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17才  作者: 木下秋
2/10

♡1

 私は朝に強い。毎朝だいたい目覚まし時計が鳴る十分前に起きる。

 ちゃんと閉まらなくなってしまったカーテンの、隙間から射す光の中でふわふわと舞う埃を眺めて、ボーッと十分間を過ごす。

 そして目覚まし時計が鳴ると、一秒と鳴らさずにスイッチを押す。私は今日もいつもの様に、そんな習慣をこなして起き上がった。

 なんだかまた身長が伸びた気がする。私は中学の三年間で十センチ身長を伸ばして周囲を驚かせたが、普通成長が止まると言われている十五才を過ぎた今でも、その身長は伸び続けていた。今現在、一メートル六十五センチ。女にしては高い方だ。

 モデルさんみたいなスタイルには憧れるけど、身長の高い女って男の子的にどうなんだろう。止めたくても止められないけど。

 朝ごはんにバナナを食べて、お母さんに牛乳を勧められたけど、断ってお茶を飲んだ。制服に着替えながら、これ以上身長が伸びて制服を買い換えるなんて事になったら大変だな、なんて思った。

 家を出るまで、残しておいた十分は前髪を整える時間。少し伸びてきたけど自分で切るのは怖い。また美咲に切ってもらおう。


 いつもの待ち合わせ場所に美咲は居た。渡辺美咲は高校に入って初めて友達になった子だった。一年の時に同じクラスになって、今年も同じクラス。という事は三年時にはクラス替えは行われないので、三年間同じクラスと言う事だ。クールで、サバサバしていて、姉御肌な彼女と友達になれた事は私にとって幸運だったと思う。美咲は私に持っていないものをたくさん持っているから。

 日に焼ける事を嫌う美咲は小さな木陰の中にいた。黒くて長い髪の毛の先端だけ、風に吹かれて日向に出てキラキラ光った。ポケットに手を入れて空を見ている彼女は本当に絵になるなぁと少し見惚れた。私より身長の高い美咲は本当のモデルさんみたいだった。

 朝の挨拶を済ますと、昨日放送された歌番組の話になった。美咲の好きなアイドルが出ていたから絶対その話をするだろうなと予想していたし、私はそのアイドルの話をする時の、そうゆう時だけ見せる彼女の幸せそうな顔が見たくて、普段見ないその番組を昨日は見ていた。

 「安本クンまじイケメンだったわ。もうほんとやっばい。かっこよすぎ」

 美咲はうっとりとした顔で昨日見たものを思い出すように宙を見た。

 「うん、やっぱ髪ちょっと長い方がかっこいいよね」

 「そう!今年の始めの方短かったじゃん?あれはさぁー。安本クン結構筋肉あるからさ。なんかゴリラみたい」

 あはははっ、と二人して笑った。いつも美咲はあまり表情を崩さないから、美咲が笑ってくれるとなんだかほっとする。

 いつもちょっと早めに学校に行く私たちは、まだ空いている電車に乗ると椅子に座る事ができた。その後も男の子の話や身長の話なんかをして、今日美咲に学校帰りに私の家に寄ってもらって、私の前髪を切ってもらう約束をしたところで目的の駅についた。


 菖蒲ヶ丘駅。ここから学校へは十分くらいまっすぐ歩けば着く。

 五月の暖かい気候は一年の中でも特に私の好きな時期だ。なんだか安心する陽気の中で、私たちは一定のリズムで歩いて行く。

 スポーツバッグについたキーホルダーがジャラジャラ音を立てていた。

女の子(結衣)サイドの一章目です。

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