうな、と思う。


 宿題を写し終えるとプリントを田中に返し、今日の時間割を確認した。

 英語、国語、数学、日本史。三限までは寝れるな、なんて思いながら、日本史今日はどこだっけ……と思い出そうとした。

 俺は勉強はあまり好きではなく、テスト前に詰め込むタイプだ。でも日本史だけは違う。担任の先生が日本史の先生で、先生の授業は熱がこもっていて、それを毛嫌う生徒もいたが、俺は好きだった。テストは難しかったが、簡単なテストを作って生徒から気に入られようとする先生よりずっとましだと思った。

 俺が日本史だけ出来る、と言う事はクラス中の誰もが知っていた。だから俺は、たまにクラスの友人達に日本史を教える事もあった。先週の土曜も……。


 俺は計画通り三限までほぼ寝て過ごして、日本史は真面目に受けた。四限が終わると昼休みだ。昼になるとそれぞれのクラスから拓と仁が来た。俺達はいつも二組の教室に集まって、俺の席の近くの机を集めて弁当を食べた。別に誰が言い出したわけでもないが、いつもそうしている。

 三人で黙々と弁当を食べていると拓がポツリと俺に言った。

 「次体育だね」

 体育の授業は拓のいる一組と、俺のいる二組、合同で行われるのだ。

 「あぁ……最悪だよ。飯食ってすぐ体育なんてさぁ。普通そこに体育持ってくるかね」

 俺がそう言って仁の方を見ると、仁は口の中に入れていたものを飲み込んで、「僕、国語」と言った。

 「いいなぁ。寝れんじゃん」

 「いや、寝ないけどね」

 しかし仁は自分の弁当を片付けた後、自分のお腹をさすりながら「いや……寝ちゃうかも」と付け加えた。

 「お腹いっぱいだからもう眠いや……」

 俺はにやにやしながら仁に言った。

 「寝ちゃえ寝ちゃえ」

 「ご飯食べたあと運動すると横腹いたくなるんだよね」

 拓はそう言うと、片付け終えた弁当と持ってきておいた体操着の入ったスポーツバッグを持って立ち上がった。

 「うん……んぐっ。しかも今日あれじゃん。バスケ?いや、この状態でドリブルやらトラベリングやらしたら胃の中ごっちゃごちゃになって吐いちゃうよな」

 俺は最後の一口を飲み込んで、急いで弁当をしまってスポーツバッグを持ち、教室を出ようとする拓を追った。拓は振り返らずに「トラベリングの意味わかってないでしょ」と言って教室を出る。横目でチラリと仁を見ると瞼を閉じてボーッとしていた。

 仁を一人教室に残して俺も教室を出た。後ろから「机片して行きなよ! 僕の教室じゃないのに!」と聞こえてきたが、俺は無視して拓と階段を降りて行った。

こんな感じで続きます。

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